ある朝、テンコ(小林聡美)が庭の手入れをしていると、茂みから妙にきちんとした身なりの男、常木(役所広司)が突然現われる。今夜の宿を探しているという常木を、戸惑いながらもペンションに泊めることにするテンコ。食材を配達に来たヤマビコ(山中崇)から、最近近所の無人の別荘に勝手に住んでいる奴がいるらしいとの噂を聞き、いぶかるテンコだが、人懐っこく、山や森、自然に詳しい常木に徐々に心を許していく。
キャンプ場にひとりでやって来たミツエ(石橋静河)。テントの設営に苦戦していると、近くのテントからベテランソロキャンパー小川(ベンガル)が近づいてくる。何かと口を出してくる小川にへきえきとしたミツエは、そのキャンプ場を後にする。別の場所を探して歩いていると、買い物帰りのテンコと遭遇し、いつの間にかペンションメッツァに泊まることになってしまう
久しぶりにやって来た常連の客、カメラマンのフキ(板谷由夏)。フキは今回も自分の撮った写真のポジを持ってきている。溜まったポジを真夏の庭で燃やすことにしたテンコとフキ。最近の出来事を話しながら、フキの会わない間の心の変化に気づくテンコ。ふたりでいつものように食事をしながら話しをする中で、さりげなくフキの心の悩みに触れていくテンコ。
朝から捜しものをしているテンコ。玄関先に出ると、目の前の通りを自転車に乗った見知らぬ若い男がこちらをうかがいつつ、行きつ戻りつしている。テンコが声を掛けると、水を1杯欲しいと言う。彼を招き入れ水を出すと、息もつかずに飲み干し突如泣き始める。その男、ソウマ(伊藤健太郎)は学生で、自転車で日本一周をしていると言う。携帯電話をなくし、道に迷っていたのだった。
気持ちのいい朝。今日は泊まり客もいない。掃除をして一段落ついたテンコはひとりで近くに散歩に出掛ける。地元で有名な湧水場を訪れると、偶然ヤマビコストアーのヤマビコ(山中崇)に出会う。今日はヤマビコも休日で、近くの古墳に行っていたという。テンコをペンションに送り届けるヤマビコ。テンコはお礼にお茶でも、とヤマビコを招き入れる。テラスでヤマビコの話に耳を傾けるテンコ。静かに日が傾いていく。
と玄関から声がする。テンコがドアを開けると、作務衣姿のコマちゃん(光石研)が立っている。コマちゃんはテンコの昔の恋人。どこか間が抜けているが、相変わらず気の優しいコマちゃん。お互い年を重ねたことをからかいながら、懐かしい昔の話をするふたり。コマちゃんは昔と変わらず、コーヒーを入れるのがとても上手だった。散歩をしようとテンコを誘うコマちゃん。ふたりは林道で森の人と出会う。
森の中を歩いているヤマメ(三浦透子)。久しぶりにペンションにやって来たヤマメは、テンコがここを始めたころから母親とふたりでよく泊まりに来ていた。慣れた様子でキッチンに立つふたり。数年前に亡くなったヤマメの母の思い出話をしながら料理を作っていく。夕食を終えるとテンコは唐突に「ここに住まない?」とヤマメに言う。テンコはヤマメに新しいことを勧めながら、自分自身のこれから先を決めていく。