生まれついての優雅さをもつ「最後の貴婦人」と呼ばれた「母」。娘のかず子はそんな母を尊敬しながらも疎ましく思う心を芽生えさせていた。太宰が描く「母娘問題」を解読。 生まれついての優雅さをもつ「最後の貴婦人」と呼ばれた「母」。娘のかず子はそんな母を尊敬しながらも疎ましく思う心を芽生えさせていた。太宰はこの「母娘関係」を通して何を表現しようとしたのか? 高橋源一郎さんは、かず子が母との葛藤の中で心の中に育てていく「蛇」が、社会が長らく抑圧してきた「女性原理」の象徴ではないかと読み解く。第1回では「斜陽」執筆の背景を紹介しながら現代に通じる「母娘問題」を読み解く。