小さな命を救う”最後の砦(とりで)”と呼ばれる山髙は、日々特別なプレッシャーと向き合っている。 山髙が専門とするのは、生まれつき臓器に異常を抱える赤ちゃんや、難病を抱える子どもたちの手術。新生児の臓器は大人の10分の1ほどしかなく、さらに、体温や心拍も変化しやすく、手術に耐える体力は大人よりも少ない。手術は困難を極め、わずかなミスでも命が危険にさらされる。山髙はその現場に30年向き合い続け、ほかの病院で「治療ができない」と言われた子どもなど、これまで1万人以上の命を救ってきた。その手術への情熱は、めっぽう強い。「気合入れろ!」「絶対ここを動かすな!」と周りの医師にげきを飛ばし、一切の妥協や失敗を許さない。その目指すところは、至ってシンプル。最も安全で、確実な手術を行いたい、という思いだ。そんな修羅場でこそつかんだ、流儀がある。 「僕は手術は急がないの、絶対に。絶対失敗したくないから。だって一生残るんだよ。まだ何十年ていう人生が待っているわけだし。ゆっくりはやくやれって言ってさ。手とか機械の動きはゆっくりなんだけど、やってることはむだじゃないから早く終わるんだよ」