片田舎の貴族の下に生まれたマリーとその弟のシオン。マリーはシオンを溺愛し、ひとりごっこ遊びに興じる姿やふいに見せる大人びた表情といった、マリーしか知らないシオンの姿もたくさんあるほどいつもシオンのことを気にかけていた。そんなシオンは3歳のある夜、家族との会話の中で大きな失望感を味わってしまう。その日を最後に彼の口から「まほう」という単語が出ることはなく、3年の月日が経過していた。ある日、とある現象を目にしたマリーに手を引かれ、シオンは森を抜けた先にある湖に向かうのだった。
魔法に憧れ続けた人生に幕を閉じ、第二の人生を生きるシオン。そんな彼にとってマリーたちと湖で目にした発光現象は、彼の日々に大きな彩りをあたえるものだった。この現象、また強い感情からくる発光現象を「帯魔状態」 と名付け夢中で向き合うなか、シオンはいくつかの発見をしていく。次のステップに向かうため「集魔状態」の練習をしたいシオンを待ち受けるは、マリーとローズとの合同剣術鍛錬。そこでシオンはマリーのある姿を目にしてーー。
シオンの前世での知識とは異なり、この世界では多くの人々を畏怖させる存在・ゴブリンが村の近くに出現。父のガウェインはゴブリン討伐に出立する一方、村に残ることとなった女性やシオンをはじめとした子どもたちは万が一を防ぐべく、屋敷で身を寄せ合っていた。そんななか、突如として扉を強く叩きつける音、窓の割れる音が静寂を切り裂く。屋敷に侵入したゴブリンは、シオンたちが身をひそめる部屋へ歩を進めていく。
ゴブリンとの一戦をきっかけに、父ガウェインからも認められた魔法の研究。そんな彼の協力もあり、シオンは新たな魔法「フレア」の発見に心を弾ませる。そんなシオンとは対照的に、マリーからはいつもの弟思いで優しい表情が消えていた。まるでなにか嫌な記憶を断ち切ろうとするかの如く、一心不乱に剣をふるうマリーの手には剣を持つのがやっとなほどのマメができていた。マリーの心にはゴブリン、そしてシオンの姿があってーー。
お互いに抱えていた思いを打ち明けたことでわだかまりがなくなったシオンとマリーだったが、マリーはシオンの溺愛っぷりに拍車がかかった様子。一層べったりしてくるマリーに困惑していたシオンのもとに、父の友人であるグラストがやってくる。シオンの知識を利用し雷鉱石を採取・販売を試みたはいいもののグラストの倉庫は在庫の石でびっしりの状態。シオンはそんな彼から雷鉱石をどうにか売る方法を考えてほしいと頼まれてしまう。