赤い満月の夜、女子高生の綾月芽衣は、 妖しげな奇術師チャーリーのマジックに誘われ箱の中へ。 目を覚ますとそこは見知らぬ公園だった。 状況が飲み込めない芽衣の前に現れたのは二人の美男子、森鴎外と菱田春草。 言われるがまま馬車に乗せられ着いたところは、 明治時代の絢爛豪華な洋館、高官たちが集う鹿鳴館だった!
鹿鳴館で警官の藤田五郎から不審者扱いされた芽衣を、「僕の大事なフィアンセ」だと言い抱き寄せる鴎外。 そのまま行き場のない芽衣を連れ帰り、記憶が戻るまでの間、屋敷にいて構わないと言う。 鴎外の優しく甘い言葉に翻弄される芽衣。 一方、同じ居候で美術学生の春草は、迷惑そうな様子で態度もつれないが……。
芽衣が物の怪の姿を視ることができる“魂依”であることがわかり、春草の絵から“化ノ神”となって抜け出した黒猫を一緒に探すことに。 途中、小泉八雲と泉鏡花に遭遇した二人は、八雲からホテルに現れる物の怪の調査を頼まれる。 物の怪は八雲の幼馴染だという。芽衣の身を案じた鴎外は、その調査に反対するが……。
縁談話をもってきた伯母に、芽衣がフィアンセだと言い放つ鴎外。 そして、来月開かれる鹿鳴館の夜会で、フィアンセとしてお披露目すると言う。 すっかり委縮してしまった芽衣を、鴎外は浅草へデートに誘う。 明治時代の浅草をエスコートされ、ときめく芽衣。 しかし、鴎外のフィアンセ候補の娘とその母が現れ……。
鴎外のフィアンセとして相応しい女性になる為、芸者の音奴から厳しい指南を受ける芽衣。 着物の着方や所作、礼儀作法などを苦戦しながらも必死に学ぶ。 そんな芽衣を見て、「そういう女は嫌いじゃない」と言う音奴。 芽衣は、時折雄々しい声を出す音奴の正体が川上音二郎とは気づかず、目の前で着替えをしてしまい!?
音奴の手伝いで芸者として座敷に上がる芽衣。 鏡花も燃やしてしまった畳代を稼ぐ為、しぶしぶ芸者の恰好をして働くことに。 今宵は岩崎桃介の呼びかけで「流行会」と呼ばれる宴会が行われ、 その中には八雲、藤田、春草、そして鴎外がいた。 内緒でフィアンセ修行をしていた芽衣は、鴎外を避けて接待するが……。
芽衣と春草が黒猫探しをしていると、道で八雲と鉢合わせる。 八雲の行きつけのカフェーにはよく猫が集まると聴き、一緒に向かうことに。 途中、鏡花と知らない男がポストの前で押し問答をしているところに遭遇。 その後も音二郎とばったり会い、なぜかみんなで一緒にカフェーに向かうことに。しかし着いたところは……。
芽衣は次の満月の夜、元の時代へ戻ることをチャーリーと約束していたが、 鴎外のいる明治に留まりたいと思いはじめていた。 一方、小説の執筆を始めた鴎外は、書斎に引きこもりがちになる。 筆が思うように進まず、恋の物語を書いているはずなのに、表情はなぜか暗く曇っていた。 その物語には、鴎外の過去が隠されていた。
芽衣がいつか去ってしまうのではないかと不安に駆られた鴎外は、芽衣との恋を進めるために、 執筆することで過去に置き去りにした恋と向き合おうとする。 しかし、過去の恋人エリスの幻が現れ、精神的に追い詰められていく。 その苦しみから、執筆を止めると言いだす鴎外。理由を知らない芽衣は書いて欲しいと伝えるが……。
黒猫が見つからず絵の制作も捗らないせいか、最近、春草の様子がどこかおかしい。 春草が忘れた筆箱を芽衣が学校まで届けにいくと、春草の同級生たちが恋人だと勘違いして大騒ぎに。 逃げるように教室を出た2人のところへ、親友の横山大観がやってくる。 大観は春草の目の異変に気付き、すぐに医者に行けと言いだし!?
芽衣は失っていた現代の記憶を取り戻す。 お化けの声が聞こえることで孤立してしまったこと、傷つくことを恐れて様々なことから耳をふさいでいたこと……。 すべてを思い出した芽衣の心に、ある感情が芽生え始める。そして、約束の満月の夜がやってくる――。