元教師だったハイデマリー・シュヴァルマーは、14年前から“お金を使わない生活”を実践している。緊急のためのわずかな資金を残して年金も返上、自分の考えに賛同してくれる仲間や知り合いの家を、転々として暮らしている。ハイデマリーにとって“豊かさ”とは、必要なものだけを手に入れること。ある時は食料品店で掃除をする代わりに賞味期限の近い食品を分けてもらい、またある時は市場で捨てられた野菜や果物を拾って持ち帰る。 ハイデマリーはこうした生活を実践するかたわら、若者たちと物々交換のワークショップを開いて一緒にお金の価値について考えたり、自身の体験談を語る講演活動を行ったりしている。国内外のテレビやラジオに出演し、司会者にいじわるな質問を投げかけられることも多い。ハイデマリーのことを、他人に寄生する“パラサイト”ではないかという人もいる。しかし、父親の事業で貧しさと豊かさの両方を体験したハイデマリーは、カネによって価値が左右されるこの大量消費時代に、違う生き方があることを示したいと話す。 番組は世界経済の有り様を嘆き、人とは違うオルタナティブ・ライフを歩む女性の葛藤と周囲への波紋を描く。 原題:Living Without Money 制作:EiE FILM / DALCHOWS VERDEN (イタリア/ノルウェー 2010年)