浅倉夏美(比嘉愛未)は横浜のケーキ店でパティシエ修業中の23歳。父・啓吾(大杉漣)は厳しいが腕のいいケーキ職人、やさしい母・房子(森昌子)と中学生の弟・智也(神木隆之介)の4人暮らしである。夏美は恋人の加賀美柾樹(内田朝陽)の祖母・カツノ(草笛光子)の喜寿の祝いに岩手へ行くことになった。結婚前のあいさつ程度の軽い気持ちで出かけた夏美だが、柾樹の実家の老舗(しにせ)旅館の威容に圧倒されてしまう。
柾樹(内田朝陽)の実家である盛岡の老舗(しにせ)旅館にやって来た夏美(比嘉愛未)は、大女将(おかみ)・カツノ(草笛光子)や女将の環(宮本信子)が列席する喜寿の宴席の仰々しさに驚く。はじめは遠慮ぎみの夏美だったが、すぐに持ち前の明るさで大勢の親せきたちに溶け込んでいった。カツノは蔵で後かたづけをする夏美を見て座敷わらしと見間違える。はたして夏美は加賀美家に幸福をもたらす座敷わらしなのか、それとも…。
夏美(比嘉愛未)は加賀美家の一員のようになじんでいた。柾樹(内田朝陽)は夏美に見せたい場所があると「一本桜」へ案内する。そこは亡き母・俊江(中江有里)が好きで、いつも幼い柾樹を連れて来ていた思い出の場所だ。柾樹が盛岡を出たのは、女将(おかみ)の激務に体を壊して亡くなった母のことがあったからと知った夏美は、柾樹の「心の一本桜」になろうと決める。そのとき、カツノ(草笛光子)が倒れたと柾樹に連絡が入る。
大女将(おかみ)のカツノ(草笛光子)が倒れて加賀美屋は急にそわそわし始める。女将の環(宮本信子)や息子の伸一(東幹久)は老舗(しにせ)旅館をリニューアルする計画を進めるため、カツノに大女将の引退を迫ろうとしていた。一方、カツノは病床に柾樹(内田朝陽)を呼び旅館を継いで欲しいと頼む。夏美(比嘉愛未)と結婚して横浜で暮らすつもりの柾樹は断るが…。一人先に横浜に帰る夏美は柾樹の態度に何かを感じていた。
横浜で新作ケーキ作りに没頭する夏美(比嘉愛未)であったが、何日も柾樹(内田朝陽)から連絡がないことに不安を覚え始めていた。夏美はケーキを納入するために、柾樹の働くホテルに行く。柾樹は「今晩話したいことがある」とだけ言うと夏美を避けるように仕事に戻る。久しぶりに来る柾樹のため、ごちそうを作ってくれる母の房子(森昌子)や弟・智也(神木隆之介)の笑顔を見ても、夏美の不安はますます大きくなるだけだった。
仕事を終えた柾樹(内田朝陽)が夏美(比嘉愛未)の家に来る。啓吾(大杉漣)や房子(森昌子)は柾樹の訪問に上機嫌でにぎやかな夕食がはじまる。しかし、結婚の日取りに話が及ぶと柾樹が突然「盛岡に戻って旅館を継ぐつもりだ」と切り出す。そして、夏美との結婚をなかったことにしたいと言う。啓吾に「出て行け」とどなられ、柾樹は深く頭を下げて帰る。夏美は柾樹のあとを追い、決然と「わたし女将(おかみ)になる」と叫ぶ。
加賀美屋では柾樹(内田朝陽)が帰ってくると聞いて大女将(おかみ)・カツノ(草笛光子)と女将・環(宮本信子)の嫁姑の対立が表立ってきた。一方、夏美(比嘉愛未)は柾樹(内田朝陽)から結婚話を破棄されて落ち込んだが、柾樹が旅館を継ぐなら柾樹と一緒に盛岡へ行き、女将になろうと決心する。啓吾(大杉漣)や房子(森昌子)は娘の無謀な考えをいさめようとするが夏美は聞き入れず、柾樹ともう一度話し合いに行く。
夏美(比嘉愛未)がパティシエになる夢を捨てて盛岡へ行くと言ったことが、啓吾(大杉漣)には大きなショックだった。啓吾は柾樹(内田朝陽)が働くホテルを訪ねて、夏美に二度と会わないようにとクギをさす。そのことを知った夏美は啓吾と大げんかをしてしまう。房子(森昌子)は啓吾がどれほど夏美のことを思っているのかを語ってなぐさめるが、最後には「自分の人生は自分で決めるの」と娘の決意を後押しする。
病床に伏していたカツノ(草笛光子)はなじみの客が泊まりに来たと聞いて、病をおしてあいさつに行く。名実ともに女将(おかみ)になったと思っている環(宮本信子)はそんなカツノの行動がしゃくにさわる。横浜ではかぜで寝込んだ柾樹(内田朝陽)を夏美(比嘉愛未)が看病する。そのとき、夏美は熱に浮かされた柾樹の言葉から、彼が自分のことをまだ愛していると確信を持ち、柾樹が結婚をやめようと言いだした本当の理由を知る。
啓吾(大杉漣)と房子(森昌子)は夏美(比嘉愛未)のことで夫婦げんかになり、気まずくなっていた。そこへ夏美が戻って来て、「柾樹(内田朝陽)と一緒に盛岡へ行きたい」と再度訴える。啓吾は「もし行くならば親子の縁を切る」と言い放ち家を出て行ってしまう。夏美は夜を徹して父から課題を出されていた新作ケーキを一心不乱に作る。翌朝、啓吾が家に戻ると、夏美の作った新作ケーキと手紙がちゅう房のテーブルに置かれていた。
朝早く盛岡に着いた夏美(比嘉愛未)は加賀美屋に向う。突然、夏美が来たことにカツノ(草笛光子)はとまどう。柾樹(内田朝陽)が旅館を継ぐことをやめさせてほしいと訴えに来たと確信していたカツノは、環(宮本信子)から2人の結婚話がなくなったと聞かされて驚く。夏美は加賀美屋で修業させてほしいと頼み込むが、とりあえず一晩泊まっていけと相手にされない。だが夏美は旅館を手伝おうとして板場で問題を起こしてしまう。
旅館の板場で一騒動起こしてしまった夏美(比嘉愛未)は落ち込んでいた。そんなとき、横浜から柾樹(内田朝陽)が駆けつける。柾樹は夏美を連れ戻そうと来たのだが、柾樹の「心の一本桜」になりたいと真剣に訴える夏美の愛情に触れて、柾樹はたまらず「夏美のいない人生なんて考えられない」と本音を告白する。再び愛を確かめ合った2人は、カツノ(草笛光子)に旅館で働きたいと願い出て、ついに夏美の仲居修業が始まる。
夏美(比嘉愛未)の仲居修業が始まった。カツノ(草笛光子)から夏美の教育を任された環(宮本信子)は仲居頭の小野時江(あき竹城)に夏美を厳しく指導するよう言いつける。ほかの従業員たちにあいさつをすませた夏美は早速、客の靴を磨く仕事を言いつけられる。時江の指導はとてもうるさく、細かいほこりにまで目を光らせる。玄関掃除から行儀作法の稽古(けいこ)まで、夏美が息つくひまもないほどの厳しい修業であった。
夏美(比嘉愛未)は同じ新人仲居の松本佳奈(川村ゆきえ)とはすぐに仲よくなるが、ほかの仲居や従業員は大女将(おかみ)の孫の婚約者である夏美に遠慮と反感半分でなかなか打ち解けてくれない。さらに時江(あき竹城)の指導は厳しさを増し、夏美は何度も同じ仕事をやり直させられ、ヘトヘトに疲れてしまう。やっと一日目が終わり夏美は佳奈に連れられて下宿「イーハトーブ」を訪れる。そこで一風変わった面々と顔を合わせる。
夏美(比嘉愛未)が住むことになった「イーハトーブ」は、柾樹(内田朝陽)の高校の大先輩・岩本裕二郎(吹越満)が経営する下宿。少し風変わりな住人(ダニエル・カール)たちとも夏美はすぐに仲よくなる。一方、横浜では柾樹が浅倉家を訪れ、「もう一度夏美との結婚を認めてほしい」と啓吾(大杉漣)に願い出る。しかし、啓吾はまったく相手にしない。夏美は持ち前の明るさで積極的に仕事を覚えていくが、ある日事件が…。
雨なのに夏美(比嘉愛未)が玄関先に滑り止めのマットを敷かなかったため、客の吉田(山本圭)が転んでけがをした。佳奈(川村ゆきえ)が夏美に教えるのを忘れていたのだが、ほかの仲居や従業員たちはいっそう夏美につらくあたるようになる。その夜、夏美は環(宮本信子)が吉田の部屋の前で控えているのに気づく。お客様の不便がないように誠意を尽くすのだと教えられた夏美は、環と一緒に廊下で夜を明かす。
女将(おかみ)・環(宮本信子)のもてなしの心に触れた夏美(比嘉愛未)は、吉田(山本圭)のために何かできることはないかと思案する。一方、加賀美家では夏美が頑張って修業を続けていることに不安を感じた伸一(東幹久)が妻の恵美子(雛形あきこ)に女将修業をさせようとする。夏美は、吉田が亡き妻と毎年のように高山植物を見に八幡平に行っていたことを知り、腰を痛めた吉田を何とか八幡平に連れて行けないかと考える。
夏美(比嘉愛未)は、吉田(山本圭)を八幡平に連れて行きたいと申し出る。吉田は亡き妻を思い出して悲しみに暮れることを恐れたが、夏美の懸命さに押されて八幡平に行くことを決心。吉田は妻との思い出の地八幡平で涙を流しながら、過去の思い出から一歩踏み出す勇気をくれた夏美に感謝する。このことで環(宮本信子)は夏美が女将(おかみ)に向いているかも知れないと思う。そして、夏美の修業は順調に進むかに見えたのだが…。
仲居の仕事を順調に覚える夏美(比嘉愛未)に不安を感じた伸一(東幹久)は、妻の恵美子(雛形あきこ)に女将(おかみ)修業を始めるよう説得する。環(宮本信子)もちょうどいいチャンスと賛成し、カツノ(草笛光子)に恵美子の女将修業の許可を願い出る。ゆくゆくは夏美を女将にと考えるカツノは環の抵抗を苦々しく思うが、恵美子が旅館で働くことに同意する。早速翌日から恵美子は女将見習いとして加賀美屋で働くことになる。
恵美子(雛形あきこ)の女将(おかみ)修業が始まった。従業員たちは女将・環(宮本信子)の意図を感じ取って、いっそう夏美(比嘉愛未)に厳しく接するようになる。さらに夏美は恵美子に代わって加賀美家の母屋の家事をするハメになってしまう。カツノ(草笛光子)は環の露骨な仕打ちに腹を立てるが、夏美は家族の一員として認められたと喜んで家事もこなしていく。恵美子は旅館の仕事が忙しくなり子どもの世話すらできなくなる。
夏美(比嘉愛未)が仲居の仕事に加え、母屋の家事を押しつけられていることを知った柾樹(内田朝陽)は横浜での仕事を一日も早く片づけて盛岡に帰ると夏美に伝える。一方、女将(おかみ)修業をはじめた恵美子(雛形あきこ)は、子どもたちのことが気になって仕事に身が入らずミスを重ねる。恵美子は自分が女将に向いていないと落ち込むが、夏美と話すうちに元気を取り戻す。恵美子は夏美のほうが女将に向いていると思うのだった。
「女将(おかみ)修業よりも今は子どもたちの世話をしたい」と恵美子(雛形あきこ)は伸一(東幹久)に懇願する。しかし、伸一は柾樹(内田朝陽)が帰ってきて夏美(比嘉愛未)が女将になると自分たちが追い出されるのが不安で、恵美子や子どもたちのことを思いやる余裕がない。横浜では、柾樹が啓吾(大杉漣)に夏美との結婚を認めてもらうために浅倉家を訪ねていた。これまで一度も会おうとしなかった啓吾が柾樹を飲みに誘う。
健太・勇太兄弟が夜になっても小学校から帰ってこないので、夏美(比嘉愛未)は心配になって捜しに出かける。母親の恵美子(雛形あきこ)も、旅館の仕事が大事と止める環(宮本信子)を振り切って子どもたちを捜し行く。結局2人は裕二郎(吹越満)が見つけて「イーハトーブ」で保護していた。恵美子は子どもたちを大声でしかりつけると泣きながら抱きしめる。久々に母子たちは触れ合って幸せを感じるのだが…。
家族会議で健太・勇太はこっぴどくしかられる。見かねた恵美子(雛形あきこ)は今夜だけでも子どものそばにいてやりたいと言うが、環(宮本信子)は旅館の仕事が優先と許さない。恵美子に加勢する夏美(比嘉愛未)に対して伸一(東幹久)は不信感をあらわに怒りをぶちまける。そこに現れたカツノ(草笛光子)は恵美子が子どもの世話をするために女将(おかみ)修業をやめることを認め、自ら再び大女将として仕事に戻ると宣言する。
大女将(おかみ)・カツノ(草笛光子)が旅館に復帰する。環(宮本信子)はカツノが病に倒れてから女将として旅館を取り仕切っていただけに、大いに不満である。夏美(比嘉愛未)は、少しずつ仲居の仕事や人間関係にも慣れて順調に修業を続けていた。特に下宿が同じ佳奈(川村ゆきえ)とは、盛岡で一番の親友となった。ある日、外に使いで出た夏美は川原で子どもたちとサッカーをするジュンソ(リュ・シウォン)に出会う。
加賀美屋にジュンソ(リュ・シウォン)が現れた。夏美(比嘉愛未)は彼が川原で落としたハンカチを返そうとするが環(宮本信子)に取り上げられてしまう。実はジュンソは韓国の人気スターで、どうやら環はファンらしいのだ。だが、当のジュンソはどことなく寂しげでほかに付き添う人もなく、何やらワケありな様子である。一方、横浜の柾樹(内田朝陽)は盛岡に帰れない事情ができてしまうが、夏美には言い出せなかった。
夏美(比嘉愛未)は柾樹(内田朝陽)が盛岡に帰って来られなくなったと聞いて落ち込んでいた。そんな夏美にジュンソ(リュ・シウォン)は「盛岡を案内してほしい」と頼む。しかし、観光をしてもジュンソは楽しむ様子はなく、何かを思いつめているようだった。立ち寄った喫茶店で夏美は電話で柾樹とけんかをしてしまう。それを見てジュンソは「ボクにも会いたい人がいる」と夏美に語りはじめた。彼は恋人を捜していたのだ。
ジュンソ(リュ・シウォン)が2年前日本にいたときの恋人を捜していると聞き、夏美(比嘉愛未)は彼を手伝う。下宿の裕二郎(吹越満)やアキ(鈴木蘭々)にも協力してもらい、盛岡じゅうの手がかりを探すがなかなか見つからない。一方横浜の浅倉家では、啓吾(大杉漣)が夏美と柾樹(内田朝陽)の結婚を許すと言いだすが、その態度のひょう変に房子(森昌子)が怒りだす。ある日、加賀美屋にジュンソのマネージャーが現れ…。
夏美(比嘉愛未)や下宿の仲間たちは、ジュンソ(リュ・シウォン)の恋人を懸命に捜していたが、何の手がかりもない。明日にでも韓国に帰らなければならないジュンソはひどく落ち込んでしまう。万策尽きた夏美も落ち込むが、カツノ(草笛光子)に「お客様に心から喜んでいただけるおもてなしをするように」と言われ、やる気を取り戻す。あきらめないようジュンソを説得する夏美のもとに電話が入る。
ビリー(ダニエル・カール)の計らいでジュンソ(リュ・シウォン)は地元のラジオに出演する。ジュンソは「君ともう一度出会えるのなら、ずっと君のそばにいる」と、盛岡にいるはずの恋人に語りかける。その言葉を聞き、夏美(比嘉愛未)は柾樹(内田朝陽)のことを信じて待とうと心に誓う。翌日、ジュンソが帰国する寸前に恋人が見つかり、夏美は、彼を恋人と会わせるために体を張ってマネージャーたちと闘い…。
盛岡の夏美(比嘉愛未)の下宿に突然柾樹(内田朝陽)がやって来る。柾樹が当分盛岡に戻れないと知ってショックを受けている夏美のことが心配だったのだ。下宿の仲間・岸本聡(渡邉邦門)は柾樹に「夏美のことを考えろ」と怒りをあらわにする。夏美も酔った勢いで旅館での苦労を柾樹に愚痴をこぼすが、柾樹から啓吾(大杉漣)が2人の結婚を許してくれたと聞いて喜ぶ。一方、横浜では啓吾や房子(森昌子)が盛岡に向かおうと…。
柾樹(内田朝陽)とはつかの間の再会だったが、夏美(比嘉愛未)は仲居修業にやる気を取り戻し、ふだんは仲居がやらない庭木の植え替えを言いつけられても懸命に働く。一方、柾樹と入れ代わりに、夏美のことが心配な啓吾(大杉漣)たち家族が急に加賀美屋を訪れる。しかし、上客ではないと判断した伸一(東幹久)は、満室と宿泊を断る。夏美が下宿に帰ると、ビリー(ダニエル・カール)のギターにあわせて歌う両親や弟の姿に…。
夏美(比嘉愛未)は家族との再会を喜ぶ。父の啓吾(大杉漣)が勘当を解いてくれたことに感謝し、母の房子(森昌子)の胸で泣けたことが嬉しい。翌日、夏美は家族を加賀美屋に案内する。啓吾はカツノ(草笛光子)に夏美のことを託し、昨日、啓吾たちの宿泊を伸一(東幹久)が断ったこと知ったカツノは、環(宮本信子)を厳しくしかりつける。しかし、夏美が一人で泥まみれになって庭仕事をする姿を見て、啓吾たちは再び心配になる。
啓吾(大杉漣)と房子(森昌子)は、庭仕事の重労働を一人で行う夏美(比嘉愛未)を見て心配に。さらに伸一(東幹久)や時江(あき竹城)が、「旅館の経営状態が思わしくない」「女将(おかみ)の仕事がきつくて柾樹の母親が亡くなった」などと吹聴する。夏美は智也(神木隆之介)を聡(渡邉邦門)が働く南部鉄器の工房に迎えに行き、そこで初めて、旅館でたびたび見かける平治(長門裕之)が、名人といわれる職人だと知る。
啓吾(大杉漣)と房子(森昌子)は「横浜に帰ってこい」と夏美(比嘉愛未)に話すが、夏美はまったく相手にしない。翌日、庭仕事をする夏美は、カツノ(草笛光子)に呼び出され、両親が夏美を連れて帰ると願い出たことを聞き、勝手な行動に怒る。カツノは啓吾になぜ夏美を女将(おかみ)にしようとしたかを話し、「自分の残りの人生を夏美に賭けてみたい」という本心を伝える。納得した啓吾はカツノに夏美を任せる決断をする…。
カツノ(草笛光子)の本心を聞いた啓吾(大杉漣)たちは、夏美(比嘉愛未)を加賀美屋に預けることにして、横浜に帰る。一方、夏美は庭木の手入れも任されるが、うまく育たない。そんな時、平治(長門裕之)に「手をかけるのだけが愛情ではない。かえって弱らせることもある」と忠告される。庭木を育てるうちに、夏美は、両親がどれほど自分のことを愛してくれていたかに気づき、言葉を交わさないまま別れた両親に、手紙を書く…。
ついに夏美(比嘉愛未)は客室係の見習いとして働くことを許され、時江(あき竹城)に直接指導を受ける。夏美が初めて受け持つ客は、東京から来た経済評論家の斎藤愛子(とよた真帆)と小学生の翼(川口翔平)の母子。仕事の忙しい愛子に代わり、翼を盛岡観光に連れて行ったり、夕食の相手をしたりと、親身に世話をする。一方、夏美が順調に修業を続けることに焦る伸一(東幹久)は、環(宮本信子)が夏美の味方をしすぎると思う。
環(宮本信子)と伸一(東幹久)の亀裂は深まり、家族団らんでもけんか腰の会話になる。環は「実の親子なのに、最後に母親を頼れないなんて」と伸一に言われて、ショックを受ける。一方、客室係見習いの夏美(比嘉愛未)は、翼(川口翔平)を『さんさ踊り』に誘うが、母親の愛子(とよた真帆)が仕事を早めに終えて連れて行くという。しかし、愛子は仕事が終わらず、夏美が翼を祭りに連れて行くと申し出るが、周囲に反対される…。
母親と『さんさ踊り』を見に行くはずの翼(川口翔平)だったが、母は仕事が忙しく、帰ってこない。落胆しつつも、けなげに耐える翼を見て、夏美(比嘉愛未)はとっさに「祭りに行こう」と連れ出す。祭りのあと、夏美と翼は下宿に立ち寄り、アキ(鈴木蘭々)やビリー(ダニエル・カール)たちとにぎやかに話し、裕二郎(吹越満)特製のずんだ餅を食べて楽しむ。しかし、旅館に帰ろうとしたその時、突然翼が苦しみだして、倒れる…。
突然苦しみだした翼(川口翔平)に付き添い、夏美(比嘉愛未)は病院へ。医者の見立てはアレルギー反応。夏美は翼のそばアレルギーに注意を払っていたが、裕二郎(吹越満)の娘が食べさせたまんじゅうに、そば粉が入っていたのだ。病院に駆けつけた母親の愛子(とよた真帆)は、「翼を勝手に連れ出し、命にかかわるミスを犯した」と夏美を責める。環(宮本信子)の懸命の謝罪にも愛子は応じず、加賀美屋は窮地に立たされる…。
夏美(比嘉愛未)のミスでアレルギー発作を起こした翼(川口翔平)。容態は回復したが、愛子(とよだ真帆)は「加賀美屋を訴える」と言いだす。誰もが夏美をクビにするべきだと考えるなか、環(宮本信子)が下した結論は、教育係の時江(あき竹城)の解雇だった。時江を辞めさせることに反対の伸一(東幹久)と環の溝は、ますます深まる。夏美は「時江には責任がない」とカツノ(草笛光子)に訴えるが、取り合ってもらえない…。
夏美(比嘉愛未)は、愛子(とよた真帆)と翼(川口翔平)に土下座して謝るが、相手にされない。一方、時江(あき竹城)の解雇に納得できない仲居たちは、「夏美が辞めるべきだ」と責めたてる。そんな旅館の危機に、カツノ(草笛光子)は「大女将(おかみ)を辞めて隠居する」と発表。環(宮本信子)は女将から仲居頭に降格する。何の処分もない夏美に、従業員たちはいっそう反発し、いたたまれくなった夏美は、盛岡を出て行く…。
加賀美屋での修業をあきらめて盛岡を飛び出した夏美(比嘉愛未)は、横浜に戻る。しかし、家に帰ることもできず、港の公園で一人打ちひしがれていた。そのころ柾樹(内田朝陽)は、同僚・藤村香織(相沢紗世)の歓迎会に出席。香織は同僚とはいっても、柾樹と以前付き合っていた“元カノ”である。歓迎会の途中、盛岡の裕二郎(吹越満)から「夏美がいなくなった」との連絡を受けた柾樹は、夏美を探して横浜の町を走り回る…。
柾樹(内田朝陽)のアパートに連れられて来た夏美(比嘉愛未)は、やっと人心地ついたのか、加賀美屋での出来事を話しはじめる。柾樹は「しばらくのんびりすればいい」と優しく言いながらも、自分の責任だと感じていた。一方、盛岡では伸一(東幹久)が旅館の建て替え準備をはじめるなど、環(宮本信子)たちがカツノ(草笛光子)に代わるため、主導権を握ろうとしていた。柾樹は環と話をするために、盛岡へ行こうとするのだが…。
思わず実家に足をのばした夏美(比嘉愛未)は、弟の智也(神木隆之介)と道端で出会う。智也にうながされて夏美は家に帰るが、父の啓吾(大杉漣)は「ケーキと女将(おかみ)修業のどちらも放り出すような娘を迎えるわけにはいかない」と厳しく言い放つ。返す言葉もない夏美は、房子(森昌子)が止めるのを振り切って柾樹(内田朝陽)のアパートに戻った。その夜、啓吾と大げんかした智也がアパートに転がり込んでくる。
家出してきた智也(神木隆之介)は、夏美(比嘉愛未)と同様、柾樹(内田朝陽)のアパートでしばらく世話になることに…。一方、旅館を継ぐため、一刻も早くホテルの仕事に決着をつけたい柾樹だが、“元カノ”の藤村香織(相沢紗世)が新プロジェクトのパートナーになったことで、その先行きも怪しくなる。柾樹は夏美の一件に話をつけようと、盛岡に向かうが、その留守中に、香織が夏美を訪ねてアパートにやって来る。
柾樹(内田朝陽)の留守中に夏美(比嘉愛未)を訪ねて来た香織(相沢紗世)は、「夏美が女将(おかみ)修業を辞めたからには、柾樹との結婚はなくなった」と言って夏美を挑発する。一方、盛岡に着いた柾樹は環(宮本信子)たちに、「夏美が女将修業を辞めたいのなら自分も加賀美屋を継ぐのをやめる」と話し、カツノ(草笛光子)にも「夏美を幸せにするために盛岡には戻れない」と謝る。しかしこの時、夏美はある決意をしていた…。
柾樹(内田朝陽)が「加賀美屋を継がない」と公言したことで、環(宮本信子)や伸一(東幹久)たちは本格的に旅館経営の刷新に取りかかろうと、意気があがる。一方、横浜の柾樹のアパートには、房子(森昌子)が夏美(比嘉愛未)と智也(神木隆之介)を訪ねて来る。母の気遣いに慰められた夏美だが、胸に秘めた決意は変わらなかった。その夜、夏美は盛岡から戻った柾樹に「婚約を解消してください」と切りだす…。
夏美(比嘉愛未)の幸せを考えて旅館を継ぐのをやめた柾樹(内田朝陽)に、夏美は婚約解消を申し出た。「自分と別れて旅館を継ぐのが柾樹の幸せだ」と信じる夏美と、「このまま横浜で一緒に暮らそう」と考える柾樹。2人の話し合いは平行線となる。そこへ盛岡から聡(渡邉邦門)が来て、夏美の戻りを待ちわびる下宿の仲間の声を伝える。さらに、夏美が女将(おかみ)修業をあきらめる発端となった翼(川口翔平)から手紙が届く…。
加賀美屋では、忙しい環(宮本信子)の手伝いをさせるため、伸一(東幹久)が妻の恵美子(雛形あきこ)を再び旅館で働かせようとする。しかし、恵美子はそれを断り、夫婦仲に暗雲が立ち込める。一方、横浜の夏美(比嘉愛未)は、翼(川口翔平)から届いたお礼の手紙に書かれていた住所を訪ねる。自分の不注意で翼をアレルギーの発作で苦しめたことを謝りに来た夏美は、成り行きで翼の夕食を作ってやることになったのだが…。
伸一(東幹久)は恵美子(雛形あきこ)に女将(おかみ)修業をはじめるよう、説得を続けるが、恵美子からはっきりと「女将になりたくない」と宣言され、家庭内別居の状態になってしまう。一方、柾樹(内田朝陽)は「夏美(比嘉愛未)がそばに居てくれるだけで幸せだ」と懸命に訴えて、夏美との結婚をやめるつもりがないことを伝える。しかし、夏美は「自分らしい生き方をしてほしい」とだけ答え、その翌朝、黙ってアパートを出る。
斎藤愛子(とよた真帆)の弁護士が、賠償金を要求する書面を持って加賀美屋に現れた。環(宮本信子)や伸一(東幹久)は「弁護士を立てて争うべきだ」と主張するが、カツノ(草笛光子)は「誠意を持っておわびするだけ」と、取り合わない。一方、愛子は自分の留守中に夏美(比嘉愛未)が翼(川口翔平)を訪ねていたことを知り、夏美を呼び出す。夏美を責める愛子に我慢できなくなった翼は、生まれてはじめて母親に怒りをぶつける。
息子の翼(川口翔平)がはじめて反抗したことに愛子(とよた真帆)はショックを受けるが、翼の気持ちを愛子に理解させるため、懸命に説得する夏美(比嘉愛未)のおかげで、愛子は自分の非を認めて翼に謝る。愛子の訴訟にどう対応するかで揺れる加賀美屋では、カツノ(草笛光子)が愛子に謝るため、東京へ出向くことに。一方、夏美と別れた形になった柾樹(内田朝陽)に、同僚で“元カノ”の香織(相沢紗世)が急速に近づいてきた。
カツノ(草笛光子)が謝罪しようと愛子(とよた真帆)を訪ねると、そこには夏美(比嘉愛未)の姿が…。愛子は「夏美のおかげで翼(川口翔平)ときちんと向き合うことができた」と感謝し、「加賀美屋に対する訴訟を取り下げる」と告げる。カツノと再会した夏美は女将(おかみ)修業を途中で投げ出したことを後悔している自分に気づく。そして、何もかもを投げ出した自分を見つめ直すために、夏美は一心不乱にケーキを作りはじめる。
「心からおもてなしができる女将(おかみ)になりたい」という本心に気づいた夏美(比嘉愛未)は、盛岡に戻る決心をする。ただし、柾樹(内田朝陽)の結婚相手としてではなく、女将を目指す一人の女として修業をするため、柾樹との関係を一度白紙に戻す。啓吾(大杉漣)と房子(森昌子)も、再び自分の道を歩きはじめた夏美を見守ることにする。一方、加賀美屋ではカツノ(草笛光子)の大女将引退を公表する茶会の準備がはじまる。
伸一(東幹久)は加賀美屋の茶会で使う茶釜を平治(長門裕之)の工房に取りに行くが、弟子の作った茶釜を気に入り、持ち帰ってしまう。へそを曲げると手をつけられない平治に、加賀美屋の面々が困っていると、そこに夏美(比嘉愛未)が現われる。「もう一度女将(おかみ)修業をさせてほしい」と願う夏美だが、受け入れてもらえない。そこで「平治の茶釜をもらって来たら、修業を認めてほしい」と言い、夏美は平治の工房に向かう。
加賀美屋の茶会で使う茶釜をもらいに来た夏美(比嘉愛未)を、平治(長門裕之)は追い返す。弟子の聡(渡邉邦門)の口利きで、ようやく対面しても、平治は「修業を途中で放り出すやつは気に入らん」と、夏美を相手にしない。そこで夏美は工房の玄関で座り込みを始める。一方、加賀美屋では、ひそかに様子をのぞきに来た時江(あき竹城)と伸一(東幹久)が涙の対面をしていた。夜になり雨が降りだすが、夏美は座り込みを続ける…。
雨のなか、工房の前で座り込みを続ける夏美(比嘉愛未)に、ついに平治(長門裕之)は根負けし、家に入れてやる。そこで、泊めてもらったお礼にと、夏美は目にいいブルーベリー入りのケーキを焼いて、平治にふるまう。視力が衰え、思うような仕事ができずにいらだつ平治は、「もう、ぶざまな鉄器しか作れないので引退する」と言う。だが夏美は、「見た目が不格好でも、心を込めて作ればそれが平治の作品だ」と、懸命に説得する。
加賀美屋の茶会まであと4日、環(宮本信子)は平治(長門裕之)の茶釜をあきらめるが、カツノ(草笛光子)は夏美(比嘉愛未)が茶釜をもらって来ると信じて待つ。一方、平治は夏美に触発されて、茶釜を作る情熱を取り戻す。作業に没頭して出来上がった鉄器は、平治にとって久しぶりに満足のいくものだった。夏美はその茶釜を持って加賀美屋に戻り、「跡継ぎの結婚相手ではなく、一人の仲居として修業させてほしい」と頼み込む。
環(宮本信子)の反対を押し切って、カツノ(草笛光子)は夏美(比嘉愛未)が再び女将(おかみ)修業することを許す。しかし、環は「決して修業を認めたわけではない」と夏美に冷たく告げる。久しぶりに下宿に帰った夏美は、裕二郎(吹越満)やアキ(鈴木蘭々)たち、仲間との再会を喜ぶ。そしてその翌日、加賀美屋には地元の名士や、なじみの客たちが集まり、カツノが大女将引退を表明する茶会がとり行われようとしていた。
加賀美屋で年に一度開かれる茶会で、カツノ(草笛光子)が大女将(おかみ)を引退すると公表した。今後は環(宮本信子)が名実ともに女将として旅館を取り仕切ることになる。カツノは代々女将が引き継ぐ空の玉手箱を環に手渡し、「その意味を自分で考えるように」とだけ伝える。夏美(比嘉愛未)は再び修業をはじめるが、従業員たちは納得できずに反発する。そこに、加賀美屋の様子をうかがう彩華(白石美帆)という女が現れる。
旅館の実権を握った環(宮本信子)は、仲居頭の時江(あき竹城)を復職させ、夏美(比嘉愛未)を厳しく指導させる。ある晩、夏美の下宿に浩司(蟹江一平)が彩華(白石美帆)を連れて来る。浩司は昔から仲間内でマドンナ的な存在だった彩華と付き合っていることを裕二郎(吹越満)に報告して帰る。一方、聡(渡邉邦門)は夏美に自作の鉄器のお守りを渡す。しかし、それを目撃した佳奈(川村ゆきえ)は夏美を避けるようになる…。
横浜では、柾樹(内田朝陽)と香織(相沢紗世)が急接近して、啓吾(大杉漣)の心配が募っていた。一方、夏美(比嘉愛未)が修業を再開したことに危機感を持った伸一(東幹久)は、妻の恵美子(雛形あきこ)を無理やり若女将(おかみ)にしようとして、夫婦仲がギクシャクする。そして、環(宮本信子)は夏美を追い出すために時江(あき竹城)の監視下で厳しい修業をさせる。そんな折、彩華(白石美帆)が加賀美屋を訪ねてきた…。
浩司(蟹江一平)は彩華(白石美帆)との交際を家族に報告する。環(宮本信子)は、一流料亭の娘でしっかりと仕事ができる彩華に好感を持つ。彩華から「女将(おかみ)修業を応援する」とエールを送られた夏美(比嘉愛未)も、彩華に感謝する。その翌日、仲居の手が足りず、困っていた環に、彩華が仲居として働くと申し出る。一方、夏美との仲がギクシャクする佳奈(川村ゆきえ)は、聡(渡邉邦門)に初めて自分の思いをぶつける。
彩華(白石美帆)が仲居として働きはじめた。さすがに元は一流料亭の娘とあって、客への応対だけでなく、お茶やお花の心得もあり、環(宮本信子)は感心する。夏美(比嘉愛未)は時江(あき竹城)に生け花を指導されるが、彩華には到底かなわず、カツノ(草笛光子)に生け花を教えてもらうことにする。ある日、板場で事件が起きる。やけどした佳奈(川村ゆきえ)の腕を冷やそうとして、夏美がしきたりを破って板場に入ったのだ。
板場のしきたりを破った夏美(比嘉愛未)は、板長(草見潤平)にどなられるが、「佳奈(川村ゆきえ)のやけどの方が大事だ」と反論する。その結果、夏美は従業員の反感を買い、その場をうまく収めた彩華(白石美帆)が株を上げる。夏美は佳奈とも仲直りができず、孤立してしまう。そして、またしても事件が起こる。夏美の預かっていた組合費が、目を離したすきに無くなってしまったのだ。夏美は彩華がそばにいたことを思い出す。
夏美(比嘉愛未)のもとに血相を変えた浩司(蟹江一平)がどなり込んできた。帳場から組合費が紛失した一件で、「夏美が彩華(白石美帆)を犯人扱いした」と猛抗議してきたのだ。夏美は彩華に「誰か見かけなかったか」と尋ねただけだったが、従業員や環(宮本信子)たちからも厳しい非難を受けて、夏美は孤立する。浩司は彩華の窮地を救って意気揚々としていたが、彩華が組合費の袋をロッカーから取り出すのを偶然目撃してしまう。
加賀美屋では夏美(比嘉愛未)に対する風当たりが強くなり、仲居や板前たちは夏美を無視するような状態に。しかし、指導係の時江(あき竹城)は、一人で昼食をとる夏美の隣に来て、一緒に食事を始めた。「加賀美屋が好きで、もう40年も働いている」という時江の話を聞き、夏美は「もっと頑張らなければ」と、少し明るさを取り戻す。一方、横浜では柾樹(内田朝陽)が夏美の実家に引越して来て、啓吾(大杉漣)が張り切っていた。
仲居としての彩華(白石美帆)の評価が高まり、夏美(比嘉愛未)は誰からも相手にされず、孤軍奮闘していた。浩司(蟹江一平)は彩華が組合費を盗んだことを知って問いただすが、彩華から「病気の母の入院費のため」と聞かされて、一肌脱いで金の工面をしてやることにする。一方、夏美はカツノ(草笛光子)から、「配慮のない言葉でほかの従業員たちを傷つけたのだから、謝りなさい」と諭されて、はじめて自分の至らなさに気づく。
夏美(比嘉愛未)はほかの従業員たちのプライドを傷つけたことを謝罪する。しかし、彼らの腹の虫は治まらない。夏美は孤立無援のままかと思われたが、佳奈(川村ゆきえ)が夏美の味方となり、さらに浩司(蟹江一平)が夏美と彩華(白石美帆)を和解させて、なんとかこの一件は落着する。彩華が組合費を盗んだことを知る浩司は、その金を自分で立て替えて返し、「彩華を正式に仲居として雇ってほしい」と環(宮本信子)に願い出る。
大きなプロジェクトを任された柾樹(内田朝陽)は休みなく働き、旅館での修業や人間関係に疲れた夏美(比嘉愛未)が柾樹に電話をしてもつながらない。夏美が柾樹とのあいだに距離を感じていると、下宿仲間の聡(渡邉邦門)から「好きだ」と告白される。一方、柾樹は上司の吉沢(ささきいさお)から昇進を持ちかけられ、退職の撤回を迫られていた。そんななか、夏美を心配する智也(神木隆之介)が、柾樹を訪ねてホテルに現れる。
環(宮本信子)は彩華(白石美帆)を正式に仲居として働かせることを決めかねていた。浩司(蟹江一平)は彩華と結婚するつもりで、「母の病気のために彩華が背負った借金も自分で返す」と、家族を説得する。環に結婚の真意を問われた彩華は、「浩司との結婚を前提に、加賀美屋の女将(おかみ)修業をさせてほしいと」言う。そんな事情も知らない夏美(比嘉愛未)は、時江(あき竹城)の厳しい指導のもと女将修業に励んでいた…。
彩華(白石美帆)が浩司(蟹江一平)と結婚するのは加賀美屋の女将(おかみ)になるためだと知った環(宮本信子)は、一抹の不安を感じつつも彩華の女将修業を認める。一方、カツノ(草笛光子)は女将修業中の夏美(比嘉愛未)にライバルが出現したことを心配するが、大女将を引退した手前、環の方針に口をはさめない。夏美は、一流料亭の娘が女将候補になったことに内心穏やかではないが、頑張るだけだと自分に言い聞かせる。
夏美(比嘉愛未)は腰を痛めた番頭の中本(高橋元太郎)に代わり、庭の松の手入れに励む。一方、女将(おかみ)修業のライバル・彩華(白石美帆)は、環(宮本信子)について女将としての接客を学んでいた。地道で単調な作業を黙々と行う夏美と、優雅な物腰で接客をする彩華、どちらが女将にふさわしいかは、はた目にも歴然であった。しかし夏美は、「相手が誰であろうと女将修業は自分のためにやるものだ」と固く信じて頑張る。
庭の松を懸命に手入れする夏美(比嘉愛未)を見て、中本(高橋元太郎)は夏美の真剣な思いと不思議な魅力にひかれはじめる。追い出すために指導をしてきたはずの時江(あき竹城)も、へこたれない夏美に根負けしたように、厳しいが親身な指導をするようになった。一方、彩華(白石美帆)は板場や仲居たちにも気に入られ、順調に修業を進めていた。松の手入れを終えた夏美は、時江から蔵の食器を整理するように言いつけられるが…。
夏美(比嘉愛未)は蔵の食器の整理に熱中するあまり、脚立から落ちて足を痛めてしまう。カツノ(草笛光子)は、頑張りすぎる夏美を心配する。一方、浩司(蟹江一平)は、恋人の彩華(白石美帆)が女将(おかみ)修業中なのだが、ケガをした夏美を気にかけて、「夏美と彩華の修業のどちらも応援する」とエールを送る。2人の女将候補の修業の様子を見た環(宮本信子)は、昔カツノに言われた屈辱的な言葉を思い出していた…。
夏美(比嘉愛未)の作業を手伝う彩華(白石美帆)は、あやまって皿を割るが黙って箱に戻す。夏美と彩華は板場によばれ、割れた皿のことを問いただされるが、2人とも知らないと答える。しかし、彩華の態度に何かを感じた夏美は自分がやったと言ってしまう。伸一(東幹久)は「彩華を落としいれようとした夏美の女将修業を中止するべきだ」とカツノ(草笛光子)に進言する。返答に窮するカツノを見て環(宮本信子)は留飲を下げる。
テレビでホテルの結婚式場と遠方の人を結ぶ企画を立ち上げた柾樹(内田朝陽)は、突然モニターに映った夏美(比嘉愛未)に驚く。聞けば、花嫁の父・吉田(山本圭)が、客として訪れた加賀美屋で、夏美が人生の新しい一歩を踏み出す勇気を与えてくれたのだという。柾樹は「盛岡に戻って夏美を支えよう」と心から思う。しかし、そのころ夏美は、彩華(白石美帆)を落としいれようとしたと誤解されて、窮地に追い込まれていた…。
夏美(比嘉愛未)は柾樹(内田朝陽)から盛岡に帰る知らせを受けて、久しぶりに明るい気持ちになる。さっそく柾樹が加賀美屋を継ぐと言ったことをカツノ(草笛光子)に伝えるが、彩華(白石美帆)を浩司(蟹江一平)と結婚させて女将(おかみ)にしようと考えていた環(宮本信子)は、この知らせを聞いて焦る。彩華は夏美を押しのけて女将になる自信があったが、環は夏美には彩華にはない女将の資質があると不安を感じていたのだ。
夏美(比嘉愛未)と彩華(白石美帆)のことで、従業員たちがいがみ合っていると聞いたカツノ(草笛光子)は、環(宮本信子)に厳しく意見する。旅館のことに口出しされた環は内心腹立たしかったが、姑(しゅうとめ)には逆らえず、悔しい思いをする。ある日、柾樹(内田朝陽)の同僚の香織(相沢紗世)が客として加賀美屋を訪れる。香織はなぜ柾樹が仕事をやめて盛岡に帰ると言いだしたのかを探るため、夏美に会いに来たのだった。
夏美(比嘉愛未)の柾樹(内田朝陽)に対するまっすぐな思いを知った香織(相沢紗世)は、納得して加賀美屋を後にする。ホテルに戻った香織は、柾樹の辞意を撤回させようとする吉沢(ささきいさお)に「柾樹のやりたいようにやらせてほしい」と頼み込み、柾樹には「夏美が柾樹を信じて待つ気持ちに負けた」と打ち明ける。一方、柾樹は最後の仕事を無事終えて、夏美に電話をする。「もうすぐ会える」という柾樹の言葉に夏美は喜ぶ。
柾樹(内田朝陽)が盛岡に戻ることになり、浅倉家を去る日がきた。啓吾(大杉漣)や房子(森昌子)は「夏美(比嘉愛未)のことを守ってほしい」と柾樹に頼む。盛岡に着いた柾樹は夏美を一本桜に呼び出す。一面の銀世界にすっくと立つ一本桜を前に、2人はこれから共に生きていくことを誓う。一方、柾樹を迎える環(宮本信子)や伸一(東幹久)はいよいよ対決姿勢を強め、さらに彩華(白石美帆)も夏美に敵対心を燃やしていた。
やっと加賀美屋に戻った柾樹(内田朝陽)は、出迎える環(宮本信子)たちへの挨拶(あいさつ)もそこそこに、夏美(比嘉愛未)といっしょにカツノ(草笛光子)とうれしい対面をはたす。その後、環にうながされて柾樹は従業員たちにも挨拶をし、そこで学生時代のマドンナだった彩華(白石美帆)と再会して驚く。そのうえ、彩華が浩司(蟹江一平)とつきあっていて、夏美と共に女将(おかみ)修業をしていると聞き、さらに驚く。
柾樹(内田朝陽)が加賀美屋で働くようになり、カツノ(草笛光子)と環(宮本信子)の緊張が高まる。柾樹と夏美(比嘉愛未)の結納をせかすカツノに対して、環たちは浩司(蟹江一平)と彩華(白石美帆)の結婚話を進めようとするがうまくいかない。ある晩、夏美の下宿で開かれた柾樹の歓迎パーティーに浩司と彩華が現れ、柾樹との再会を祝う。しかし、彩華が以前、柾樹のことが好きだったという話が、4人の関係に影響を及ぼす。
柾樹(内田朝陽)が戻り、夏美(比嘉愛未)はいっそう張り切って仲居の仕事に取り組む。一方、彩華(白石美帆)はそんな夏美に冷めた態度で接する。伸一(東幹久)のもと、帳場の仕事を手伝い始めた柾樹は、仕事の飲み込みも早く有能なため、環(宮本信子)はそのうち柾樹と伸一の立場が逆転するのではと心配する。ある夜、夏美は一人帳場に残って書類を調べる柾樹を見つけるが、あまりに思いつめた表情に声をかけられない…。
夏美(比嘉愛未)と柾樹(内田朝陽)が仲良く話をしていると、母親の見舞い帰りの彩華(白石美帆)が通りがかる。しかし彩華は2人を避けて行ってしまう。その夜、居残り仕事をする彩華を柾樹が訪ねる。彩華は「加賀美屋の内紛につけ込めば女将(おかみ)になれると考えて、浩司(蟹江一平)と付き合いはじめた」と告白し、柾樹の胸で泣く。新作料理が完成し、彩華を探していた浩司は、抱き合う2人の姿を見てショックを受ける。
加賀美屋を格付けするために、旅行ガイドブックの調査員が来るという。環(宮本信子)は夏美(比嘉愛未)と彩華(白石美帆)のどちらが若女将(おかみ)にふさわしいか、この調査員の評価をもとにはっきりさせようと考える。一方、彩華と柾樹(内田朝陽)が抱き合っているところを目撃した浩司(蟹江一平)は、一人では抱えきれず、そのことを夏美に打ち明ける。「柾樹のことを信じる」と浩司にきっぱりと言い切る夏美だったが…。
伸一(東幹久)は彩華(白石美帆)にだけガイドブックの調査員が来ることを教えて、夏美(比嘉愛未)との女将(おかみ)競争で有利に立てるよう計らう。彩華は浩司(蟹江一平)をアパートに呼び出し、「自分にだけ力を貸してほしい」と頼む。一方、前夜に柾樹(内田朝陽)と彩華が2人きりでいたことを知った夏美は、柾樹の話を聞けずに、落ち込んでいた。その日の午後、川端(中島久之)という調査員らしい男が加賀美屋を訪れる。
伸一(東幹久)は彩華(白石美帆)を雑誌の調査員と思われる川端(中島久之)の担当にする。彩華はそつなく接客し、川端に好印象を与える。一方、雑用をこなす夏美(比嘉愛未)は、裏庭でみかけた怪しい男・田辺(温水洋一)を泥棒と勘違いして一騒動起こす。予約なしで来た田辺は無理を言って宿泊するが、「岩手山の見える部屋に替えてくれ」と夏美を困らせる。夏美は田辺に目を閉じるように言い、岩手山の美しさを語りはじめた。
夏美(比嘉愛未)は田辺(温水洋一)から、「夕食は加賀美屋の定番メニューではなく、じゃじゃ麺が食べたい」と言われる。なんとかして田辺の希望をかなえようとする夏美に、柾樹(内田朝陽)は、「板場が自信を持って作った料理を出すべきだ」と忠告する。夏美は自分の思慮が浅かったことに気づき、「料理も加賀美屋のおもてなしだ」と説いて田辺を納得させる。しかし夕食後、田辺が「それでもじゃじゃ麺が食べたい」と言いだす。
彩華(白石美帆)が客室担当した川端(中島久之)はガイドブックの調査員ではないと判明し、環(宮本信子)たちは落胆する。実は夏美(比嘉愛未)が担当した客こそが調査員で、夏美が困るような要求をしたのは、加賀美屋の旅館としての実力を見極めるためだったのだという。雑誌記事で、「サービスや態度が素晴らしく、老舗(しにせ)旅館にふさわしいもてなしだった」と称賛された夏美は、若女将(おかみ)競争で一躍優位に立つ。
カツノ(草笛光子)は夏美(比嘉愛未)が雑誌記事で称賛されたことを知り、「夏美と彩華(白石美帆)のどちらが若女将(おかみ)にふさわしいか、結論を下すように」と環(宮本信子)をせき立てる。一方、浩司(蟹江一平)は彩華に「若女将になれなくても結婚してくれ」と思いを告げるが、彩華は「まだ決着はついていない」とだけ答え、環に敗北を告げられても、「ここで自分が負ければ環たちはどうするつもりか」と、切り返す。
夏美(比嘉愛未)は彩華(白石美帆)の生け花の美しさを褒めるが、彩華は夏美に「いい子ぶった態度が気に食わない」と食ってかかり、「若女将(おかみ)の座をかけた争いに負けたわけではない」と強気な態度を崩さない。そんな彩華を訪ねて借金取りの男たちが現れる。男たちは滞った借金の返済を強引に迫るが、浩司(蟹江一平)と柾樹(内田朝陽)が、捨て身の反撃で彩華を守る。しかし、この一件で彩華は窮地に陥ってしまう…。
彩華(白石美帆)が借金取りに追われていると知り、これまで彩華を慕っていた仲居たちは、急によそよそしい態度で彩華に接する。伸一(東幹久)たちも以前帳場で起きた組合費の紛失に彩華がかかわっていたのではないかと疑いはじめた。次の日、夏美(比嘉愛未)は病気の彩華を見舞いにアパートへ行き、そこで彩華が自分を追い出そうと仕組んだ計略のすべてを聞く。彩華がこれまで背負ってきた辛い思いをはじめて知った夏美は…。
彩華(白石美帆)は女将(おかみ)になることでしか満たされない、寂しい胸の内を夏美(比嘉愛未)にさらけ出す。夏美は「彩華のことを大切に思っている浩司(蟹江一平)や柾樹(内田朝陽)の存在に気づいてほしい」と訴え、「互いに女将を目指して競い合いたい」と励ます。“自分になくて夏美にあるもの”がやっと分かった彩華は、翌日、環(宮本信子)に「暇を取らせてほしい」と頼む。夏美との勝負の敗北を、素直に認めたのだ。
夏美(比嘉愛未)が若女将(おかみ)になることを認めるしかなくなった環(宮本信子)。しかし、夏美は「本当に一人前になった時に認めてほしい」と環に頼む。夏美の成長に驚いた環は、より強い危機感を覚える。そのうえ、古い経営体質の加賀美屋を改革しようとする柾樹(内田朝陽)の動きも環たちをいらだたせる。環は「どうせ改革など無理だろう」と考えて、柾樹の好きなようにやらせるが、とんでもないもめ事が起きてしまう…。
加賀美屋の経営改革に乗り出した柾樹(内田朝陽)がまず手を付けたのは、板場の食材費だった。板長の篠田(草見潤平)が長年続けてきた仕入れを見直して食材費の赤字を削減しようとしたのだが、柾樹の一方的な物言いに従業員たちは反感を抱く。夏美(比嘉愛未)は改革を急ぐ柾樹に不安を感じるが、加賀美屋の将来を真剣に案じる柾樹の姿に、なにも言えない。一方、環(宮本信子)たちは柾樹が失敗しておとなしくなればと期待する。
夏美(比嘉愛未)は加賀美屋で働けることを心底喜んでいた。その純粋な気持ちは周囲にも伝わり、夏美とほかの仲居たちとの関係はしだいに良くなっていく。しかし、板場の経費削減を強引に進める柾樹(内田朝陽)と従業員との関係は悪化する一方。柾樹のことが心配な夏美は、裕二郎(吹越満)たちに相談するが、いい解決策は見つからない…。ある朝、板場に現れた板長の篠田(草見潤平)は「柾樹をつれて来い!」と、どなり散らす。
柾樹(内田朝陽)が仕入れ先を変えたため、「なじみの業者から魚をもらえない!」と篠田(草見潤平)がどなり込んできた。そこへ別の卸業者から魚を仕入れてきた柾樹が戻ってくる。「今までのやり方を変えてほしい」と柾樹は説得するが、篠田は応じない。柾樹は「やり方変えられないのは篠田が業者から裏金をもらっているからだ」と批判し、反発した篠田は板長を辞める。夏美(比嘉愛未)は柾樹の性急な改革を止めようとするが…。
板長が辞めた加賀美屋は、客にだす夜の料理の算段がつかず、混乱していた。伸一(東幹久)は組合に頼んで代わりの板前を派遣してもらおうとするが、うまくいかない。そこに隠居中のカツノ(草笛光子)が顔をだし、元は板前だった久則(鈴木正幸)に板場を手伝うように命じる。浩司(蟹江一平)を板長に、家族全員が一丸となっての夕食の準備がはじまった。夏美(比嘉愛未)も加賀美屋が危機を乗り越えられるようにと、懸命に働く。
家族一丸となって板場を手伝い、なんとか加賀美屋の危機を乗り切った一同。夏美(比嘉愛未)もいっしょに母屋でくつろぐ。一方、環(宮本信子)は「女が板場に入ってはならない」というしきたりを破ったことを、カツノ(草笛光子)にわびる。夏美は久則(鈴木正幸)から「柾樹(内田朝陽)の父親も旅館の古い習慣を変えようとしたことがあった」と聞く。夏美は柾樹の父について尋ねようとするが、カツノが強引に話をさえぎる…。
夏美(比嘉愛未)や加賀美家の一同がそろって夜食を食べているころ、柾樹(内田朝陽)はイーハトーブで夏美の帰りを待っていた。夏美が下宿に戻ると、柾樹はすでに帰ったあとで、夏美はそこで裕二郎(吹越満)から、「柾樹は“風の又三郎”のような、どこか寂しげな子供だった」と聞かされる。次の日、夏美は遠野を取材して観光案内の記事を書くよう、環(宮本信子)から依頼される。しかし、これには環の計略が秘められていた…。 氏名
夏美(比嘉愛未)とアキ(鈴木蘭々)は観光雑誌の取材のため遠野を訪れる。環(宮本信子)に頼まれた仕事だが、好奇心おうせいな夏美は遠野に興味津々で、精力的にあちこちを見て回る。だが、環の思惑は別にあった。20年以上前に加賀美屋を出て、今は遠野に住むという柾樹(内田朝陽)の父と夏美が出会えれば…と考えたのだ。夏美はカッパが出るという川に誤って落ちてしまうが、通りがかりの男(奥田瑛二)に助けてもらう。
川に落ちてびしょぬれになった夏美(比嘉愛未)は、助けてくれた政良(奥田瑛二)の家で風呂に入れてもらう。そこで、紀美子(あめくみちこ)や5人の子どもたちに泊まるように勧められ、夏美とアキ(鈴木蘭々)はその言葉に甘え、泊めてもらうことに…。夏美は5人の子どもたちが政良と紀美子の実の子ではなく、里子だと知る。翌朝、政良が描いた遠野の風景画を眺めていた夏美は、男の子が描かれた絵を見て不思議な感情を覚える。
加賀美屋では、もめ事が起きていた。柾樹(内田朝陽)が旅館組合への寄付金を断り、伸一(東幹久)が柾樹に詰め寄ったのだ。「経営を刷新するために、古い悪習を断ち切るべきだ」という柾樹の主張に、環(宮本信子)は理解を示すが、かえって家族内の不和は大きくなる。一方、遠野の夏美(比嘉愛未)は、急用のできた政良(奥田瑛二)に代わり、一晩だけ5人の子どもたちの面倒をみることに。その晩、不思議な来訪者がやって来る。
風の強い晩に、政良(奥田瑛二)を訪ねて来た三郎(深澤嵐)という名の少年は、政良の描いた絵の男の子にそっくりだった。夏美(比嘉愛未)は驚きながらも三郎を家に入れ、ほかの子どもたちといっしょに楽しい夜を過ごす。一方、柾樹は、イーハトーブで裕二郎(吹越満)たちと語らっていた。話が父親のことになり、柾樹は「今さら父になど会いたくもない」と言うが、裕二郎は「後悔しないよう、会っておけ」と柾樹を説得する。
強い風の音で目が覚めた夏美(比嘉愛未)は、庭に三郎(深澤嵐)が立っているのを見つける。「父親に捨てられた」と寂しげに話す三郎を見て、夏美は「ずっといっしょにいるから」と、強く手を握る。次の朝、三郎がいなくなったことに気づいた夏美は、子どもたちに尋ねるが、「そんな子はいない」と言われる。政良(奥田瑛二)が「その子は“風の又三郎”かもしれない」と言ったその時、柾樹(内田朝陽)が夏美を迎えに現れる。
夏美(比嘉愛未)を迎えに来た柾樹(内田朝陽)を見て、政良(奥田瑛二)は驚く。実は政良は、20数年前に姿を消した柾樹の父だったのだ。柾樹は父がわびる言葉を拒み、外へ出ていく。そんな柾樹に紀美子(あめくみちこ)は、「政良は何度も柾樹を引き取ろうとしたけれどカツノ(草笛光子)に許してもらえなかった」と打ち明ける。夏美も「柾樹のことをずっと思ってきた政良を許してあげてほしい」と、懸命に柾樹を説得する。
柾樹(内田朝陽)は夏美(比嘉愛未)のおかげで、父の政良(奥田瑛二)と20数年ぶりに再会し、和解することができた。柾樹が加賀美屋を強引に改革しようとしていることを知った政良は、「心を開いて話し合えば、環(宮本信子)たちともきっと分かり合えるはずだ」と忠告する。そこで柾樹は、今回の一件は、父と自分を引き合わせるため環が取り計らってくれたのだと気づく。盛岡に戻った柾樹は、心から環に感謝し、頭を下げる。
柾樹(内田朝陽)から遠野で父親と会って、和解したと聞かされたカツノ(草笛光子)は、「自分は許すことはできない」と、息子に会うことをかたくなに拒絶する。その直後、カツノは倒れ、病床に伏せることに…。柾樹は「これから加賀美家の皆と心を開いて話し合いたい」と、夏美(比嘉愛未)に打ち明ける。柾樹の心の変化とカツノの死期を感じた環(宮本信子)は、大きな決断を胸に秘め「夏美と柾樹の結納を近々行う」と言う。
「環(宮本信子)たちが結納のために横浜に来る」と、夏美(比嘉愛未)から連絡を受けた啓吾(大杉漣)と房子(森昌子)は、大慌てで準備をはじめる。一方、結納を病床のカツノ(草笛光子)に報告した環は、「夏美が女将(おかみ)になることに異存はない」と切り出す。カツノは環の決断に感謝し、礼を言う。ところが、明日が結納という時に、張り切りすぎた久則(鈴木正幸)がぎっくり腰になり、横浜に行けなくなってしまう…。
夏美(比嘉愛未)と柾樹(内田朝陽)の結納が、柾樹が以前働いていたホテルで行われることになった。啓吾(大杉漣)や房子(森昌子)は緊張気味に環(宮本信子)たちの到着を待つ。腰を痛めた父の代役として、伸一(東幹久)が現われるというハプニングもあったが、結納の儀式は無事に終わった。そのあと開かれた両家の会食も和やかに進んでいたのだが、伸一が調子に乗ってしゃべりはじめると、とたんに雰囲気が悪くなる…。
結納後の会食の席で、加賀美屋の跡継ぎの話題になる。啓吾(大杉漣)は柾樹(内田朝陽)が継ぐと思っていたが、それを伸一(東幹久)が否定し、列席者の間に緊張が走る。その時、環(宮本信子)が「夏美を若女将(おかみ)にする」と発言し、「いずれは柾樹が加賀美屋を継ぐ」と続ける。ショックを受けた伸一は、盛岡に戻ると、部屋に閉じこもってしまう。詰め寄る時江(あき竹城)に環は、「すべて加賀美屋のためだ」と答える。
久しぶりに実家に泊まった夏美(比嘉愛未)は、心配する両親に「必ず加賀美家のみんなが分かりあえる時がくるから、大丈夫」と笑う。そんな夏美を見て、啓吾(大杉漣)も房子(森昌子)も娘の成長を感じとる。一方、盛岡では、環(宮本信子)が柾樹(内田朝陽)を跡継ぎに指名したことで、家族一同が混乱していた。伸一(東幹久)のことが心配な恵美子(雛形あきこ)は、「どうして伸一ではダメなのか?」と、環に訴えるのだが…。
環(宮本信子)が「夏美(比嘉愛未)を若女将(おかみ)にする」と宣言したことで、加賀美屋では新たなもめ事が起こっていた。柾樹(内田朝陽)が旅館を継ぐことに納得できない伸一(東幹久)は、腹立ちまぎれに柾樹と対立し、居づらくなって帳場を出て行ってしまう。一方、病床のカツノ(草笛光子)は、自分の知識や経験を、時間を惜しんで夏美に教授する。夜遅く、酒に酔って戻った伸一は、夏美と柾樹に毒づき、玄関に倒れこむ。
加賀美屋の跡継ぎから外された伸一(東幹久)は、仕事もせずに毎晩飲み歩いていた。憂さ晴らしにスナックで深酒する伸一に、秋山(石原良純)という男が興味深げに近づいてくる。心配した環(宮本信子)は伸一を呼び出して、「加賀美屋のために我慢してくれ」と頼む。しかし、伸一は子どものころから腹にためてきた環への憎しみをぶちまけ、思わず環は伸一の頬(ほお)をぶってしまう。偶然それを目撃した夏美(比嘉愛未)は…。
伸一(東幹久)に責められ、ショックを受けた環(宮本信子)が、その後何事もなかったように客の応対をしている姿を見て、夏美(比嘉愛未)は女将(おかみ)業の過酷さを改めて感じる。夏美と柾樹(内田朝陽)は環に「伸一の下で働かせてほしい」と申し出るが、環は「新しい加賀美屋を作るためには、跡継ぎは柾樹しかいない」と譲らない。家族同士の敵対に、加賀美家の危機を感じたカツノ(草笛光子)が、病を押して立ち上がる。
夏美(比嘉愛未)をそばに従えたカツノ(草笛光子)は、加賀美家の全員を座敷に集め、病人とは思えぬ気丈さで話しはじめた。「旅館だけでなく加賀美家までも柾樹(内田朝陽)に継がせるつもりか」と悪態をつく伸一(東幹久)に、カツノは黙って自分の株券のすべてを与える。そして、伸一を苦しめたことをわび、「お前の力が必要だ」と訴えた。すると、伸一は固い表情のまま、「この場で跡継ぎ問題に決着をつけよう」と言いだす…。
新緑の季節を迎えた加賀美屋では、夏美(比嘉愛未)と柾樹(内田朝陽)の結婚式の準備が進んでいた。夏美の実家から届いた白無垢(むく)を嬉しそうに眺めるカツノ(草笛光子)に、環(宮本信子)が「家族全員で写真を撮ろう」と提案する。その日の夜食は久しぶりにカツノを囲んで一家全員がにぎやかにそろった。夜、夏美が休んでいるカツノの様子を見に行くと、平治(長門裕之)がやって来て「柾樹の父親の居所を教えろ」と言う。
夏美(比嘉愛未)と柾樹(内田朝陽)の結婚式の当日。横浜から啓吾(大杉漣)や房子(森昌子)たちも来て、加賀美屋は大勢の客であふれかえっていた。両親と対面した夏美は、今まで育ててもらった礼を言い、女将(おかみ)修業をする勝手を許してくれたことを感謝する。一方、この日を待ち望んでいたカツノ(草笛光子)の容態は思わしくなかった。環(宮本信子)が一人看病に残り、ほかの家族たちを式場へと向わせることにする。
結婚式の朝。ロビーに集まった仲居や板前たちに見送られて、柾樹(内田朝陽)と白無垢(むく)姿の夏美(比嘉愛未)は神社へ出発する。しかし、そのころ離れでは、カツノ(草笛光子)の容態が急変し、医者が来ていた。今日がヤマだと知った環(宮本信子)は、この日を楽しみにしていたカツノの思いをくみ、容態の悪化を誰にも告げず、結婚式を続ける決断を下す。そこへ突然政良(奥田瑛二)が現れ、カツノと親子の再会を果たす。 氏名
カツノ(草笛光子)は大きな心残りだった息子の政良(奥田瑛二)との再会を果たし、喜びをかみしめていた。環(宮本信子)はカツノのことを平治(長門裕之)に頼み、結婚式場へと向かう。式場で待つ家族たちはカツノの病状を心配していたが、「なにも心配ない」という環の明るい笑顔を見て安心する。しかし、花嫁姿を一目カツノに見てほしいと願う夏美(比嘉愛未)は、一抹の不安を抱いていた…。そしてついに、結婚式がはじまる。
カツノ(草笛光子)は式場には行かず、政良(奥田瑛二)たちといっしょに夏美(比嘉愛未)と柾樹(内田朝陽)が式を挙げて戻るのを待っていた。だが、カツノはまるで2人の結婚式の様子が見えているかのように、病床で笑みを浮かべる。一方、加賀美屋の広間には披露宴に出席する親せきや友人たちが次々と訪れていた。式場から戻った夏美がカツノに会いに行こうとすると、環(宮本信子)が「その前にやるべきことある」と言いだす。
環(宮本信子)は披露宴の席で、夏美(比嘉愛未)と柾樹(内田朝陽)の結婚式が無事に済んだことを報告する。さらに、今日から夏美には若女将(おかみ)として働いてもらうこと、ゆくゆくは加賀美屋の経営を柾樹に任せることを発表する。集まった親せきからは独断で物事を進める環たちに非難の声が上がるが、環の迫力ある言葉に押されて、誰も反論できなかった。そして、夏美が加賀美屋の若女将としてはじめてあいさつをする。
カツノ(草笛光子)の葬儀は、遺言により身内だけでひっそりと行われた。翌日、環(宮本信子)は従業員を集め「皆でカツノの遺志を継いで、加賀美屋を盛り立てていこう」と訓示する。この日から若女将(おかみ)として働きはじめた夏美(比嘉愛未)は、一見明るい様子だが、環はなにか不安を感じて、時江(あき竹城)に夏美の補佐役を頼む。ふとカツノの部屋に入った夏美は、カツノとのさまざな出来事を思い出してぼんやりとする。
新婚の夏美(比嘉愛未)は、下宿を出て母屋の柾樹(内田朝陽)の部屋で暮らすことになった。若女将(おかみ)となった夏美は、客からの評判もよく、旅館が明るくなったようだが、柾樹は夏美が頑張りすぎだと感じていた。心配で電話をかけた横浜の啓吾(大杉漣)や房子(森昌子)も、夏美の無理をしているような明るさに余計に心配がつのる。一方、平治(長門裕之)は環(宮本信子)に「あんたが夏美を鍛える番だ」と助言する。
夏美(比嘉愛未)は葬儀に参列してもらったお礼を言いに、平治(長門裕之)の工房を訪ねる。今は平治が育てているカツノの子ガメを見て、夏美はカツノとの思い出に浸る。その様子に、平治もまた夏美のことが心配になる。一方、柾樹(内田朝陽)は伸一(東幹久)と一緒に、加賀美屋の経営改革案を説明して融資を得るために銀行へ向う。そこにたまたま居合わせた秋山(石原良純)という男が、なにやら2人に近づこうとするのだが…。
銀行から融資に前向きな回答をもらった伸一(東幹久)は上機嫌だったが、家族一同が「柾樹(内田朝陽)のおかげ」とほめるので、気分を害する。その夜柾樹は、夏美(比嘉愛未)がカツノの部屋にいるのを見つける。「一人になるとここに来る」という夏美に、心の空白を感じるが、柾樹は見守ることしかできない。翌日、夏美が予約を受けた客が宿泊に訪れた。そして、環(宮本信子)たちが心配していたことが起こってしまう…。
前田夫妻から客室に呼びつけられた夏美(比嘉愛未)は、「“来者如帰”という家訓はウソなのか」と言われ、気が動転してしまう。そこへ駆けつけた環(宮本信子)は、夏美の起こしたミスに気づいて慌てる。前田夫妻はその昔カツノに命を助けられ、それ以来、毎年宿泊している常連客だった。しかし、夏美が同姓の客の予約と間違え、いつものサービスができなかったのだ。その夜、落ち込む夏美のもとに平治(長門裕之)がやって来る。 氏名 種
平治(長門裕之)が夏美(比嘉愛未)のために風鈴を持ってきた。その風鈴は夏美に触発されて作った“人の心をホッと和ませる”鉄器だという。風鈴の涼やかな音色を聞いていると、心が癒やされていく気がする…。夏美がふと気づくと、目の前にカツノ(草笛光子)がいた。「悲しみに負けない笑顔をみせて」そうカツノに言われた気がした夏美は、一人で落ち込んでいた自分を反省し、加賀美屋のみんなのために笑顔になろうと決意する。
カツノが亡くなった悲しみを乗り越えて、夏美(比嘉愛未)は毎日仕事に励んでいた。環(宮本信子)はそんな夏美を見てひと安心する。一方、伸一(東幹久)と柾樹(内田朝陽)は旅館改修の資金融資を銀行に掛け合っていたが、柾樹が作った経営改革案が評価されて、うまく事が運ぶ。しかし、伸一は素直に喜べず、酒におぼれるようになる。そんな時、伸一は酒場でなれなれしく近づいて来た秋山(石原良純)と意気投合するのだが…。
深酒をした翌朝、伸一(東幹久)が目覚めたのはホステスのレナ(野波麻帆)の部屋だった。伸一は大慌てで家に戻り、恵美子(雛形あきこ)から朝帰りを責められずに済んでホッとする。ところがその日、伸一の留守中にレナが面会を求めて現れる。応対した夏美(比嘉愛未)は何事かと心配するが、戻った伸一から「このことは誰にも言うな」と固く口止めされてしまう。そして次の日、今度は秋山(石原良純)が加賀美屋を訪れる…。
加賀美屋に現れた秋山(石原良純)は突然「宿泊したい」と申し出る。秋山の来訪に困惑する伸一(東幹久)が部屋を訪ねると、秋山から「レナ(野波麻帆)との一夜の出来事に、どう責任を取るのか」と問い詰められる。そこへ夏美(比嘉愛未)と環(宮本信子)があいさつに来る。環は愛想よく振舞う秋山になにか信用できないものを感じて不安になる。翌朝、秋山は立ち去る際に「レナの件は自分がなんとかしてやる」と伸一に約束する。
夏美(比嘉愛未)は横浜の父・啓吾(大杉漣)に相談して、加賀美屋オリジナルの洋菓子を作ろうとしていた。そのデザインについて意見を聞こうと、夏美は久しぶりにイーハトーブを訪ねる。幼稚園から咲(兼崎杏優)と帰ってきたアキ(鈴木蘭々)を見て、夏美は「裕二郎(吹越満)とアキの仲がうまくいってほしい」とあらためて思う。だが裕二郎にはその気はまったくなく、そのことに気づいたアキは翌朝、誰にも告げず旅に出る…。
伸一(東幹久)は加賀美屋の全面建て替えを支持して、資金の融資を約束してくれた秋山(石原良純)をすっかり信用してしまう。すでに柾樹(内田朝陽)が旅館のリフォームを実行しようと動きはじめていたが、伸一はもう一度全面建て替えを家族に提案する。しかし、環(宮本信子)や夏美(比嘉愛未)は伸一のプランに反対する。それでもあきらめきれない伸一は、柾樹の留守中に、誰に相談することなく独断で計画を実行しようとする。
伸一(東幹久)は家族に隠れて秋山(石原良純)と会い、自分が所有する加賀美屋の株を譲渡する契約を結ぼうとしていた。さすがに契約をためらう伸一だったが、秋山が自分の個人財産を資金として提供してくれたことを知ると、心から信頼して契約する。翌日、地元銀行から柾樹(内田朝陽)が血相を変えて戻ってきた。伸一の代理人が融資を断ったというのだ。「事情を説明する」と言って家族を集めた伸一は、秋山を連れて現れるが…。
環(宮本信子)たち家族は、伸一(東幹久)が地元銀行の融資を勝手に断った理由を聞こうと待っていた。秋山(石原良純)を連れて戻った伸一は「秋山のおかげで、旅館の全面建て替えをする新たな資金のメドがついた」と報告する。環はだまし討ちのような伸一の行動を責めるが、恵美子(雛形あきこ)らが伸一に味方して、加賀美家は2つに分かれて対立してしまう。夏美(比嘉愛未)はこの危機をなんとかしようと躍起になるのだが…。
伸一(東幹久)は秋山(石原良純)に言われるまま、加賀美屋建て替え案を従業員全員に説明することを願い出る。夏美(比嘉愛未)が積極的に賛成したおかげで、伸一はなんとか環(宮本信子)の許可を得ることができた。秋山の説得力ある説明を聞き、従業員たちの気持は伸一の全面建て替え案を支持する方に傾く。だが、秋山を信用できない柾樹(内田朝陽)や浩司(蟹江一平)が反対を唱えたため、伸一との対立はさらに激化していく。
環(宮本信子)は伸一(東幹久)の目を覚まそうと意見するが、「秋山(石原良純)と組むことが加賀美屋のためになる」と固く信じる伸一は聞く耳を持たない。ある日、秋山は仲居たちにプレゼントを配りながら、加賀美屋の給料がいかに安いかを吹聴して回る。一方、柾樹(内田朝陽)は横浜の香織(相沢紗世)から秋山についての調査結果を聞くのだが…。
仲居たちは給料が相場よりも安いという秋山(石原良純)の言葉をうのみにして、賃上げ要求をしようとする。心配した佳奈(川村ゆきえ)は秋山の動きに注意するよう、夏美(比嘉愛未)に伝える。一方、伸一(東幹久)は浩司(蟹江一平)を懐柔するために秋山と引き合わせるが、浩司は「伸一の計画には反対だ」と言って席を立つ。また、この一件の調査を進める柾樹(内田朝陽)は、裏で乗っ取り屋が絡んでいると知り、がく然とする。
柾樹(内田朝陽)は家族全員を座敷に集め、これまで調べた秋山(石原良純)に関する情報を皆に報告する。すでに盛岡のリゾート開発が進行しており、その計画に外資の乗っ取り屋がからんでいるという。「秋山こそがその乗っ取り屋だ」と柾樹は断言する。環(宮本信子)は「すぐに秋山からの融資を断れ」と伸一(東幹久)に命じる。しかし時すでに遅く、伸一は融資と引き換えに加賀美屋の株の半分を秋山に譲っていたのだった…。
伸一(東幹久)は懸命に秋山(石原良純)を捜したが見つからず、ただぼう然とうなだれていた。久則(鈴木正幸)は「ご先祖様に申し訳がたたない」と言って伸一を殴ろうとする。そんな危機的状況でも夏美(比嘉愛未)や環(宮本信子)は笑顔で接客しなければならなかった。だが、当の伸一は部屋に閉じこもり、旅館に出てこない。見かねた恵美子(雛形あきこ)は「逃げないで家族といっしょに闘ってほしい」と伸一を励ます。
伸一(東幹久)は加賀美屋の株を秋山(石原良純)に渡してしまったことを家族に謝る。皆が納得できない思いで黙っていると、夏美(比嘉愛未)が「加賀美屋は一番大事なものを失っていない、互いを思いやる気持ちがこの家族にある限り大丈夫だ」と明るく話しはじめる。一同は夏美の言葉に勇気づけられて、協力して闘うことを誓う。しかし、秋山は仲居たちをターゲットにして、次なる加賀美屋攻略作戦を開始する…。
加賀美屋に秋山(石原良純)たちが現れ、建物を全面改装して大勢の宿泊客を収容できる旅館にする計画を環(宮本信子)に突きつける。「異存があれば株主総会を開いて加賀美家の人々を経営から外す」と脅しをかける秋山に、夏美(比嘉愛未)は「秋山はこんなひどいことをするような人間ではないはず」とまっすぐに語りかける。秋山は少したじろぐが、加賀美屋を乗っ取る計画を進めるべく、仲居たちにストライキをけしかける…。
加賀美家は買収騒動のせいで以前よりも結束力が増していた。しかし、仲居たちは秋山(石原良純)にそそのかされて、労働条件改善を求めるストライキをはじめる。夏美(比嘉愛未)や環(宮本信子)は窮状を訴えて説得を試みるが、仲居たちは応じず、両者の関係は悪化していく。そのうえ、秋山がほかの旅館の買収をはじめたことで、加賀美屋はいっそう追いつめられていく。そんな時、清美(中村優子)が「仲居を辞める」と言いだす。
夏美(比嘉愛未)は出て行こうとする清美(中村優子)を引きとめるが「家族のため、高い給料がほしい」と言われ、引き下がるしかなかった。さらにほかの仲居や板前たちも条件のいい職場に移るため、加賀美屋を出て行ってしまう。環(宮本信子)は「この危機を家族一丸となって乗り切る」と宣言。家族の誰もが加賀美屋を守るため、弱音をはかずに働き続けた。しかしそんな時、夏美の父・啓吾(大杉漣)が倒れたという知らせが届く。
啓吾(大杉漣)が倒れたと聞いた夏美(比嘉愛未)は急いで横浜に戻る。手術は成功したが「脳こうそくの後遺症が残る」と宣告され、夏美や房子(森昌子)たちは大きなショックを受ける。一方、加賀美屋では、夏美がいなくなって家族たちの負担が増していた。環(宮本信子)は秋山(石原良純)の仕掛けた持久戦に持ちこたえられるのか不安になる。翌朝意識を回復した啓吾は、喜ぶ夏美に「盛岡へ帰れ」と怒りだす。
夏美(比嘉愛未)は啓吾(大杉漣)の看病をしたいと願うが、啓吾は相手にしない。「加賀美屋が大変な状況のなか、必死で頑張る夏美を応援したい」という啓吾の思いをくんで、房子(森昌子)と智也(神木隆之介)も、盛岡に帰るよう、夏美を説得する。そのころ万策尽きた加賀美屋では、環(宮本信子)が秋山(石原良純)の提案を受け入れようとしていた。しかし、これですべてが終わるというその時、夏美が加賀美屋に戻ってくる。
夏美(比嘉愛未)は「一週間あれば加賀美屋を立て直してみせる」と秋山(石原良純)に言ったものの、確たる自信はなかった。しかし、彩華(白石美帆)や元板長の篠田(草見潤平)という強力な助っ人が現れ、さらにイーハトーブの裕二郎(吹越満)たちも手伝いに来て、加賀美屋は再び活気を取り戻す。一方、柾樹(内田朝陽)から「乗っ取り屋の後ろに外資の乗っ取り屋がいる」と聞いた聡(渡邉邦門)は、なぜか東京へと向かう…。
加賀美屋を手助けしようとする動きは外にも広がる。韓国の映画スターのジュンソ(リュ・シウォン)は、ホームページで「加賀美屋を応援しよう」とファンによびかける。さらに、経済評論家の斎藤愛子(とよた真帆)は、しにせ旅館を強引に買収しようとする外資ファンドの手法をテレビ番組で痛烈に批判した。そのおかげもあって宿泊予約は回復し、明るい兆しが見える。一方、脳こうそくで倒れた啓吾(大杉漣)はリハビリを開始する。
夏美(比嘉愛未)や彩華(白石美帆)たちが加賀美屋再建に向けて頑張るなか、一度は辞めた仲居たちも戻ってきて、旅館は以前のような活気を取り戻していた。環(宮本信子)は、旅館を手伝いに訪れたアキ(鈴木蘭々)に「精一杯頑張る自分たちの姿を記録に残すため、写真を撮ってほしい」と頼む。そんな旅館の様子を、こっそりとうかがう秋山(石原良純)。すると突然、秋山の部下たちが現れ、加賀美屋の営業中止を環に申し入れる。
「営業を即刻中止するか、さもなくば従業員全員を解雇する」と言われた環(宮本信子)は、営業中止を受け入れた。だが、「今日一日だけは宿泊客を迎えたい」と頼み込む。互いに譲らずにらみ合う両者の間に、秋山(石原良純)が割って入り「自分の取り分の加賀美屋株は買収に使わせない」と部下たちに宣告する。これで加賀美屋はなんとか営業中止の危機を免れた。そして、事態を打開するため、夏美(比嘉愛未)は東京に向かう。
柾樹(内田朝陽)と夏美(比嘉愛未)は、買収を仕掛ける外資グループの元社外取締役・岸本(夏八木勲)に面会するため、東京に来た。そこで2人は岸本の息子・聡(渡邉邦門)を見つけて驚く。夏美は「おもてなしの心を守るため、加賀美屋を存続させてほしい」と岸本に頼み込むが、どのような決定が下るかはわからない。一方、秋山(石原良純)は、盛岡に戻った夏美に、「おかげで人を信じる心を取り戻せた」と感謝の言葉を告げる。
加賀美屋買収の危機は去った。そこへ夏美(比嘉愛未)の弟・智也(神木隆之介)が、啓吾(大杉漣)の作った「桜のシブースト」を持って訪れる。夏美は一本桜をイメージして作ったこのケーキを、新生加賀美屋の象徴にしようと考える。環(宮本信子)は女将(おかみ)・若女将として加賀美屋の名に恥じないよう、誠心誠意務めに励むことを夏美と共に誓う。そして夏美と柾樹(内田朝陽)は、満開になった一本桜のもとを再び訪れる…。