川人は遺族から相談を受けると、証拠や証言をつぶさに集め、過酷な労働実態をあぶり出し、労災認定を積み重ねてきた。川人のもとには、毎日のように遺族が相談に来る。彼らと向き合うとき、川人には一つの信念がある。それは、労災申請は“心の救済”につながるということだ。 「『あなたの子どもさん、もう亡くなったんだから生き返るわけじゃないんだよ。これからの新しい将来を考えて生きていこう』と言う人がいる。ところが、ご遺族の感情としては、亡くなった原因とかあいまいにされて、『前を見て生きよう』と言われても納得できないというか、気持ちがそうならない。亡くなった方は戻ってこないけども、(労災申請は)亡くなった方に対する“供養”として、とても大事なことであると思います」。