2010年5月6日、アメリカ株式市場で株価が突然急落する「フラッシュ・クラッシュ」が起きた。市場分析の専門家や経済研究家、SEC(証券取引委員会)の調査担当者などへの取材をもとにその原因を検証する。 アメリカの証券取引はその大半が電子化されている。高頻度取引(HFT)、つまり高速自動売買が取引量の75%近くを占め、ニューヨーク証券取引所上場株の取引もその60%以上は実際には別のコンピューター化された取引所で行われている。 市場に流動性を持たせたり、売買注文を仲介したりするかつての“スペシャリスト”の仕事は、コンピューター化された取引所に取って代わられた。厳重に警備され、二重三重のバックアップを備えた証券取引会社のデータセンターで1000分の1秒を争うスピードで日々の取引をコントロールしている。 専門家の中には、以前からこうした自動システムの複雑なネットワークやアルゴリズムの作用により全体として予想外の挙動を示す危険性を指摘する人びとがいた。「フラッシュ・クラッシュ」も、こうしたシステムに起因するもだと言う専門家もいる。 SECは対策として、市場横断的なサーキット・ブレーカーというシステムを導入。株価が5分間に10%以上変化した場合、5分間取引を停止することで暴落を防ぐ。しかし、多くの関係者はその効果に懐疑的だ。再びフラッシュ・クラッシュが起きる可能性はあるという指摘もある。 原題:Money and Speed-Inside the Black Box 制作:VPRO Television (オランダ 2011年)