雨宮鳩子は8年ぶりに故郷の鎌倉に戻ってきた。「ツバキ文具店」を営んでいた祖母のカシ子が亡くなったのだ。「ツバキ文具店」は、依頼者が書けない手紙を、なり代わって書くことが生業という、一風変わった店だった。幼いころ母に捨てられ、祖母に反抗して飛び出した経緯のある鳩子には、店を継ぐ気はない。しかしそこに、祖母が亡くなる直前に、お悔やみ状の代書を依頼したという客「マダムサイダー」(冨士眞奈美)が。鳩子は、その代書を無理やり引き受けさせられてしまう。いわくつきのお悔み状に四苦八苦する鳩子。ご近所さんのバーバラ婦人や白川らの言葉に、鳩子の気持ちには次第に変化して...。
新米の代書屋となった鳩子のもとに持ち込まれたのは離婚をお知らせする手紙。妻に好きな人ができたのが原因だという。依頼人の三津田(高橋和也)は妻の唯一の要望である、封ろう用のシーリングスタンプを渡す。円満離婚を強調する三津田に違和感を覚える鳩子。一方、ツバキ文具店の前のポストに投函した手紙を取り返してほしいと頼まれたのが縁で、パンティーこと楠帆子と親しくなる。手紙を書くヒントを得ようと三津田を訪ねた鳩子だが、話しているうちに三津田は動揺し、離婚のお知らせを出すかどうか迷い始める。カフェのマスターの守景さんの何気ないひとことから、鳩子はシーリングスタンプにこめられた妻の思いに気づき...。
鎌倉にツバキ文具店を訪ねてきた鳩子の元カレ・武田(松澤傑)。武田は出版社に勤める編集者なのだが、ある有名エッセイストに送る執筆依頼を代わりに書いてほしいというのだ。安易な依頼に気分を害した鳩子は、代書を断り、追い返してしまう。一方男爵からも思いがけず代書の依頼が。こちらは友人からの借金を断る手紙だ。ぶっきらぼうな男爵が苦手だった鳩子はとまどうが、その隠れた一面を次第に知ることに。男爵の断り状に取り組むうちに、武田のことを考え直した鳩子は、ある方法を思いつく。そして、男爵からの思いがけない言葉で、亡き祖母・カシ子や生き別れた母に思いをはせるのだった...。
鳩子に持ち込まれたのは、かなり前に別れた恋人への手紙の代書の依頼。園田薫(川口覚)は、その女性・桜(桜川博子)に、ただ自分が元気であることを伝えたいのだ、という。園田にはすでに妻子がおり、桜も結婚している。手紙を書けば、不倫の誘いの片棒を担ぐことになる、とパンティーに忠告される鳩子。しかし鳩子にはそうは思えず、ひたすら桜の幸せを願う園田の思いを、手紙にしようとする。一方で、鳩子は守景親子と次第に親しくなっていく。また白川の母の介護など、周囲の人々みんなが何かを抱えて生きていることに思いをはせるように。そして園田の手紙には、思いがけない結末が待っていた...。
ツバキ文具店の周囲に、怪しい外国人青年(アレックス・JD)が。鳩子のことを尋ね回っているらしい。鳩子のことを心配する面々だが、そんな中、男爵がめったに見ないほどの美人を連れてくる。花蓮と名乗るその女性(芦名星)は客室乗務員。依頼は、義母への誕生日カードの代筆だった。鳩子は快く引き受けたものの、どうやら花蓮と義母の知里(阿知波悟美)はうまくいっていないらしい。欠点の見当たらない花蓮には、文字に関する意外な悩みがあるのだった。実母とは早く別れており、義母との絆を大切にしたいという花蓮。鳩子も、幼い頃自分を捨てて出ていってしまった母を思う。一方で、守景親子にも暗い影があることに気づき...。
ツバキ文具店に現れたのは白川。認知症の母・千代(草村礼子)の介護で悩んでいた白川は、ついに施設に預けることを決意した。が、亡き父からの手紙が来るから家に戻ると言い張る千代に、困り果てていた。そこで鳩子に、父からの手紙を書いてほしいのだという。一方、鳩子のことを訊きまわる怪しい外国人ミスターX(アレックス・JD)がついに文具店に現れるが…。そんなある日、バーバラ婦人の発案で、男爵、パンティーとともに、鎌倉の寺社に七福神めぐりにでかけることになる。
鳩子は守景の妻の死の詳細を聞いて、言葉を失う。一方、絶縁状を書いてほしいという匿名の女性(平山さとみ)からの依頼が。人を幸せにできない手紙なのでは、と、悩む鳩子。そんな折、イタリアからの留学生の青年が訪れる。亡き祖母のカシ子が、青年の母と文通をしていたと告げ、大量の手紙を鳩子に手渡す。不仲だったカシ子の手紙に、自分についての記述がたくさんあると聞いて、鳩子は戸惑う。手紙を焚き上げる「手紙供養」を終え、ようやく読みはじめるが、書かれていたのは思いがけないカシ子の告白だった。あまりの衝撃に、茫然として守景を訪ねた鳩子だったが…。
亡くなった祖母・カシ子の残された手紙によって、自分への深い愛情を知った鳩子。ショックのあまり手紙を書けなくなってしまう。一方、守景さんは、はーたんを連れて鎌倉を去る決意を固めていた。鳩子は思いを伝えられないまま動揺する。そんな折、バーバラ婦人の発案でお花見会を開くことに。桜の花の下に集う一同。そしてある日、守景さんとはーたんと一緒に向かった寺で、亡きカシ子の思い出がよみがえってくる。守景さんと鳩子は…。