ウィンダリア島に漂流人(さすらいびと)として流れ着いた少年・リックは、3人の少女──アミル・ネリス・エアリィ──に助けられ、彼女たちの営むパン屋「ル・クール」で職人として腕を振るっている。おいしいパンを焼いて人々に届ける、忙しくも穏やかな日々。 ある時、リックたちは食材探しに出掛けた森の奥で不思議な生き物と行き逢う。 その小さな出来事は、やがて訪れる新たな出逢いと大いなる変化の予兆にすぎなかった──。
エルフ族のラナから「今度来る嵐は普通じゃない」と伝言を受け、島の人々にパンを渡すたびに気を付けるよう忠告する3人娘たち。 そんな1日の終わり、パンを届けに出かけたエアリィが一向に帰ってこない。 赤い月が架かり、少しずつ雨雲が立ち込めてゆく島。心配したリックが探しに行くと、エアリィは噴水広場で見知らぬ女の子とすっかり話し込んでいる。 女の子は果樹園で嵐の備えに忙しいお母さんの帰りを待っているというのだが……。
大嵐が去った夜、リックと3人娘は海岸に流れ着いた少女を見つける。診療所へ運ばれる少女の胸元に輝く、虹色のペンダント──。 一方、ル・クールでも事件が。嵐で倒れた木に焼き窯を壊されて、パンを焼けなくなっていたのだ。マデラの助言で、ドワーフ族のハンクに窯の修理を相談することに。 さらに、島の沖合いでは正体不明の大型船が目撃され、ウィンダリア島に灯火管制が敷かれた。 不穏な空気の中、少女のペンダントが光を放つ。
マデラのパン屋を借りて仕事を再開するリックたち。島の住人たちも普段の生活へと戻っていく。だがアミルはひとり、リックが剣を取って戦ったときの表情に、言い知れぬ不安を覚える。 そんなとき、老漁師のヴァンスと孫のジャンが、海の中でキラキラ光る何かを見つけた。 聞きつけた骨董屋のシャオメイは、リックたちに宝の引き上げを手伝うよう声を掛ける。窯の修理代を作ろうと、リックたちは早朝の海へ漕ぎ出すことにするのだが……。
もうすぐ店じまいのル・クールに、黒くて小さな使い魔・ソルベエが訪れる。その日から毎日、甘いパンを買いに来るソルベエに興味が湧き、3人娘はこっそりあとを尾けてみることに。 たどり着いた先は島のはずれに建つ古びた洋館。その主・メルティは、究極のスイーツを作ろうと研究を重ねる魔女だった。3人をすげなく追い返したものの、実はル・クールのパンに惹かれているメルティ。 魔女と使い魔の、美味しさのヒミツ探しが始まる。
ル・クールにウィンダリア城の侍女・ローナが訪れる。ラグナス王子とルフィーナ王女から注文を言いつかってきたのだ。 急いでパンを焼くリックたち。配達に向かったウィンダリア城にはなぜか、厳重な警備が。バラの園で出迎えたラグナスとルフィーナは、夜な夜な城に出没する盗賊の撃退をリックに依頼する。 ネリス、ローナとともに城内を見回るリックの前に、ついに現れた盗賊──怪盗ブラックテール。激しい戦いを繰り広げた盗賊の正体は意外にも?
盗賊退治から戻って以来、気持ちの晴れないリック。マデラにうながされ、リックはシャオメイの元を訪れる。パン職人としての自分の中に、剣士としての自分がいるのかもしれない──その気持ちの揺れ動きから、器用に働くシャオメイに興味を持ったのだ。 さらに、ル・クールの窯の修理をするハンク、ずっとパン屋を営みつづけてきたマデラにも、リックは話を聞く。 自分の本当の気持ちはどこにあるのか、リックは思い悩む。
リックが配達に訪れた酒場の女主人・フローラ。物憂げな彼女は、リックと同じように島へ流れ着いた漂流人(さすらいびと)だった。 過去のないことが不安にならないかと尋ねるリックに、ただ「ここでやらなきゃいけないことがあるから」とだけ答えるフローラ。 夜の酒場に誘われたリックはそこで、海賊と名乗る男・ディランと出会う。一切の迷いなく宝を追うというディランの言葉に、リックは……。
没収されたままの宝を取り返すため、シャオメイとハンクは夜のウィンダリア城へと潜入した。リベンジを誓うローナとの間に、追いつ追われつの大捕り物が繰り広げられる。 一方、リックたちは元気になったカグヤを連れ、食材探しをかねたピクニックに出かけることに。小船でゆるやかに川をくだりながら、初めて目にする美しいウィンダリアの風景に目を輝かせるカグヤ。 だが、楽しい日々の予感をよそに、島に新たな災いが起ころうとしていた。
城へ忍び込んだ罪に問われ、囚われるシャオメイとハンク。捕まる直前、取り囲まれたハンクの前で、機械人形──クイーンがついに目を覚ました。兵たちを振り切って夜の空へと飛び去ったクイーンに胸騒ぎを覚えるハンク。 一方、いつもどおりル・クールで仕事に精を出すアミルたち。だが、リックだけはパン作りの中でわずかな違和感を覚え、それを消し去ることができない。 そんな矢先、カグヤが姿を消したという知らせが飛び込んでくる。
ついに出現した武装船団。そこへ降り立ったカグヤを精霊石を求める不気味な声が押し包む。カグヤの身を守るべく戦闘を開始するクイーン。 ル・クールでは、カグヤの身を案じるリックたちが、赤い月がこの世界にもたらす異変について想いをめぐらせていた。 "漂流人"(さすらいびと)とは一体何なのか。つのる不安と疑問の中、王子ラグナスはカグヤを奪い返すようリックに願い出る。 リックの秘められた力にウィンダリアの命運が掛かるというのだが。
捕らわれたカグヤを救うため再び剣をとったリックは、ラグナスとルフィーナの不思議な力を借り、武装船団へと向かう。 ディラン、ハンク、シャオメイもまた武装船団へ攻撃を加え始める。猛烈な戦いの中で明かされてゆくこの世界──ウィンダリア島の秘密。 アミル、ネリス、エアリィ、そしてウィンダリアの人々すべての祈りを背に、異形の者たちとの決戦に挑むリック。 カグヤとの再会は果たせるのか。その先にある、新しい"幸せ"のかたちとは──。