4000メートルを越す山々が連なるヨーロッパ・アルプス。今回の舞台は、イタリアに位置するその南西部です。険しい崖の斜面では、ヤギの仲間アイベックスが草を食べています。上空では食物連鎖の頂点に立つイヌワシが旋回、急降下してアイベックスの子どもを襲うこともあります。春、斜面に空いた穴の中で、ある動物が冬眠から目を覚まします。アルプスマーモットです。ぬいぐるみのようなもふもふの毛に覆われた姿から、「アルプスのアイドル」として人々に親しまれています。この時期マーモットたちは1日中食べてばかり。冬眠の間に失われた体力を回復させるためです。群れのボスである親を中心に10匹ほどの家族で暮らし、普段は地面の下に掘り進めた巣穴の中で眠ります。まるで絵本の世界から飛び出したようなマーモット。ところが、その姿からは想像できない荒々しい一面を持っています。縄張りをめぐって、ライバルの家族同士が激しく戦うのです。戦いは“マーモットファイト”と呼ばれます。相撲の立ち会いのように両者が向き合い、はっけよ〜い、のこった!がっぷり四つから、相手を押し倒したり、突き出したり。あまりの激しさに、命を落とす者もいるほどです。アルプスの至る所で繰り広げられているマーモットファイト。一体なぜ、マーモットたちはかくも激しく戦うのでしょうか? そこには、アルプスで生きる者が背負わなければならない宿命がありました。天空のアルプスを舞台に、生き残りを賭けた戦いに明け暮れるマーモットに密着します。