曹操と袁紹が互いの命運を賭けて激突した『官渡の大戦』は、緒戦、突如現れた奇獣の面を付けた関羽の猛攻で、袁紹側の顔良軍は劣勢となった。顔良が殺されたと知った兵たちは、ただ敗走するだけ。劉備と張飛も、撤退を余儀なくされた。
まもなく、袁紹側の大船団の前に、曹操がわずか3千ほどの兵と共に現れた。これを見た袁紹は、文醜に5千の兵で討つよう命令。劉備と張飛も、袁紹に参戦を願い出て、曹操の追撃が始まった。
文醜は、撤退する曹操の軍を見つけて、勢い付いた。だが、追っ手が近づいたと知った曹操は、思わぬ作戦に出る。曹操側は、3千の兵のうち2百名の兵を、2回に分けて本隊から分離させたのだ。この分離した兵の中に曹操がいる可能性があると見た文醜は、それぞれ千名ずつの兵で、百名の曹操兵を追撃させる。
この時点で、文醜軍3千に対し、曹操軍は2千8百。この後、曹操側は、さらに3百の兵を分離させた。だが、この戦いの目的が曹操の首を獲ることだと考えた文醜は、兵を半分に分け、自らは黄河に向かう2千5百の曹操軍を追撃。文醜は、退路がない曹操を必ず倒せると考えた。
ところが、曹操は、猛進してきた追っ手を挟み撃ちにして、あっさり文醜を倒し、さらに堤防を破壊して、文醜兵を全滅させてしまった。
一方、2度目に分離した曹操兵の中に加わっていた関羽は、反転して、迫る文醜兵を斬りまくっていた。曹操に、劉備を殺すよう命じられ、乱世が収まったら政〈まつりごと〉で腕を振るうように、と告げられていた関羽は、完全に心を乱していた。張飛は、そんな鬼神のような関羽を見つけ、全身に