柴門たまきは、いつものように幼馴染みの織屋浪馬に「キックボクシング同好会」の練習をさせるため、学園中を探し回っていた。そんな中、不思議な雰囲気を持つ転校生・岸田シュンと出逢い、何故か幼い頃の想い出がよみがえる。学園の図書館司書を務める横溝ふみもまた同じだった。あの少年はまさか、あの時の…。その頃、同じく浪馬と幼馴染みの雨堂は高大寺助清と名乗る男から浪馬宛の果たし状を受け取っていた…。
たまきは高遠七瀬から同好会の予算削減を宣告され、ショックを受けていた。それなのに浪馬はたまきから逃げ回り、練習に出ようとしない。とうとう愛想をつかすたまきだったが、雨堂から渡された薬袋を見て浪馬が怪我をしていたことを知る。たまきは浪馬を探すため街中を駆け回るが、不良3人組にからまれてしまい絶体絶命のピンチに陥ってしまう。ちょうどその時、そこにシュンが通りかかるが…。
たまきは自分を助けてくれたのがシュンだと思い込み、その腕を見込んで「キックボクシング同好会」に勧誘するためシュンと同じクラスの有璃と一緒に探しだす。一方、助清からの果たし状を受け取った浪馬だったが、まったく身に覚えがなかった。その日の放課後、最近のたまきの様子を心配して千穂に相談する浪馬の前に現れたのは、浪馬に果たし状を送った助清だった…。
役者修行をしている夕璃が参加している撮影の現場に誘われた浪馬は、バス停で偶然にもたまきと出会う。しかし、たまきは意味ありげな行動をとって浪馬を送りだす。同じ頃、シュンもまた夕璃に誘われて現場である岬へ向かっていた。シュンを不審に思ったふみとみさきもまた同じだった。皆の見守る中、夕璃の替わりにスタントをすることになった浪馬だったが、不注意で足を踏み外してしまったそのとき…。
教室ではいつものように浪馬を探しているたまきの姿があった。そんな折、美術室で描きかけの絵を見かけたシュンは、みさきに想い出探しの旅行に誘われる。それを聞いていた浪馬たちもついて行くことに。旅先で温泉を楽しむ皆をよそに、みさきは想いにふけるのだった。明朝、みさきは想い出の土地を訪ねようと旅館から人知れず出かけるが、自分の過去と対峙する、不思議な世界に迷い込むのだった…。
雨堂は高遠七瀬にもっと学園生活を楽しむように伝える。二人の様子を見ていたたまきは七瀬が雨堂を好きだと思い込み、浪馬と四人で海に行く計画を画策するのだった。しかし、計画を無視してはしゃぐ浪馬にたまきは落胆する。そんな時、海は荒れ、海上でゴムボートに乗っていた七瀬は沖に流されてしまう。叫び声を聞いて助けに向かったシュンだったが、大波が二人を襲うのだった…。
大波にのまれてしまった七瀬とシュンは、無人島に流れ着く。誰かいないかと島中を歩き回るが、返事はなく、手付かずの自然と孤独の前に時間を感じなくなる二人だった。そして、小さな漁船をようやく見つけ出す。その漁船の上には、すべてに絶望し、亡霊を待っているという老人の姿があった。老人の話を聞き、人の記憶の中でしか生きれない亡霊と自分を重ねるシュン。そんな中、七瀬が静かに口を開くのだった…。
大物が釣れると噂されている“ヌシ”を目指す浪馬たち一行。彼らは、この辺りで怪光線や人体実験の不気味な噂がある「渋澤理化学研究所」の前に差し掛かる。その研究所から轟音とともに怪しい閃光が放たれた時、浪馬たちは一目散に逃げ出してしまう。その場にひとり取り残されたシュンは、その後、研究所から出てきた少女と出逢う。それがシュンと博子の物語の始まりだった…。
夏祭りの日、千穂は雨堂、砂吹とともにいつまでも進展しない浪馬とたまきのために二人きりにさせようと計画する。一方、そんな夏祭りの音を聞きながら過去の想いにふけるふみと教育実習生の香月の姿もあった。幼少の記憶で夏祭りが苦手な香月はシュンから思い切って一歩を踏み出すことで変わることがあると教えられる。その話を偶然にも聞いたたまきはひとつの決意をするのだった…。
キックボクシングの練習に励む浪馬だったが、心ここにあらずのたまきに苛立ちを覚える。憂さ晴らしに街へ出た浪馬は、ストリートミュージシャンの堀出実果と出会う。彼女が聖メアリ・ミード学園の生徒だと知った浪馬は、学園を訪ねるが彼女には会えず、大山恵比子という少女から実果の悩みを聞いてしまう。それからというものの、実果に会うために毎日駅前に通う浪馬を、たまきは遠くから見ているしかなかった…。
たまきは何でもすぐに誤魔化してしまう浪馬への想いに自信が持てないでいた。浪馬はというと、実果を探しに街へ出かけるが、会うことが出来なかった。そんな時、ひとりの少女・井伏オキエと出逢う。浪馬は、彼女が以前に知り合った大山恵比子だと知り、そして彼女のひたむきな想いを知った時、ひとつの決意をする。それは浪馬とたまきの関係に大きな変化をもたらすものだった…。
お互いの事を理解しているのに、どこかギクシャクするたまきと浪馬。心配した図書館司書のふみは、雨堂と砂吹からたまきの中に子供の頃に出会った“誰か”が今でも棲んでいることを聞く。浪馬は、昔からそれにうすうす感づいているようだった。たまきと同郷のふみは、二人の子供時代に遡ることにその“誰か”の鍵があると思いたまきを帰省に誘うのだった…。
旅先でたまきの麦藁帽子が風に飛ばされた時、そこには…。 頼津学園、シュンが転校をしたことを聞いた浪馬たち一同。そんな皆を図書館の窓から見つめるシュンは、ふみに忘れかけたものを思い出したと告げて、紙飛行機を投げた…。 頼津学園、いつもと変わりない日常。そこにシュンの姿はなかった。そんな中、何かを忘れた気がしている雨堂は、みさきの完成された絵を見て愕然とするのだった…。
〜季花詞集(Anthology)〜