音楽を聴くという体験は単なる物質過程ではない。主体も客体も分離される以前のあるがままの「純粋経験」が何にも先立って存在する。そこにたち現れる「実在」とは何か? 音楽を聴くという体験は音源から伝わる空気の振動を感覚器官がとらえるという物質過程ではなく、主体も客体も分離される以前のあるがままの経験が何にも先立って存在する。これを「純粋経験」という。この立場から世界を見つめると、私たちが「実在」とみなしてきたものは、単なる抽象的な物体ではなく、世界の根底でうごめている「一なるもの」の「働き」としてとらえ直されるという。第3回は西田幾多郎の根本概念に迫る。