星界山でのできごとから、しばらく後のこと。5年生に進級し平穏な生活を送るワタルだが、調子はイマイチだ。原因はワタルの脳裏に繰り返し去来する、創界山崩壊のイメージ。不吉な予感を募らせていく中、ワタルは不思議な老人と出会い、龍神池の桜にまつわる伝説を聞かされる。 咲かぬはずの桜が満開の花をつけた、その夜。ワタルは龍神池で虎王と再会する。どうやら、創界山に新たな魔の手が迫りつつあるらしい。 創界山でワタルが見たもの。それは、今にも崩れ落ちそうな山を、必死で支える神部七龍神の姿だった。魔界へ通じる扉が開きかけ、そこから吹き込む邪悪な力が創界山をボロボロにしているのだ。しかも、扉を封じていた「聖龍の勾玉」が魔界の者に奪われ、すべての魔神が動きを封じられいる。扉から現れた魔物は今や創界山中にあふれ返っており、魔界に降りて勾玉を奪回するいとまもないのだ。 ヒミコやシバラク、クラマ、海火子、そして龍神丸、懐かしい顔ぶれとの再会を喜んでいるヒマすらないワタルの目の前に、凄まじい殺気を放つひとりの男――閻羅王が姿を現すのだった。 閻羅王が立ち去った後、ワタルは聖龍殿へと案内される。そこでは、魔界の邪気にあてられ意識を失った翔龍子が静かに横たわっていた。 聖龍妃はワタルに、「拳龍の勾玉」を取りに行くよう頼む。創界山の虹を渡り、はるか天部界へと旅立つワタルと海火子。その様子を、閻羅王が不敵な笑みを浮かべて見守っていた。
海火子とともに天部界へとやって来たワタルは、修羅童子と覇翔童子によって捕らえられてしまう。そこへ現れたのが天部界の皇子・四天龍王だ。門番たちに命じて「救世主の力」を試した彼は、ワタルたちを麟王に乗せ「龍使いの一族」のもとへと導くのだった。 龍使い村では拳龍降臨の準備が進められていた。「拳龍の勾玉」は1000年に1度、拳龍が地上に降りてくる際に出現するという。今、この場で勾玉を手に入れなければ、創界山は完全に魔界の手に落ちてしまうだろう。焦るワタルたち。 龍の中の王・拳龍が、ついにその姿を現す。だが、そこに勾玉を狙う閻羅王が襲来し、ワタルに驚くべき事実を告げる。この場所こそ、ワタルの故郷だというのだ! そのとき、拳龍の体がまばゆい光を放ち、白龍――拳龍の子供が誕生した。拳龍の眼からこぼれた涙が、勾玉となってワタルの手に落ちる。だが、せっかく手にした「拳龍の勾玉」は閻羅王によって破壊されてしまった! ガックリと肩を落とすワタルに、長老が勾玉と救世主の秘密を明かす。1000年に1度、勾玉によって拳龍子は生まれ変わり、次の救世主の役割を果たすという。そして、ワタルこそが現在の拳龍子だったのだ。ワタルの中に宿る「拳龍の勾玉」を使えば、神部界を救えるかも知れない。 ワタルを励ますかのように、白龍馬に乗った虎王が姿を見せる。四天龍王も快く麟王を貸し与えてくれた。2頭の天馬にまたがり、ワタルたちは神部界へと帰ってゆくのだった。
神部界へと帰還し、魔界の扉へと向かったワタル、虎王、海火子の3人は、やがて巨大な地底湖にたどり着く。そこに吼鬼を従えた閻羅王が登場し、ワタルの命を大暗黒龍の生贄にすべく襲いかかる!ワタルは閻羅王に一対一の勝負を挑む。ワタルの想いに呼応するかのように「拳龍の勾玉」が出現、ついに閻羅王の企みをくい止めた。 魔界の扉を封じるべく、虎王はひとり毒の湖に飛び込んでしまう。 虎王が勾玉をおさめた瞬間、湖は光に満たされ、水が止めどなくあふれ出した。吹き上がる水は創界山全体に行き渡り、神部七龍神に新たな命を吹き込む。そして翔龍子もまたその眼を開くのだった。 ついに真の平和を手にした創界山。だが、湖の水は冷たい氷となり、虎王を閉じこめたまま永久に溶けることはないという。救世主としての役割を果たし終えたワタルも、もう二度と神部界を訪れることはないだろう。 やりきれなさにうつむくワタルに、龍神丸が語りかける。 ワタルが仲間たちと過ごした日々は、伝説として永遠の時を生きるのだ。龍神丸の暖かな言葉に、ワタルはようやく笑顔を見せるのだった――。