ワールドベースボールカップの興奮も冷めやらぬ中、代表選手たちはそれぞれメジャーの開幕に向けて動き出した。メジャー球団のひとつ、インディアナ・ホーネッツでも、キャンプが終盤を迎えていた。野球への情熱を取り戻し、そのホーネッツのキャンプに合流した吾郎は、オーナーのランスから大歓迎を受け、また、日本のマスコミの取材攻勢にさらされる。だが、自分はワールドカップの敗戦投手なのだと、歓迎や慰めのことばにいらつく吾郎。そんな吾郎に、サンダースやキーンが辛口のハッパをかける。そして吾郎は、ホーネッツのエキシビション(オープン戦)に登板する。
いよいよメジャーが開幕! 吾郎は、ホーネッツの開幕第3戦の先発として初登板を果たす。試合は日本にも生中継され、茂野と桃子、寿也、清水たちが、早朝にもかかわらずテレビを見ている。ついにメジャーのマウンドに立った感慨とともに、さらに頂点を目指す決意をする吾郎。周りのナインが「お手並み拝見」と見守る中、序盤から落ち着いた態度で、快調なピッチング。試合はテンポよく進み、6回、7回と相手チームをノーヒットに抑える吾郎。本人も周囲も、「メジャー初先発でノーヒットノーラン」という史上初の記録を意識し始める……。
メジャーデビュー戦、ノーヒットのまま7回途中でみずからマウンドを降りた吾郎。その姿をテレビで見て心配していた清水は、「背筋痛のため降板」というニュースを聞いて安心する。だが大河は「あの先輩が?」と釈然としない。2回目の先発の日がやってきた。試合前、ピッチング練習での吾郎はいつもどおりの様子。だが、それを見ていたワッツは「もしかしたら吾郎は『イップス』になっているのでは?」という疑いをいだく……。
キーンの挑発の結果、相手打者・チャベスの頭にデッドボールを投げてしまった吾郎。チャベスは無事だったが、試合後、直接謝りに行った吾郎は、チャベスからメジャーのレギュラーの座へのこだわりを聞かされる。ついにステーシー監督にも「イップスの疑いがある」と言われた吾郎。そして——次の登板にも失敗し、マイナー落ちを宣告されてしまう。ほかのナインと別れ、バッツの本拠地・メンフィスへ向かうバスに乗った吾郎は、そのバスの中で、ひとりのホーネッツ・ファンに出会う……。
逃げだそうとしてつかまってしまい、オリバーの家で目覚めた吾郎。そこで見せられたDVDには、自分が試合でノックアウトされた場面ばかりが映っていた。正視できずにいると、「イップスは、まずそれを認めて向き合うことから始めない限り、治らない」とさとすオリバー。そして吾郎は、オリバーのもと、イップスを克服するための治療を始める。だが、吾郎の過去の勝負や経験を探ってみても、イップスに陥った原因がどうもはっきりしない……。しびれを切らせた吾郎に、オリバーは「実戦で効果を見よう」と、バッツで試合に登板するよう指示する。
シルヴァに打たれたものの、自分自身を落ち着かせて、後続を断った吾郎。カーター監督に「交代していい」と言われると、素直に降板する。その吾郎らしくない様子が気になるアリス。実は吾郎自身、打たれた悔しさも抑えた喜びも感じられない自分に驚いていると、シルヴァが現れ「勝負どころで燃えて向かってこない吾郎は、怖くも何ともない」と言い放つ。そんな中、アリスからメジャー再昇格が決まったと告げられた吾郎は、ひとりオリバーの元へ向かう……。
以前のような野球に対する情熱を持てないままマウンドに上がる吾郎。そんな吾郎の様子をチームメイトやメジャーの解説者となった茂野はいぶかしく思う。久し振りの親子での夕食の際、自分の今のピッチングに関して尋ねた吾郎に『プロになった以上、お前の投げるボールはお前ひとりのものではない』と告げる茂野。一方、スランプに陥り、思うようなバッティングができなくなったギブソンJrは、アドバイスを求め、意を決して父・ギブソンの元を訪ねるが…。
ギブソンのメジャー復帰会見に衝撃をうける吾郎。自分やジュニアのために無理しているのなら止めて欲しいという吾郎に、ギブソンは「お前らは何も分かっちゃいない!」と冷たく言い放つ!こうして、復帰後最初の試合で吾郎と投げ合うことになったギブソン。だが、球威も制球力もかつてのおもかげはまったくなく、ホーネッツ打線の連打を浴びてしまう。そして…吾郎は本調子とはほど遠い成績で、シーズン前半戦を終了。そんなある日、オリバーに呼び出されてた吾郎が向かった場所は…。
ふたたびメジャー復帰をめざし、ギブソンがマイナー球団と契約したと知る吾郎。なぜそこまでギブソンがメジャーに執着するのか理解できない吾郎に、オリバーは、誰も知らないギブソンの過去について話し出す。そして、オリバーを通してギブソンから受け取ったメッセージに、何かを思う吾郎。シーズン後半戦、最初のマウンドに上がった吾郎は、コントロールが定まらずボールを連発。そんな吾郎の投球を見て、キーン、ワッツ、サンダースはある事に気づく…。
長いスランプを脱出し、吾郎が完全復活したと知って喜ぶ清水。吾郎に会いにふたたびアメリカへ行こうと、これまで以上にアルバイトに精を出し始める。ところがそんな矢先、インカレ出場を目前にしたソフト部の練習日も、さらに増えててしまう。複数のアルバイトと部活のかけもちで、疲れ果ててしまう清水。どちらにも支障をきたしはじめる中、ソフト部のキャプテンから厳しく言われた清水は、悩んだ末、部活を辞めることを決心する…。
吾郎が完全復活して、ようやく勝ち星が先行しだしたホーネッツだったが、珍しく不調に陥ったダンストンがブレーキになって連勝はストップ。敗戦に怒ったオーナーの一声で、ダンストンはスタメンを外される。さらに、トレードの噂を聞いて焦ったダンストンは守備でも判断ミスをし、そのためにグリーンが大けがをしてしまう。責任を感じて見舞いに訪れたダンストンに、グリーンは、自分の分もがんばってほしいと「ホーネッツ優勝という夢」を託す。どうすればいいか迷ったダンストンが、「他人から夢を託された気持ち」を吾郎にたずねると……。
チームの快進撃がつづき、首位のコヨーテスに2ゲーム差まで迫ったホーネッツ。そんな中、ひとりの選手がトレードで加入してきた。その選手、マイク・マードックは、多くの球団を渡り歩いて数々のトラブルを起こし、「荒くれマードック」と呼ばれる問題児。チームの面々が恐れる中、キーンやワッツは吾郎はといえば、「自分も問題児扱いされてきたから」と意に介さない。チームに合流した翌日、吾郎が先発した試合で、マードックはいきなり自分勝手で危険なプレーをみせる。また、自分がデッドボールを受けると、その報復で相手選手にもデッドボールを投げろと吾郎に要求。拒否した吾郎を「腰抜け」と呼び、さらに、故意にエラーをしたかのようなプレーをする。それをみて怒った吾郎は……。
チームメイト同士の乱闘によるキーンの負傷をきっかけに、チーム内で孤立してしまったマードック。しかし、「マードックが故意にエラーしたかどうかはわからない」というワッツのことばが気になった吾郎は、直接話をしようとマードックの部屋をたずねて、妻のコニーと娘のサンディに出会う。一方、キーンのけがに怒ったオーナーからマードックをスタメンから外すよう圧力を受けたステーシー監督は、「次の試合が最後のチャンスだ」とマードックに伝える。チームがおかしくなったのは疫病神マードックのせいだと責めるホーネッツナインの中で、ワッツだけは「連敗はチーム全員の責任だ」と擁護する。その理由を尋ねた吾郎に、ワッツはマードックの過去を話し始める。
相変わらずギクシャクしているホーネッツナイン。だが吾郎だけは、マードックにリズムを崩されながらも、ひとり力投を続ける。連敗中に中継ぎ投手が酷使されていたのを知る吾郎は、自分が不調だった前半戦で助けてもらった借りをここで返さなければ、と燃えていた。その姿を見て、吾郎のことばをはじめて真剣に受け止め始めるマードック。ついにホーネッツ中継ぎ陣から1点を奪ったパンサーズは、最終回に守護神・デルモンテを投入。しかし、ホーネッツもねばってツーアウト2塁。ここでパンサーズは、またも4番パーカーを敬遠してマードックとの勝負を選ぶ。やむなく代打を告げようとしたステーシー監督。そのとき、吾郎がマードックに声をかけた!
マードックがチームになじみ始め、キーンもけがから復帰して、ふたたび連勝を続けるホーネッツ。吾郎の次の登板は、かつて所属していたサーモンズ戦。試合前、サンチェスやフォックスに声をかけた吾郎は、だが、冷たくあしらわれる。また、ネルソンも、サーモンズで1番を打つ日本人選手・坂口に何か思うところがあるらしい。腹をたてたまま登板した吾郎は、初回、坂口に粘られて出塁を許してしまう。4番・ボルトンにもフォアボールを与え、キーンに「冷静になれ」と注意される始末。ホーネッツ打線は、立ち上がり不安定な先発・サンチェスを打って先制したものの、フォックスのリードでサンチェスが立ち直ったあとは、淡泊な攻撃で追加点が取れない。一方、粘り強く攻め続けたサーモンズ打線は、7回、疲れた吾郎相手にツーアウト満塁のチャンスを迎え……。
連勝と連敗を繰り返す不安定なホーネッツ。だが、キーンはワッツが自分になげかけたことばの意味を考え始め、一方ステーシー監督は、オーナー・ランスの介入にきぜんとした態度を示す。連敗脱出をかけ、次に吾郎が先発したのはブラウンズ戦。相手投手は、ワールド・カップでも対戦したアン・チョンゴン。投手戦が予想されたが、吾郎が自信を持って投げたボールが、ことごとく「ボール」と判定されてしまう。——この試合の主審・ミッチェルは、判定が厳しい審判として知られていたのだ。判定にいらついた吾郎は初回に失点してしまい、打線のほうもちぐはぐで得点ができない。またも悪い負けパターンかと思われたそのとき、キーンが動いた……!
調子の戻ったホーネッツにご機嫌のオーナー・ランス。そのランスに呼び出された吾郎は、日本のテレビCMに出演するよう言われるが、チームの優勝争いしか頭にない吾郎は、その場で拒否。そして、通りかかった球団職員・ソフィアが、1週間以内に吾郎を説得するよう命じられる。はじめ吾郎にとりつく島もなく追い払われて怒ったソフィアだが、試合中の吾郎の姿を見て考えを改め、コンディショニングコーチの立場で吾郎のトレーニングにアドバイスをはじめる。へきえきしていた吾郎のほうも、ソフィアの指導で自分の調子が良くなっていることを自覚する。しかし、CM出演は頑として承諾しないまま1週間がたち……。
再び首位・コヨーテスに2ゲーム差まで詰め寄った好調・ホーネッツ。中でも特にロイが燃えているわけは、3Aのメンフィス・バッツが2年連続で地区優勝したことにあった。バッツでは、ロイと同期で入団したケロッグが、チームを引っ張る大活躍をしていたのだ。そして今年もロースター枠拡大の日となり、バッツでは、ケサダ、バトラー、そしてケロッグがメジャー昇格を言い渡される。ほどなくホーネッツに、メジャー昇格組が合流してきた。吾郎やダンストン、サンダースが歓迎する中、ロイがケロッグがいない理由を尋ねると……。
サザンリーグ中地区の首位攻防戦、レイダース対バイソンズで、期せずして初の親子対決をすることになったギブソンとギブソン・ジュニア。今の自分なら父の球を打てると自信たっぷりのジュニアだったが……。それを見て、ワールドシリーズのことを初めて意識する吾郎。だが、ノーザンリーグ中地区の天王山となる対コヨーテス3連戦を前にして、ホーネッツはワッツの救援失敗で負けてしまう。試合後、マードックがワッツの腰の故障を暴露すると、それを認めたワッツは、クローザーを降りると告げた。コヨーテスとの直接対決、その初戦に先発した吾郎は、ワッツの穴は自分が埋める、といつにも増して闘志にあふれ、コヨーテスの主砲・シルヴァも気迫で打ち取る。そして吾郎は、1点のリードをもらって最終回のマウンドに上がる……。
優勝がかかった残り試合でのクローザーを命じられた吾郎は、オリバーに頼んで、外部のスポーツ専門医を紹介してもらう。こうして吾郎が訪ねた医師・エミリーは、ホーネッツの大ファンだった。——だが、診断の結果は、血行障害。手術をすれば治るが、今シーズンはもう投げられないと言われた吾郎は、黙って病院を後にする。ホーネッツとコヨーテスの直接対決最終戦は、雨で中止となり、シーズン最終戦に日程が変更される。その後、両チームとも3連勝して、残りはともに4試合。ホーネッツの次の相手・タイタンズは強打のチーム。この大事なときに休んでいられるかと、チームには症状を隠したまま吾郎が練習をしていると、球場にエミリーが現れる……。
ホーネッツ対コヨーテス、ノーザンリーグ中地区の地区優勝をかけたシーズン最終戦が始まった。5回を終わって両チーム無得点、緊迫した試合は、だが6回、コヨーテスの主砲・シルヴァのソロホームランをきっかけに、一気に動き出す。打者一巡の猛攻で、一挙に8点を取ったコヨーテス。吾郎にも一瞬、あきらめの気持ちが芽生える。キーンをはじめホーネッツナインも皆、緊張の糸が切れたプレーを見せ始める。ホーネッツの中継ぎ投手・クラークは、大差のついた試合でコヨーテスのランナーが盗塁をしたのはタブーだと怒り、死球を投げてしまう。それを見たワッツは、突然ブルペンを出てマウンドに向かう……。
ホーネッツとコヨーテスの優勝決定戦、もう1点もやれない場面で登板した吾郎。だが、投げ込み不足で球は走らず、ノーアウト満塁のピンチでシルヴァと対決することに。この勝負はかろうじて乗り切った吾郎だが、キーンが血行障害に気づいてしまった。「お前の行為は身勝手な自己満足に過ぎない」と降板を迫るキーン。吾郎の本心を聞いたキーンは、続投を黙認する代わりに、1人でもランナーを出したら交代しろと条件を付ける。2点差のまま9回裏になり、パンサーズのマウンドには、リーグセーブ王で不動のクローザー、スプリンガーが上がる。この厳しい状況下で、ホーネッツの最後の攻撃は……!?
ホーネッツとコヨーテスの優勝決定戦は、ついに延長に入った。吾郎とコヨーテスのクローザー、スプリンガーは、どちらも譲らぬ熱投を続け、延長11回表が終わった時点で、吾郎は9人の打者から連続三振を取っていた。メジャーの連続奪三振記録は「10」、あと1人でタイ記録となる。吾郎の体を心配して球場にかけつけたエミリーや、日本で応援している皆が見守る中、吾郎は左腕に爆弾をかかえたまま、12回表、記録をかけたマウンドに上がる……。果たして吾郎は勝利をつかみ、ホーネッツに悲願の優勝をもたらすことができるか!?
手術が成功し、退院の日を迎えた吾郎。吾郎とワッツを欠いたもののディビジョンシリーズを勝ち上がったホーネッツは、次のシリーズを勝ち抜けばノーザンリーグ優勝を決め、ワールドシリーズに駒を進められる。そんなチームメイトの活躍を見て、一日も早く復帰したいと焦る吾郎の前に突然、ソフィアが現れ、吾郎の生活とリハビリを全面管理すると宣言する。そのころ、サザンリーグのリーグ優勝を争っていたのは、ギブソンの所属するバイソンズとギブソン・ジュニアのレイダースだった。初対戦以来、父・ギブソンからまったくヒットが打てないジュニアは、かつて吾郎相手にしたように、左打席に立って左投げのギブソンに勝負を挑む……。