果たして灼熱の大地パキスタンへと降り立った勇午。単なる犯罪者集団ではなく、強い信仰を背景に持つ反政府ゲリラ集団「ダコイット」とのあまりにも危険すぎる、そして「信頼」を得るための交渉(ネゴシエーション)がはじまる。
パキスタン最大の都市カラチに降り立った勇午はハジという老人を捜すため、ある旅行会社を訪れた。ハジは10年前、アリが付近のダコイットの指導者(シェイク)たちを次々と殺して勢力を拡大していった中で、唯一殺されず生き残ったシェイクであった。旅行会社のアーマドを介してハジと対面した勇午は、10年前、ハジがアリと対決した理由を聞く。それは?
勇午と踊り子の娘ライラはハジが手配したナツメヤシを運ぶ荷車でキルタル山脈へ向かっていた。途中、東京に居る繭子との無線連絡をダコイット警戒中のパキスタン軍に傍受されてしまい、間もなく砂漠パトロール隊に尋問を受けてしまう勇午たち一行。
ダコイットの村に監禁された勇午とライラ。日の出とともに勇午は村の広場にある岩の上に上半身裸で縛りつけられる。灼熱の太陽の下、時間の経過とともに、強烈な喉の渇きと陽に焼けた石が肌を焦がす激痛に襲われる勇午。死は間近に迫っていると思われた。しかし・・・
パキスタン・カラチに着いた繭子は、無線連絡のメッセージを解くためハジの元を訪れる。そしてメッセージより身代金の受け渡し場所がボラン峠だと判った。ハジは全てに決着をつけるため、ボラン峠に向かう事を決意する。勇午、アリ、ハジ、繭子、それぞれの意志が灼熱の大地にこだまする。果たして・・・。
ボラン峠の検問所に降り立った勇午とライラは、軍の警戒網と追跡をかいくぐりハジとアーマドとの合流を果たす。そして、ハジは再びアリと対決するため、勇午とともに取引場所である炭鉱跡に向かう事を決意し、アーマドに別れを告げる。
交渉人(ネゴシエーター)別府勇午の元に新たな依頼が舞い込んだ。依頼人はロシア公爵の末裔、アンドレイ・セルゲイビッチ。彼の秘書オリガに案内され、アンドレイに会う勇午。依頼の内容はロシア当局に幽閉されているのが判明した孫娘ナージェンカ。その12才の少女を日本に呼び寄せて欲しいというものであった。
果たして女子大生・リューバと出逢う勇午。彼女は、かつて父が母の密告により西側のスパイ容疑として逮捕された暗い過去を持っていた。
勇午は元KGBである公文書館の館長を説得し、東シベリア会社と交易のあった極東航路を持つ船会社の積み荷記録を探しあてる。
勇午はリューバが入院している病院に現れた。大量の自白剤を投与され拘束具に縛られた状態のリューバ。必ず迎えに戻ると「約束」した勇午はブラゴベシチェンスクにある内務省対内防諜局のシベリア本部に向かう。しかし勇午の眼前に「マロース」と呼ばれる零下40度以下の極寒と風速30メートルの猛吹雪が立ち塞がる。
ハバロフスクにて凄惨な拷問の指揮を執ったヴィクトル中尉と接触を果たした勇午。そこで勇午はヴィクトルがリューバへの尋問も行なった事を知る。すると、勇午はナージェンカの背後にある莫大な財産とハリストスの指輪の関係を話し、ヴィクトルの目の前で逮捕された。意図的に・・・。果たして壮絶で凄惨な拷問の前に、勇午は「指輪の謎」を自白させられてしまうのか。
自白剤を投与され、憔悴している勇午に尋問を行なうガラーホワ。だが勇午は指輪に込められたメッセージについて自白しない。するとガラーホワはさらに大量の自白剤の投与を部下に指示する。限界を超えた自白剤により、意識が混濁した勇午は、徐々に「記憶」を取り出されて行く。
遂にガラーホワ少将との交渉(ネゴシエーション)に辿り着いた勇午。勇午はナージェンカの身の安全を確かめ、ナージェンカの前で資産引き出しに必要な残りの3桁の暗証番号を教えると提案する。