人型ロボット兵器ファフナーのパイロットとなった真壁一騎や親友の皆城総士ら少年少女が、フェストゥムと呼ばれる謎の敵との激闘を繰り広げるさまを描く「蒼穹のファフナー」シリーズ。本作では、「蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH」で描かれた戦いによって平和を取り戻した竜宮島を舞台に、再会を果たした一騎や総士をはじめとした竜宮島の人々が過ごす、何気なくも忘れ難い平穏な日々を描く。
人類とフェストゥムとの戦いは、さらに複雑さを増しながら続いていた。 「第五次蒼穹作戦」の名の元、奪われた同胞を取り戻すため 人型兵器ファフナーに乗り込んだ真壁一騎ら竜宮島部隊はフェストゥムとの激しい戦闘を繰り広げる。 「誰かが生きるために誰かが犠牲になる。そんな世界を捨てて生きよう。」 「お前を、居るべき場所へ還す」 奪われたのは竜宮島の人々にとって、かけがえのない存在。 だがそれは、拮抗するものたちにとっても同じこと。そして、人類にとっても……。 終わりの見えない戦いが続く世界。 そして、ここに今、また新たな物語が始まる――
夢の中で、乙姫そっくりなふたりの子供たちに出会った総士。 彼らは「ミールの申し子があなたを探す」と総士に告げる。 その傍らには、ひとりの男性が立っていた。 夢から覚めるとそこはいつもの平和な島。そしてどこまでも続く青い海だった。 優しい両親、生意気だけどかわいい妹、気の置けない親友。 満ち足りた日常だが、総士の好奇心は島の外に向かっていた。 「世界が本当はどうなっているのか、誰か教えてください」 古い無線機に呼びかける総士。すると、それにこたえる者があった。真実を知りたいか、と。
島の外から来た男に大切な妹を殺され、住んでいた島を破壊された総士は、彼の話に耳を貸そうとしない。 一騎は彼を眠らせ、美羽たちにあとを託す。 やがて目を覚ました総士は、島の人々――特に一騎に反発し、反抗的な態度をとる。 史彦らは、この世界こそが現実なのだと総士を説得しようとするが……。 3年もの歳月をかけてようやく取り戻した、竜宮島へと続く道標。 だが、彼の心は未だ偽りの島に取り残されたままで……。
ルヴィ・カーマの導きで、マークニヒトに乗った総士。 だが、過去と共鳴したはずの彼は、ニヒトに眠る憎悪の思念と、激情の変性意識に飲み込まれ暴走する。 「こんな島、全部壊してやる!」 駄々をこねる子供のようにむき出しの敵意をやみくもにぶつける総士を、零央たちは軽くいなす。 その様を美羽は悲しく見つめ、ひとり立ち尽くしていた……。 予想もしていなかった総士の変化に、不満を募らせる島民たち。 総士を正しく導き、島民の理解を得るため、史彦とルヴィは対話の道を選ぶ――
南アメリカ・独立人類軍バミューダ基地。 赤く輝く月の下、攻撃を受け破壊し尽くされた軍港に、ベノン軍母艦オリンポスが停泊していた。 艦内部の玉座にいるのは、軍服をまとった金髪碧眼の青年。 その傍らにはマリス・エクセルシアと、新たな身体を作り上げたマレスペロの姿もあった。 青年は、艦隊を動かし海神島に総攻撃をかけると宣言するが、マリスは島を滅ぼす前に今一度、総士を説得したいと願い出る……。 未だ自分が何者なのかわからずにいる総士。 彼と接触を図ろうとするマリスの真の狙いとは……。
マレスペロの絶対停止領域に捉えられた海神島。 アルヴィスは脱出の方法を検討するがシミュレーションの結果は芳しくなく、純粋ミールである〈アルタイル〉のみが大気圏外の敵に対抗しうるただひとつの希望であるとの結論に達する。 総士は竜宮島の位置を探るため、再びマークニヒトに乗る機会を与えられるが……。 パイロット達の教え、千鶴が成し遂げた偉業、美羽の覚悟、竜宮島と島民が築いてきた平和と苦悩の歴史。 それらを学び、吸収し、感じ取ったとき、総士の中で新たな気付きが芽生える――
激しい戦闘により、多くの犠牲者を出した島には、重苦しい空気が満ちていた。 流れ着いた沢山の遺品が回収され、葬儀場には幾人もの遺影が並べられた。 それらは皆、誰かの家族であり、恋人であり、友だった。 悲しみをこらえ、現実を受け入れる苦しみに向き合おうとする島民たち。 遠見家では、耐えがたい喪失感を抱えて自室で塞ぎ込む真矢と美羽を元気づけようと、総士がひとりキッチンに立っていた……。 外の世界から来た少年の真っ直ぐな想いが、凍り付いた人々の心を溶かしていく。 傷付いた島が導き出す次の選択とは――
第二次L計画が実行に移された。 かつてのL計画は、Lボートを囮とし、島がフェストゥムに発見されるまでの時間を稼ぐ陽動作戦だったが、第二次L計画は島そのものを囮に少数の要員がLボートで竜宮島をめざす、いわば希望の作戦であった。 だが、ベノン軍は島を迂回し、迷うことなくLボートに照準を合わせ追跡してきた。 「なぜだ……なぜ何もかも読まれる」 部隊はただちに作戦行動を中止し帰島を試みるが、すでにボートは無数の敵に囲まれ、身動きできない状態となっていた……。 竜宮島への道筋が見えたその瞬間、絶たれる希望。 分断され、危機的状況に陥る派遣部隊。 その混乱の中、それは突然、訪れた……。
マレスペロが海神島の追跡に使っていた手口は、人間の感情と盲点を利用した巧妙なものだった。 美羽と総士の指摘で真相を知ったアルヴィスは、その仕組みを逆手に取り、マレスペロらの目を欺きながら竜宮島をめざす第六次蒼穹作戦を立案する。 一方、マークニヒトのザルヴァートル化という想定外の出来事によって一時撤退を余儀なくされたマリスたちは、彼らの信じる平和な世界を実現するため、今度こそ島を消滅させようと決意を新たにしていた……。 ついに訪れた決着の時。 島民の願いはただひとつ。故郷〈竜宮島〉へ帰ること。 それは可能性の地平線に続く、最後の希望――
マークレゾンの苛烈な攻撃にさらされた島のファフナーは、反撃の糸口すらつかめず、戦局は膠着する。 一騎はレゾンの撃砕よりも美羽の護衛を優先し海中へと潜るが、そこにはアレスの力を写し取ることに執念を燃やすレガートがいた。 同じころ、海底では美羽と総士が島のシールド圏内に到達し、アルタイルまであと一歩のところまで迫っていた。だが、その行く手をマリスが阻み……。 大切な人、大切な場所を守りたい。 同じ思いを抱きながらも、立場の違いから対立し、争い続ける人々。 永遠に終わらない悲劇の連鎖を断ち切るため、美羽と総士が選択した未来とは――
美羽が選んだ祝福が、世界に降りそそぐ。 フェストゥムたちは群となって天へと昇り、赤い月を覆い尽くす。 奇跡を目の当たりにした人々は皆一様に動きを止め、感嘆の言葉を漏らす。 「こんな未来が…あったなんて…」 あの日、2人の少年が導こうとした未来。 彼らの願いは次の世代に引き継がれ、そして、誰も想像すらできなかった世界へと繋がっていく……。 対話と争い、共存と排他、長きに渡る人類とミールの歴史は、今、転換期を迎える――