南太平洋に浮かぶファカラバ島。サンゴ礁が輪のようにつながった小さな島です。毎年6月ごろになると、産卵のため、島にある狭い水路に1万匹以上の魚が大集結します。体長60センチほどの肉食魚マダラハタです。 しかし、この島の周りは、どう猛なサメが数百匹も暮らすサメの王国としても知られる場所。体の大きなマダラハタは、サメにとって格好の獲物です。 なぜマダラハタは、わざわざ危険な海に集まって産卵するのでしょうか? その謎を解くため、フランスの海洋調査チームが1か月以上に渡って徹底調査を行ないました。まずはハタに発信機をつけて行動を追跡。さらに海底の地形を細かく調べ、ドローンも駆使して水路の3Dマップを作成、ハタが集中する産卵エリアを特定したのです。次に取り組んだのが前代未聞の挑戦、24時間潜水。一人の人間が丸一日潜り続け、ハタがどのようにサメから身を守っているのかを観察するのです。そこで目撃したのはハタの秘策「フリーズ作戦」。サメは、獲物が逃げるときに筋肉が発する微弱な電流で相手の位置を特定します。ハタは、サメが触れるほど接近しても決して動かないことでサメから身を守っていたのです。 そして、数日後。浮き上がるメスに寄り添うオスたち。待ちに待った一斉産卵が始まりました。この日は大潮。潮の流れが速く、狭い水路に産み出された卵は、一気に外洋へと運ばれていきます。ハタがあえてサメだらけの危険な水路に集結して産卵するのは、潮の流れを利用して、卵を天敵が少なく安全な外洋に運ぶためだったのです。 1か月にわたる密着撮影で、マダラハタの