Episode 1 Garireo X
ユーラシア大陸のほぼ真ん中に位置する国“ウズベキスタン”、そして極東の“日本”、二つの国には、共通するものがある。それは「仏教」。 実は、インドで発祥した仏教が日本に伝わるまでに、ウズベキスタンの地は仏教が広がる過程で大きな役割を担っていたのだ。 ところが7世紀頃、中央アジアでイスラム教が広がっていくにつれ、仏教は衰退し、寺院や仏塔は破壊、または放置され、その痕跡を砂塵の中へと潜めていった。 しかしいま、その砂塵の下に眠る“仏教遺跡”を発掘するべく、ウズベキスタンで奮闘している日本の研究者達がいた。 果たして、砂の下には何が眠っているのか?ウズベキスタンで行われている仏教遺跡の発掘現場に密着取材した。
約46億年という歴史を持つ地球史は、「地質年代」という区分によってまとめられている。その地質年代の中でこれまで名前がつけられていなかった約77万4千年前~l2万9千年前の時期が「チバニアン(千葉時代)」と命名されることが決まった。千葉にある地層が、その時代の特徴が最もよく現れている「国際標準模式地」として正式に認定されたもので、地球史に初めて日本由来の地名が刻まれる快挙である。そんなチバニアンの時代の地層には、地磁気の南北が入れ替わる「地磁気逆転」と呼ばれる現象の記録が刻まれている。地磁気逆転は過去の地球で何度も起きているが、チバニアンの時代を最後に現在まで起きていない。つまりこの地層を調べることで最も近い時代に起きた地磁気逆転の謎に迫れるかもしれないという。地磁気逆転が起こると、地球環境や私たちの文明社会はどのような影響を受けるのか?チバニアンに刻まれた過去の記録を探る。
咀嚼音や耳元で囁く声など、ゾクゾクしながらも心地良い感覚を得る「ASMR (自律感覚絶頂反応) 」が今、世界的に流行している。私達はASMRに限らず、水の音を聞いて安堵したり、黒板を引っ掻く音で不快になったり、聴いた音によって感情が変わる。これは一体なぜなのだろうか?ASMRを解き明かす研究や、ハイパーソニックエフェクトの研究、更には音に対する細胞応答を調べる研究など、音に纏わる研究を探ることで、音の正体に迫る。
タコ焼きにイカそうめん、ダイオウイカの映像に、葛飾北斎の春画「蛸と海女」など、私たちはタコとイカに強い関心をもってきた。タコとイカは無脊椎動物でありながら、巨大な脳と高度な神経系による情報処理能力が異様に高く、実は宇宙からきた生物なのではないか?とまで囁かれている。長年にわたる飼育観察や、ゲノムの解読結果からも、タコとイカにはわれわれ霊長類とはまったく異なる「知性」と呼ぶべきものが備わっていることがわかってきた。一方、タコの腕の、柔軟でありながら効率的な動きに注目し、複雑で特殊な計算を高速でできてしまうシリコン製のタコ腕コンピュータが研究されている。多様な生物の体の構造に元々実装されている物理系の動きを、計算機構として利用しようとするものだ。 タコとイカの、奇想天外な知性と体の謎と、その応用可能性に迫る。
セラミックスは、古くから陶磁器として親しまれ、現代では最先端のエレクトロニクスの分野で欠かすことのできない素材となっている。そんなセラミックスの最新研究で注目を集めるのが、セラミックスを用いた充電式電池の開発だ。小型でありながら大容量で高耐熱性を実現した画期的な電池だという。今、世の中をより便利にする仕組みとして、社会のあらゆる「モノ」がインターネットでつながるIoTと呼ばれる技術が急速に進展しているが、そんなIoTが社会に普及するために課題となるのが電源の問題だ。現在、IoTに適した電源供給技術として、「ワイヤレス給電」と、「エネルギーハーベスティング」という二つの技術の開発研究が進められており、それらの技術にこの充電式電池が応用できるのではと期待されている。 セラミックスの特性を活かした充電式電池開発にスポットを当て、今後の実現が期待されるIoT社会への応用の可能性を探っていく。
「折れず、曲がらず、よく斬れる」と形容される日本独自の刀、「日本刀」には謎が多い。特に江戸時代より前の「古刀」の製法は口伝であったため、歴史の荒波の中で消失してしまったと思われる。日本刀のこれまでの研究方法は、他の多くの文化財と同様、破断して顕微鏡で断面を調べるといったものであったが、刀身の部位ごとに異なる細部の結晶組織構造まではわからなかった。そこに登場したのが中性子や、ミュオンといった量子ビームを刀に当てて内部を調べる方法だ。非破壊で、日本刀の鉄の結晶子や含まれる炭素濃度を細かく調べることが可能となり、たとえば日本刀の「古刀」の美しさの謎や、「五箇伝」という地域独自の製造方法の違いについて、新しい知見が得られると期待されている。また、時代の変遷による日本刀の系統の解明が進めば、失われた技法、ロストテクノロジーも復興できるかもしれない。加速器を使った量子ビームが光をあてる、日本刀研究の最先端を紹介する。
これまで携帯電話で利用してきた4Gと比べ、通信速度が約20~100倍も速くなる第5世代移動通信規格“5G”。2020年の導入を皮切りに、都心と地方を結ぶ遠隔医療や、リモート工事、スマート農業など、5Gの活用は飛躍的な広がりを見せている。 その活用の広がりと比例して世界中から求められているものがある。 5Gというこれまでにない高速通信を処理できる“高い機能”をもち、更に端末内に収まる“超小型”の部品が必要とされているのだ。今、そういった問題を解決するべく日本で開発されている極小の部品達がある。縁の下の力持ちとも言える、世界の 5G を支える日本の小さな部品に迫る。