神託歴3972年、闇の異邦(ヴィシュテヒ)を封じる使命を帯び、聖なる槍を与えられた14人の騎士がいた。その中のひとり、刃匠(ブラットマイスター)アシェリートは、旅の途上、死の森の奥で信じていた仲間の裏切りによって無惨に殺され、『裏切りの槍』の汚名を着せられてしまう。 それから20年の時が経ち……、死の淵から剣士・ケインツェルとして甦った彼は、今や『七英雄』と讃えられる仇への復讐を胸に秘め、国境の街リエルデ・フェレムへやってきた。そこで知り合った密航者の少女・ピーピやヴィド、密航を手引するアルテアと共に、国境の壁『千の石槍』で、権力を傘に着る悪徳僧兵たちの根城、地下僧院に潜入するケインツェルだが……
国境近くに敷いた陣で『千の石槍』の崩壊を目撃した『七英雄』たち。飛竜を駆り、陣を目指すケインツェルだが、飛竜艇の攻撃に阻まれて不時着する。そこで、かつて自分を裏切り無惨に殺した仇のひとり、グレン侯と相まみえるケインツェル。胸に去来する、使命の旅でリーダーだった頃のグレンとの友情の記憶……。ケインツェルの刃は、グレンを守る七槍騎士団によって防がれる。命を狙われたグレンはしかし、ケインツェルを赦すと言って喝采を浴びる。20年間、英雄のカリスマを民衆に浸透させたグレンは、圧倒的な権力を盾として手に入れていた。 挫折を味わい雨に打たれるケインツェルを、仮面を着けたもうひとりの復讐者・アトが狙っていた……