江戸時代――。町道場の娘、凜は殺された父母の仇を討つため旅に出た。旅の用心棒として選んだのは、百人斬りの異名を持つ不死身の男、万次。狙うは憎き男、逸刀流統主・天津影久。無限の時を生きる男と復讐に生きることを決めた少女の旅が、ここに幕開く。
凜は父の友人であった絵師・宗理の元へ復讐の旅に出ることを告げる。宗理は力になれない代わりにと、資金を提供した。懐は潤ったものの手がかりがない凜は、寄った研ぎ屋で盗られたはずの父の剣を見つける。しかしその持ち主は逸刀流の剣士「凶戴斗」で――。
凜を待つ万次の元へ、一人の夜鷹がやってくる。誘いに乗った万次は夜鷹の罠を見破るが、逸刀流の剣士を名乗る女「乙橘槇絵」は逸刀流とは思えない弱さだった。だが生かして逃した槇絵はその目と髪を変えて、再び万次の前に現れるのだった――。
自分も強くなりたいと万次に稽古をつけてもらう凜だったが、その実力は逸刀流どころか万次にすら遠く及ばなかった。落ち込む凜は音に誘われ、一人稽古している男を見つける。いつかは自分もあんな風に――そう思う凜は、男の顔を見て驚愕する。それは仇である逸刀流の統主、天津影久だった――。
影久と邂逅し、自身の足元を揺らがされた凜。思い詰めた様子の凜とそれを見守る万次の前に、虚無僧が現れる。虚無僧は逸刀流「閑馬永空」を名乗り、万次と斬り結ぶがあっさりと殺されてしまう。しかし確かに死んだはずの閑馬は再び立ち上がり、その傷が再生していく。――閑馬は万次と同じく、「不死」の身体を持つ者だった。
祭りを見に来ていた凜は、生意気な少年練造と出会う。万次は面屋、新夜と剣呑な雰囲気になるが、新夜の息子である練造が来たことで互いの殺気が解ける。去っていく新夜と練造。それを万次の背後で見ていた凜は、なぜか新夜の姿を驚愕と憎しみの目で睨み続けるのだった。
逸刀流に幕府お抱えの講剣所、その指南役に指名したいという話が来る。逸刀流の剣を世に知らしめる。その悲願が叶おうとするが、凶戴斗は天津影久の元を去ることを決める。そして同時期、各地で逸刀流の幹部が狙われ始め――。その刃の切っ先は、凶にも向かっていた。
天津影久を暗殺するため、影久の情報を持つ無骸流を名乗る四人と手を組むことになった万次と凜。江戸を抜ける街道で待ち伏せし、凜にしか分からない情報によって他を出し抜き影久に迫る尸良と凜だったが――。
偽一に影久の居場所を知らされた凜だったが、辻斬りの疑いで万次と共に手配されてしまっていた。罪人が関所を抜けることは出来ない。しかし凜は知り合った飯盛女からその手段を知り、関所抜けを斡旋しているという村に一人出向くのだった。
凜を追いたいが通行手形のない万次。そんな万次の前に現れた宗理と凶。宗理は万次に、言ってくれれば手形などいくらでも手に入れてやると言う。しかしそれには条件があって――。一方、再び影久暗殺の計画を練る百琳と真理路のところへ、片腕を失い白髪となった尸良が現れる。
互いの目的のため旅の連れ合いとなった万次と凶は、禿頭の男たちに襲撃される。痛みに呻く万次は、さらに背後に迫っていた尸良によって腕を落とされる。尸良は己の肉体を改造し、万次との再戦を望んでいた。しかしその眼前に、尸良に大事な女を殺された凶が立ちふさがる。
影久を追って加賀へ向かっていた凜は、行き倒れていたところをその影久に助けられる。そして心形唐流に追われる影久と行動を共にすることになった凜はその道中、仇として、一人の人間としての影久と向き合っていく。
公儀によって仲間を虐殺された逸刀流。影久は秘密裏に残った逸刀流を集め、公儀への復讐を誓う。万次は偽一から無骸流に勧誘されるが断り、殺し合いへ。偽一の武器が壊れたことで休戦となったが、万次は無骸流の頭領・吐に会いに行くことを決める。
吐の策略で地下牢に閉じ込められた万次。吐は医師・綾目歩蘭人を使い、不死の謎を解明しようとしていた。医術の発展の為――歩蘭人は万次の身体にメスを入れていく。その頃、万次の帰りを待つ凜は、宿を探していた瞳阿と夷作に巻き込まれ奇妙な共同生活を送ることに――。
歩蘭人は万次の左腕を実験体の出羽介に移植させることに成功する。それを皮切りに実験は次々に成功。しかし吐が結果を急がせ、追いつめられる歩蘭人。そしてまだ不死化の不十分な出羽介に、吐の刃が迫る。万次を探す凜は、道中で瞳阿と夷作に合流する。そこへ以前、瞳阿が叩きのめした役人がやってきて――。
出羽介の件以降、歩蘭人は失敗続きだった。ついには吐により座敷牢拘束となり、気を触れさせる。だがその狂いの果て、歩蘭人は不死実験において大事なことを得る。人はつまり――カワウソである、と。一方、凜と瞳阿は囚われた万次と夷作を救出するため、江戸城へ侵入することを決意するのだった。
ついに再会した万次と凜。しかし地下牢には吐を始めとした強敵がいて、凜と万次の脱出を阻む。そこへ助っ人として現れたのは、瞳阿と死んだはずの夷作だった。崩壊を始める地下牢。脱出間近、意外な人物が凜と万次の前に現れる。そして、狂った実験の果てに歩蘭人がたどり着いた答えとは――。
吐は江戸城での失態により、新番頭を解任させられた。それでも逸刀流を壊滅させるため、六鬼団を率いて討伐に向かう。しかし新しく番頭を継いだ男・英によって、逸刀流は江戸を追放することでお咎めなしと決められてしまう。さらには取り決めを反故にしないようにと、吐は妻子を人質に取られてしまうのだった。
吐率いる六鬼団に追われている逸刀流。その話を聞き、逸刀流を追うことに決めた凜と万次。誰も彼もが江戸を出る逸刀流を追うが、その中に天津影久を始めとした幹部四人の姿がない。そして夜更け、影久たち四人が立っていたのは江戸城・大手門の前だった。
影久を追いかける凜と万次だったが、尸良に襲撃され凜が浚われてしまう。救出へ向かう万次は、そこで尸良だけではなく練造と再会する。凜を助けるため尸良と戦う万次。しかし不可思議なことに万次を斬りつけたのは、失われたはずの尸良の左腕だった。
尸良との死闘で寝込んでいる万次。そこへ練造が刀を持って万次を殺そうとするが、凜たちによって説得される。 その頃、江戸城襲撃を知り憤る吐。だが統主不在とはいえ逸刀流を追うことを止めない。そんな中、逸刀流の一人が山の集落へ入っていく。吐の娘・燎は、父の役に立つため討伐へ向かうのだった。
六鬼団の荒篠、八宗、叢咲は先鋒として逸刀流と激突する。が、肝心の阿葉山は門下生たちによって逃がされてしまう。 一方、無理やり逃された阿葉山は、吐の力となるため追ってきた偽一、百琳と対峙する。
導かれるように那珂湊へ集結した逸刀流、六鬼団、そして万次と凜。様々な思惑をその剣に乗せ、最後の殺し合いを始める刹那の住人たち。欺き、ねじ伏せ、乱れ舞う。最強と最強が火花を散らす最終決戦。最後に笑うのは――。
集まった人間たちが次々に命を散らしていく。残った者たちも、もはや満身創痍。それでも剣を取り、己が信念をぶつけ合う。 最後に立つ者は──。そして復讐の行方は──。 無限を生きる男と、限りある命を燃やし生きた人々の物語は、ここに幕を閉じる。