巨大な大穴『アビス』の縁に築かれた街、『オース』で暮らす探窟家見習いの少女・リコ。ある日、探窟中に孤児院の仲間の少年・ナットが巨大な蛇状の生物「ベニクチナワ」に襲われているところに遭遇する。とっさの機転で注意を逸らしたリコだったが、今度は自分がベニクチナワに襲われてしまう。絶体絶命のその瞬間、突然辺りが閃光と轟音に包まれて・・・。
夜、リコの部屋に集まった子供たちは、レグがアビスの底からやって来たのではないかと推測していた。シギーは、発掘された遺物がまとめられた図鑑『遺物録』のどこにもレグのような遺物は載っておらず、アビス史上最も価値のある遺物の一つ『奈落の至宝(オーバード)』かもしれないという。もしレグが大人たちに見つかってしまうと「取り上げられて分解されてしまう」と恐れた子供たちは、ある作戦を実行するのだが…。
ライザが持っていたという封書に書かれていたのは「アビスの底で待つ」というメッセージだった。ライザから自分宛に送られた手紙だと確信したリコは、アビスの底を目指す旅に出たいと仲間たちに打ち明ける。だが、二度と戻って来れなくなる旅になると忠告するナットと喧嘩になり…。そんな中、レグは孤児院にやってきて初めての探窟に出かける事になった。改めてアビスに潜ったレグだったが…。
リコが目を覚ますと、眼前にはレグの寝顔とロープのように張り巡らされた腕があった。『オース』から旅立った二人は深界一層『アビスの淵』に到達しており、周囲を常に警戒する必要があったのだ。「この速さなら奈落の底へ行ける!」と目を輝かせるリコだったが、お腹が空いた様子。そこで特製のリコ汁を作って食べていると、レグはふとポケットに入っていた封筒を思い出した。そこに書かれていた文字は…。
深界二層『誘いの森』に到達したリコとレグ。シギーの言葉では、赤笛がここまで降りれば自殺扱いになるほど、行く事も戻る事も難しくなるという。追っ手を振り切ったと安心した二人はアマギリの葉が群生する森を歩いていると、遠くから人の声が聞こえてきた。助けを呼ぶ声のする方へ慌てて向かうと、そこには巨大な鳥のような生物と傍らに倒れている探窟家がいて…。
ようやく『監視基地(シーカーキャンプ)』に到着したリコとレグを迎えたのは、不動卿『動かざるオーゼン』。ハボルグの話では、現役の白笛でアビス深層で生まれたリコをライザと共に地上まで運んだという。命の恩人に対してお礼を言うリコだったが、オーゼンは不気味な表情で笑い始め…。そして、オーゼンの直弟子『マルルク』と一晩過ごすことになった二人。リコが深夜に目を覚ますと…。
リコたちと別れ、オースの街に戻ったハボルグは、白笛の中でも特に無双の怪力を持つ“不動卿”オーゼンについてナットやシギーに語っていた。ただ、ハボルグはオーゼンに対してある不安を感じていて…。一方、オーゼンの部屋で四角い白い箱のようなものと対峙したリコたち。自らが入っていたと言われる『呪い除けの籠』ではないか?と推測したリコに対し、オーゼンが伝えた真実は…。
オーゼンから課された新たなる旅立ちへの試練「生存訓練」。限られた装備で10日間生き延びる事を言い渡されたリコとレグは、まずは飲み水の確保の為に移動を開始する。早速綺麗な水場を発見したリコだったが、近づくと突然水面が揺れて…。一方、地臥せりと共にその様子を遠くから眺めていたオーゼン。リコとレグの様子を見て、思いを馳せたのは…。
オーゼンやマルルクたちと別れ、深界三層「大断層」にたどり着いたリコとレグ。大断層はその名の通り巨大な垂直の壁で、その高さは4,000メートルを超えるという。オーゼンに教わった縦穴を利用して下を目指す二人の前には、様々なアビスの生物たちが現れる。これまでのようにレグの力を頼りに進もうとしていると、ふと聞き覚えのある音が聞こえてきて…。
深界四層に到達したリコとレグ。そこは『巨人の盃』と呼ばれる巨大な植物、ダイラカズラの出す湯気の覆い尽くす世界だった。レグが周囲を警戒していると、ふと妙な気配を感じる。まるで言葉を理解しているような反応だが、全く位置がつかめないため二人はその場から離れた方が良いと考えた。すさまじい湿気のなか歩みを進めていると、目の前に突然…。
タマウガチの毒と深界四層の上昇負荷によって瀕死の状態に陥ったリコ。狼狽え、号泣するばかりのレグの前に姿を現したのは、自らを『成れ果て』と呼ぶ不思議な生き物、ナナチだった。アジトに到着し、疑心暗鬼になりながらも他に頼る術もないレグは、ナナチにリコの処置をお願いする。手際よく処置をするナナチは一部始終を見ていたというのだが…。
オースの街では、誕生日のお祝いを楽しみにしていたキユイが高熱でうなされていた。「誕生日に死ぬ病」の噂が広がるなか、ジルオは国々を巡っている「船団キャラバン」の薬師を頼る。キユイと共にオースを離れ、キャラバンの診療所に向かうと…。一方、洗濯から戻ってきたレグは眠るリコの上で蠢くミーティを目にし、狼狽えていた。だがナナチは…。
レグの火葬砲を見て「ミーティを殺してくれ」とお願いしたナナチは、子供の頃を想起する。過去、極北の地「セレニ」でゴミ拾いをしながら生活していたナナチは、同じ地の底のような暮らしを続けるなら真の地の底「アビス」に行きたいと願っていた。そんなある日、「アビス」の探窟家がやってきて子供たちの前で演説を始める。その探窟家は白笛「ボンドルド」。アビスの謎を解くために希望者を募っていて…。
黄金郷を求めて旅する決死隊「ガンジャ」。隊の一員・ヴエコが持つ「星の羅針盤」を頼りに未開の地の航海を続けていた。ある日、激しい嵐がガンジャ隊の船団を襲う。次々に他の船が波にのまれていく中、羅針盤が屹立していることに気づいたヴエコ。隊のリーダーであるワズキャンにすぐさま知らせたその時、嵐の向こうに島が現れる。ようやく辿り着いたその島で、ガンジャ隊は見渡す限りの巨大な大穴を見つける。
ボンドルドとの壮絶な戦いを終え、リコ・レグ・ナナチは二度と帰ってはこられないという「絶界行(ラストダイブ)」の末、ついに深界六層へと辿り着く。見たことのない建造物や生物を興味津々で観察するリコ。再び孤児院の仲間たちに手紙を書いて伝報船を飛ばすが、目の前で巨大な原生生物に邪魔されてしまうのであった。そんな中、探窟を続けるリコたちの背後に怪しい影が忍び寄る。
何者かに奪われたプルシュカ(白笛)を探すうちに、知性を持った「成れ果て」たちが棲む不思議な村に辿り着いたリコ・レグ・ナナチ。戸惑う3人は、住人の一人・マジカジャから「村の案内をする」と声を掛けられる。警戒しつつも、白笛の在りかを知っている様子のマジカジャの後をついて行くと、村の工房で成れ果てが白笛を削って加工していた。レグは慌てて止めようとするが、リコはプルシュカが嫌がっていないと感じ取る。
レグの前に、成れ果ての姫と呼ばれるファプタと謎めいた人形・ガブールンが姿を現す。ファプタはレグのことを知っている様子だが、レグは記憶が曖昧ではっきりと思い出すことができない。一方ナナチは、お腹を壊したリコのために、村の市場で水と果物を探す。マジカジャから村での取引には「価値」が必要だと教えられ、自分にとっての「価値」とは何かを考えるうちに「ミーティ」のことを思い出すが…。
マジカジャから「ミーティは三賢のべラフが使っている」と教えられたナナチ。べラフの部屋へ向かうと、そこにはお別れをしたはずのミーティの姿が…。取り乱すナナチに、べラフは「何を欲してここに来た?」と問いかける。一方ファプタと別れ、村へ戻ろうとするも道に迷ってしまったレグ。原生生物のリュウサザイに執拗な攻撃を受け、苦戦を強いられていたところをガブールンに助けられる。
自分自身を「価値」として売ってしまったナナチを取り戻そうとするリコ。「両目か、両足か、臓腑の半分か」とベラフに対価を迫られる。悩みながらも意を決するリコであったが、マジカジャが「何とられてもおわり」と寸前のところで止めに入る。さらにナナチも「ほっといてくれ」とミーティから離れようとしないため、マジカジャはリコを外へ無理矢理連れていくのであった。その矢先、原生生物のオオガスミが突如、村に襲い掛かる。
決死隊「ガンジャ」の生き残りだと明かしたヴエコは、「成れ果て村」の忌むべき成り立ちについてリコたちに語り始める。かつて「還らずの都」へと辿り着いたワズキャン率いるガンジャ隊。黄金郷を見つけたという喜びもつかの間、昇降による異形の呪いのせいで地上に戻ることができないことに気づく。隊員たちは「黄金郷で最初の民として生きていこう」と決意するが、食糧と水場の確保に難航する。
「水もどき」に侵され、次々と倒れていくガンジャ隊の面々。ついにヴエコも発症するが、ワズキャンから与えられた“香ばしいもの”を食べて回復する。同様にベラフも回復していたが、“香ばしいもの”を食べてしまったことを深く後悔し、精神を壊していた。動揺するヴエコを、ワズキャンは落ち着いた様子でイルミューイの元へ連れていく。そこでヴエコが目の当たりにしたのは…。
ナナチをベラフから取り戻すため、レグはファプタに「一部が欲しい」と話をする。すると“ある約束”を果たすことを条件に、ファプタは迷いなく自らの体の一部を引きちぎり差し出す。心配するレグをよそに、“不滅”であるファプタは平気な様子だが、血の匂いにけものたちが狂い出してしまう。レグは急いで「成れ果て村」に体の一部を持ち帰るが、どうしてもファプタとの“ある約束”を果たすべきかどうか答えを出せず…。
レグの火葬砲で「成れ果て村」へと入れるようになったファプタが、復讐を誓い乗り込んでくる。村が破壊されていくなか、眠っていたナナチが目覚める。ベラフは自らの価値と記憶を託してナナチを解放するが、境界線を越えると「ミーティは消える」と告げる。ミーティと再び別れてリコとレグのところへ向かうか、留まってミーティと一緒に留まり続けるか、ナナチは選択を迫られる。
ファプタの笑顔や泣き顔など、記憶の断片が蘇りつつも、依然はっきりと過去を思い出すことができないレグ。暴れ続けるファプタを止められないまま、攻撃を受けて気を失ってしまう。レグとの戦闘を終えたファプタはさらに怒りの矛先をリコに向けて襲い掛かるが、ガブールンが身を挺して止めに入るのであった。ショックを受けたファプタは、怒りが収まらず再びリコを襲おうとするが、そこへ現れたのは…。
崩壊していく「成れ果て村」の中を、マジカジャ達と一緒に避難するリコ・レグ・ナナチ。その道中で倒れて動けなくなったワズキャンと対峙する。「ここに来れてよかったかい?」とリコに問うワズキャン。そして自身が成し遂げたかったこととは何かを語り始める。一方、新たな記憶や価値に触れたファプタは、自らの役目を果たすため、村を襲う原生生物たちに再び戦いを挑む。