夜の街を駆け抜ける蔵原走。走を自転車で追う一人の男。男の名は清瀬灰二。追いつくなり灰二が走に問いかける。「なあ、走るの好きか!」走は灰二に導かれ、竹青荘という学生寮へ辿り着く。奇妙な住人たちとの邂逅。有無を言わせぬ灰二の言動。突然の展開に戸惑うばかりの走。灰二の魂胆を知るものはそこにはいない。同じ夜、住人総出で走の歓迎会が開かれる。そこで灰二の口から、壮大で無謀な、ある目論みが告げられる。それを聞いた走の反応は…。
灰二の無謀な提案に、反発の色を隠せない走。 住人たちも陸上は全くの素人。誰も灰二の言葉を真に受けようとはしない。 そんな彼らの元に、灰二の影が迫る。住人と灰二の攻防が始まる。
熱湯対決を引き分けた走は、灰二に反発しながらも早朝ジョギングに参加する。 そこには、住人たちを諦めさせるという狙いがあった。 翌朝、数名の住人がジョギングをボイコットする。 冷ややかな態度の走に向かって、制服姿の少女が駆けてくる。
そう言って不敵に笑う榊浩介。思いがけない再会に動揺を隠せない走。 走の胸の内には、高校時代に味わった、才能が故の深い孤独が渦巻いていた。 影を振り切るように駆けていく走。その目の間に、“もう一人の走”が現れる。
東体大の榊に挑発されたことで、結果的に距離を縮めた走と竹青荘の住人たち。 皆が決意も新たに盛り上がる中、キングが慣れないスーツ姿で帰って来る。 一方、走は、早くも記録会への出場を目論む灰二に異を唱える。 素人同然の住人たちに過酷な現実を突きつけてどうするのか。 そう訴える走に、灰二が問い返す。 走の疑問は晴れぬまま、灰二が本格的な練習を始めようとする。 しかし、キングが就活を理由に参加を拒否して…。 不安を抱えまま、本格的な練習が始まる。
エスカレートする灰二の要求に強く反発するキング。 就活でも思うような成果は出ず、気遣ってくれる神童にも返って心を閉ざしてしまう。 ついには単独行動を取り始めるキング。他の住人たちも、 強引なバイト禁止令には戸惑いを隠せずにいた。 一方、走も、灰二への疑念を晴らすため、ニコチャンの元を訪れるが、 確たる答えを見つけることはできない。 そんな中、神童があるアイデアを思いつき、住人たちに提案するのだが…。
初めての記録会。東体大を訪れた竹青荘の住人たちの前に、 走の因縁の相手、榊浩介が現れる。執拗に走を挑発する榊。 二人を止めようとする灰二。そこに、王者六道大学の絶対的エース、藤岡一真が割って入る。 誰もがその風格に気圧される中、なぜか灰二だけが平然と藤岡と言葉を交わす。 一方、現実を知らない住人たちのマイペースな言動に苛立ちを募らせる走。 スタート直前、灰二に苦言を呈した走は、藤岡の背中を鋭く見据えて…。
記録会で惨敗を喫した竹青荘の住人たち。 愚痴をこぼし、自らの力不足を慰める仲間の姿に、走が感情を爆発させる。 そんな走をなだめるうちに、ニコチャンが、心の底に燻らせている陸上への想いを吐露する。 走は、とことんまで追い込むべきだと進言する。 翌朝、走とニコチャンは、灰二の指導を離れ、独断でトレーニングを行う。 一方、王子は、練習で奪われてしまった漫画鑑賞の時間を取り戻すため、 とある器具の調達を目論んでいて…。
王子に、次回の記録会の成績次第ではメンバーから抜けるよう提案する走。 あの発言に効力はないと言う灰二に対し、王子は、僕でも記録は出せるのか?と直言する。 さらに灰二にはもう一つの気がかりが。それは、用意した食事が一人分余っていること。 灰二は、弁当を携え、食事を抜いた犯人の前に現れる。 焦る走とは裏腹に、練習の成果が見え始めてムードを良くする竹青荘の住人たち。 そんな彼らに、灰二が意外な指示を与えて…。
突然の灰二の昏倒。 住人たちは灰二に支えられてきたことを痛感し、ニコチャンは、走と王子に和解を持ちかける。 しかし、意固地な二人は溝を埋めることができない。 翌日、神童が代理キャプテンの選出を提案する。 年長たちがことごとく断った結果、走が代理を引き受けることになる。 王子をどうにかしたい一心で、口うるさくついて回る走。その態度に反発を強める王子。 そして、食事の用意もままならない住人たちに、救いの手を差し伸べる者が…。
双子とムサが公認記録を獲得し、希望を掴んだかに見えた竹青荘の住人たち。 しかしそこには、一ヶ月近く記録を出せず、焦り始めた神童とユキの姿もあった。 灰二が二人を諭そうと語りかけるが、言葉だけでは彼らを救えそうにない。 住人たちの行く手を阻むように、重たい雨が降り続く。 それでも練習と学業の手を抜かない神童に、住人たちも心配を募らせ始める。 一方、走と灰二は、陸上の専門誌に、王者・藤岡一真の姿を見つけて…。
寛政大学の公認記録獲得を目指す戦いが本格的に始まる。 すでに記録を持っているムサ、ジョータ、ジョージが葉菜子とともにレースを見守る中、 走が先頭集団に混ざり、強豪留学生たちと渡り合う。 一方、伸び悩んでいた神童とユキも、それぞれの特性を活かし、 したたかに目標タイムを狙う。 ラスト一周、走の脳裏をよぎる灰二の言葉。「走るの好きか!」。 その瞬間なにかが開き、走は驚異的なタイムを叩き出す。 レース後、そんな走に一人の記者が歩み寄り…。
夏合宿で訪れた白樺湖で、東体大と鉢合わせてしまった寛政大陸上部。 走の過去の行為を告発するように、執拗に挑発を繰り返す榊。 限界に達した走が掴みかかるも、仲間たちが間に入り事なきを得る。 その後の練習は過酷を極めるが、走の心は高校時代の重い記憶に囚われたままだった。 それは、選ばれた者たちをさらに追い詰める、残酷すぎる過去だった。 破滅を選んだ自分を思い出し、苦悩する走。 やがて夜。空には満天の星。一人佇む走のそばに灰二が現れて…。
走の過去を受け入れ、再び走り始めた寛政大陸上部。 合宿では地獄の猛特訓が続き、都内に戻ってからは、後援会募集、資金調達、就職活動などに奔走する。いつしか素人の面影は薄れ、誰もが競技者の逞しさを漲らせていく。 十人が、たった一度の儚い夏を駆け抜けていく。 その眩い姿を見守る葉菜子にも、未来へと続く確かな道が見えてくる。 たった一人の夢が、一人、また一人と繋がっていく。 ニコチャンが、キングが公認記録に迫る。残すは一人。それは…。
無事にメンバー全員が公認記録を獲得。 予選会の出場資格を得て、灰二が監督の田崎に現状を報告する。 予選を突破するにはまだまだ厳しい状況が続くが、周囲の期待は高まる一方だった。 テレビの取材も舞い込み、浮き足立つメンバー。 しかし、ユキだけがどこか浮かない顔をしている。 そしてムサの視線の先には双子と葉菜子の仲睦まじい姿が。 風雲急を告げる秋。いよいよ予選会の号砲が鳴る!
目の前で他校の選手が転倒する。 辛うじて衝突を回避した灰二だったが、右足に全体重をかけてしまう。 騒然とする給水所前。不穏な情報に心が波立つ葉菜子。 冷たい雨が、選手と見守る大観衆に容赦なく降り注ぐ。 集団がばらけ、レースが街路へ移る頃、各校の選手たちが勝負を仕掛ける。 状況を察知した灰二が仲間たちに合図を送る。 それぞれの生き残りを賭けた孤独な戦い。 そんな中、第1集団に大きな動きが。 寛政大1年、蔵原走。 その衝撃の追走が始まる!
奇跡の予選突破を成し遂げた寛政大学陸上部。 入部希望者が押しかけ、取材依頼も殺到する。 それでも灰二は冷静に、本番へ集中しようとする。 だが、灰二がコースの下見を提案した時、ジョータとジョージが突然反抗を見せる。 「俺たち騙されてたんでしょ、ハイジさんに」。 力の差は明らか。優勝なんて到底無理。 なのに頂点を目指すなんて、俺たちそそのかされたんだ。 そう詰め寄る双子。どうにか答えを探そうとする仲間たち。 灰二が二人に返した言葉とは…。
ムサと二人の帰り道、走は思いがけず、王者六道大の藤岡一真と遭遇する。 周囲の心ない囁きを引きずる走に、藤岡は整然と、淀みなく答えを示してみせる。 そして藤岡は、灰二との過去について語り始める。 灰二が一人で背負ってきたものとは。藤岡に伝えた、精一杯の返事とは。 走は藤岡の言葉から、灰二がかつて自分に話してくれた、「強さ」の意味を感じ取る。 一方その頃灰二は、一人、医師の診察を受けていた。 見据える灰二の瞳に、過酷な現実が映り込む…。
ついに東京箱根間往復大学駅伝競争の幕が上がる。 灰二の賭けが当たり、1区は皆が探り合うスローペースの展開となる。 そんな中、スタートの重責を担った王子は、他の選手の背後に位置を取り、体力の温存を目論む。 それもまた、灰二が授けた頂点を取るための作戦だった。 さらに灰二は、監督車の田崎に王子への伝言を託し、ムサの待つ鶴見中継所を目指す。 ペースを上げる集団。必死に喰らいつく王子。 その脳裏に去来するのは、いつかの灰二との会話だった…。
沿道に声援を送る葉菜子の姿。頭の中を駆け巡る記憶の欠片。 ついに恋に気づいてしまったジョータが、走りを加速させ順位を上げる。 兄から弟へ繋がれる襷、と同時に、 葉菜子の想いも聞かされたジョージは、すっかり心ここに在らず。 突然の葉菜子パニックに他の選手も浮き足立つ。 レースを修正するため、走が田崎に伝言を託す。 一方、中継所に辿り着いた神童に、灰二が電話で語りかける。 長くて短い二人の時間。高熱を帯びた神童の体に、悲壮な決意が滲む…。
仲間が決死の走りで繋いだ襷。 その重さを噛み締めながら、ユキがレースの準備に臨む。 そばに寄り添う神童の姿。溢れる不安や後悔を力に変え、運命のスタートを待つ。 一方、横浜では、9区の走と10区の灰二がスタンバイ。 しかし、灰二の姿が見あたらず、走の胸に不安がよぎる。 そしてそれが的中するように、灰二の部屋からスポーツドクターが現れる。 灰二に詰め寄る走。しかし灰二は、どこまでも穏やかな、いつもの灰二だった。 午前8時。復路開幕!
悲壮なまでの榊の闘志。 引きずられるようにペースを見失うキング。 その脳裏を過るのは、灰二と交わしたある日の会話だった。 言い出せない言葉。逃げ出せない現実。 絡みつく迷いを解いてくれるのは、やはり灰二の言葉なのか。 やがてキングの思いは、竹青荘で出会った、あの日の記憶にたどり着く。 それは孤独な、だけど夢のような時間の始まりだった。 小さな落胆、小さなプライド。全てを抱えて走り抜け。 男たちの、自分を手に入れるための戦いが続く…!
未体験の感覚に戸惑う走。その速度は他の選手を圧倒する。 一方、王者六道大のエース藤岡も、宣言通り区間記録を更新、チームを1位へ押し上げる。 藤岡を迎える灰二。互いの道の先にどんな答えが待つのか。 確かめ合うように言葉を交わす二人。灰二の静かな決意に王子が笑顔で背中を押す。 やがて、走が衝撃の速度で中継地点に現れる。 夢がそこにある。走から灰二へ。襷が二人を、チームを一つに繋いでゆく。 寛政大学陸上競技部。彼らが辿り着いた頂とは。