囲碁7大タイトルのうち6つを独占するという、前人未踏の快挙を成し遂げた井山裕太。そのきわだった特徴は、直感的に打ちたいと感じた手を重んじるところにある。プロ棋士の世界では、一手打つために1,000の可能性を読み合うと言われ、トップどうしの対決では読みの力はきっ抗することも多い。だがその中で井山は、並み居るプロたちの読みを超えた常識外れの手を放ち、新たな展開を生み出してきた。「結局、人まねでは勝てない。常識から外れていても、自分はこっちに打ちたいと思ったら、迷わず自分の信じる手を打つ」と井山は語る。