十二年に一度行われる十二大戦。出場戦士全員が殺し合い、最後の一人まで勝ち残った者は、どんな願いでもたったひとつだけ叶えることができるという。亥の戦士・異能肉(いのうのしし)は、前回大戦の覇者「伊能家」の令嬢。長女のプライドから、代表になるはずだった妹を蹴落として大会に参加した彼女は、「湯水のごとく(ノンリロード)」というスキルを武器に、優雅に戦い抜くことを誓うが、思わぬ形で最初の敵と対峙することになる。
戌の戦士・怒突(どつく)は、強烈な嚙みつき「狂犬鋲(きょうけんびょう)」という戦闘スタイルで知られるが、その裏で、体内でさまざまな毒を分泌できるというスキルを隠し持っていた。 参戦した戦士全員が服毒し、タイムリミットを持つというルールの中で、アドバンテージを得た怒突は、他の戦士たちが殺し合い、数が減るまで待つ作戦をとってほくそ笑む……そんな彼の元に現れたのは、ノーマークの意外な戦士だった。
酉の戦士・庭取(にわとり)は、他の戦士ほどの強力な武器を持たない代わりに、鳥たちの視界を借りるスキル「鵜の目鷹の目」と、どんなに卑劣な裏切りも呵責なくこなす強かさで、過酷な戦場を生き抜いてきた。 しかし、こんな戦いの中でも和平を模索する申の戦士・砂粒(しゃりゅう)を前にして、彼女ははじめて揺れ動いてしまう。砂粒の誘いを断った彼女は、己の強かさとは何か、自問自答しながら町を歩くが……
申の戦士・砂粒(しゃりゅう)は、師匠である水猿、岩猿、気化猿より手ほどきを受け、液体、個体、気体を自在に操るスキルを持つ強力無比な戦士。だが、彼女はその力を正しい方向に使うことを信条とし、世界中の戦場をめぐって、高い交渉力によって数多の戦いを停戦に導いてきた。 十二大戦においてもなお、和平の道を探ろうとする砂粒は、唯一、和平に呼応した子の戦士・寝住(ねずみ)に、そこまでしてくだらない人間を救う意味はあるのかと問われて、ある戦場での体験を思い出す。
未の戦士・必爺(ひつじい)は、第九回十二大戦の覇者であるレジェンド級の老戦士。 武器商人として戦場を渡り歩き、戦士としても勇名を馳せていた彼が、そのとき叶えたのは「孫の顔が見たい」という願いだった。 出場戦士たちの実力とランクを予想して、持ち前の老獪さで戦略を練る必爺は、密かに呑み込まずにおいた猛毒結晶「獣石」を活かし、他の戦士を騙そうと企む。
午の戦士・迂々真(ううま)は、己の肉体を極限まで鍛え上げることで手に入れた最強の防御術「鐙(あぶみ)」に絶対の自信を持つ戦士。しかし、最強と目される丑の戦士・失井(うしい)とかち合い、全身を傷つけられて自信を打ち砕かれる。 銀行の金庫にバリケードを築き、引きこもる迂々真。このまま時間切れを待てば、あるいは勝ちを拾えるかもしれない……そんな希望は、ある闖入者によって破られる。
巳の戦士・断罪(たつみ)兄弟・弟は、戦士になっていなければ放火魔になっていたと公言する危険人物。双子のコンビネーションには絶対の自信を持つ断罪兄弟は、少年の頃、自分達の力を試す『遊び』をしていた。 いずれ十二大戦に参加してどちらかが死ぬ運命だと知ったその日、最後の「遊び」の中で兄に助けられたことを思い出す断罪兄弟・弟。今、十二大戦の会場に辿り着いた彼の前に、卯の戦士・憂城(うさぎ)が現れ、「お友達」になってと持ち掛ける。
辰の戦士・断罪(たつみ)兄弟・兄は、傲岸不遜な態度を演じる一方、沈着冷静さも兼ね備え、弟とのコンビネーションの中では指揮役を担う戦士。遥か上空から監視する「天の抑留」というスキルで、動く死体(ウォーキングデッド)になり果てた弟を見下ろしていた。 戦いに介入するチャンスを窺っていた断罪兄弟・兄は、かつて兄弟が戦場において戦士としてあるまじき行為をしたとして行われた弾劾裁判のことを思い出す。
卯の戦士・憂城(うさぎ)は、「死体作り(ネクロマンチスト)」として、次々に戦士を「お友達」にして行く。 丑の戦士・失井(うしい)と寅の戦士・妬良(とら)は、「お友達」に加わった断罪兄弟の死体と四つ巴になって対峙。失井に執念を燃やす妬良は、正しさを求めてあがいていた日々を思い出す。失井の機知で窮地を脱したかに見えた二人に、憂城が両刀「三月兎」と「白兎」を振るって迫る。
寅の戦士・妬良(とら)は、部門の家系に生まれ、戦うことを「道」だと心得て、使 命感に燃えて戦場に赴く。だが、正義などない現実の前に挫折、酒に溺れた。 飲んだくれて戦い続ける妬良は、とある戦場で圧倒的な「正しさ」を持つ戦士と出会 う。その戦士と再び会うため十二大戦に参加した彼女はいま、彼と決闘するという願い を叶えようとしていた。
丑の戦士・失井(うしい)は、「わけがわからないほど強い」と評される戦士。あまりに天才すぎて、常人には計りかねる器量を持つ彼の武器は、「牛蒡剣」というサーベルと、鍛え抜かれた剣術のみ。「ただ殺す」というスタイルで、彼はどんな戦場においても己の正しさを貫き、敵を鏖殺してきた。 畏敬を込めて「皆殺しの天才」とあだ名された失井は、かつて戦場でひとりの少女を救い出したことがあった……。
子の戦士・寝住(ねずみ)は、日常ではごく普通の高校生だった。「ねずみさん(ハ ンドレッド・クリック)」というスキルでここまで生き残ってきた彼は、戦いの中で、他 の戦士たちがどんな願いを抱いてこの十二大戦に参加したのかを知る。 再び現れたドゥデキャプルの問いに、人間のさまざまな欲望に想いを馳せた寝住は、 失井に言われた通り、自分が正しいと思うたったひとつの答えを出す。