「どうしたら、お姉さんみたいになれますか」 険しい山と深い森の間にある紅魔の里。そこで暮らすのは、紅い瞳に、生まれつき高い知力と魔力を持つ紅魔族。その中に、紅い爆焔の焔に魅了された少女がいた。 魔法学園・レッドプリズンに入学した彼女の願いは一つ。あの日見たあの熱を、輝きを、最強の魔法を、自分のものにすること。 彼女の名はめぐみん。のちに稀代の大魔法使いとも、極めて頭のおかしい爆裂魔法使いとも呼ばれる、一人の少女の物語が幕を開ける。
「おのれ! 変温動物の分際で!」 こめっこが死闘の末に打ち負かしたという黒猫を、めぐみんが学校に連れてきたその日。担任のぷっちんが、急遽「特別授業」を行うと言い出した。なんでも、里の観光名所の一つ、邪神の墓の封印が解けかけて、里周辺のモンスターたちが活性化しているらしい。実戦を通して一気にレベルを上げるため、事前にグループを作っておくよう言い残してぷっちんが教室を出ていくと、ゆんゆんがちらちらとめぐみんの方を見てきて……。
「で、でもこれ見て!? サボテンにだって心はあるんだって!」 ある日の図書館。植物とすら友達になれる可能性を探るゆんゆんに、同情の念を禁じ得ないめぐみんだったが、そこにふにふらとどどんこが現れる。「友達になってあげよっか?」と話す二人に、食い気味に迫るゆんゆん。どこか空回りしている様子の彼女をちょっぴり心配するめぐみんだったが、突然、「青春を謳歌しているようだね!」とどこからともなく声が響き渡る。そこに現れたのは、里のニート・ぶっころりーだった。
「やっぱりめぐみんは天才じゃなくてバカだと思う」 テスト結果の発表で、いつものように成績上位3名の名前が読み上げられるなか、その日、常に上位につけていたゆんゆんの名前が呼ばれることはなかった。どこか様子がおかしい彼女を不思議に思うめぐみんだったが、歯切れの悪い反応しか返ってこない。そんなある日の学校帰り、相談があると持ちかけてきたゆんゆんは、公園のベンチでぽつりと「友達ってさ、一体どんな関係の事を言うのかな?」と切り出して……。
「天よ地よ、決してその名を忘れるな!」 里に鳴り響く、敵の襲来を告げる警報。慌てて家に帰っためぐみんだったが、玄関は破壊され、そこにこめっこの姿はなかった。ゆんゆんとともに、なんとかこめっこの居場所を突き止めるも、多勢に無勢のモンスターを前に、魔法が使えない3人はなす術がない。スキルポイントを使って上級魔法を覚えればこめっこは助けられる。でも、爆裂魔法は習得できない。絶体絶命の窮地で選択を迫られるめぐみん。彼女たちの運命は――。
「もう後がないんです! 見捨てないでください!」 爆裂魔法を習得し、レッドプリズンを卒業しためぐみんは、アルカンレティアへの旅費を稼ぐため、日々就職活動に励んでいた。一方、紅魔の里では深夜の爆発騒ぎが話題に。巷では魔王軍の仕業と噂されていたが、それはめぐみんがバイトを不採用になった夜に限って起こっていた。そんなある日。めぐみんの家を、怪しげなローブを羽織った女が訪れる。アーネスと名乗るその女はひざまずき、「偉大な我が主」とつぶやいて……。
「助けてあげたお礼がしたいなら、この入信書にサインを!」 紅魔の里を発ち、水と温泉の都・アルカンレティアにやってきためぐみん。しかし、転送されてから一週間が経っても、アクセルまでの馬車代どころか、日銭を稼ぐのもままならない。アクシズ教という怪しげな教団の勧誘を横目に、お腹を空かせながら街を歩いていると、女性の悲鳴が聞こえてきた。何事かと駆け付けてみると、何やらアクシズ教のプリーストとエリス教の神父が揉めているようで……?
「本当にロクでもないですね、この教団は……」 ゆんゆんが持ってきた予言の手紙をきっかけに、温泉の異変、ひいては魔王軍と通じている嫌疑をかけられ、アクシズ教団最高責任者・ゼスタが連行されてしまう。そこで、温泉の異変を調査するべく、苦情が出ている温泉宿で聞き込みをすることにしためぐみんたちだったが、なんと温泉の蛇口をひねると、ところてんスライムが出てくるようになっていた。 大興奮のセシリーをしり目に、首をかしげるめぐみんとゆんゆんだが……。
「フラグは立てるなって学校でも習ったでしょう!?」 駆け出し冒険者の街・アクセルに向かうキャラバン一行。めぐみんとゆんゆんは、その中の馬車の一つに乗っていた。車窓から見えるのどかな景色は平和そのものだったが、突如モンスターが襲来、キャラバンは足止めを食らう。紅魔族であることを見込んだ冒険者たちに「先生」と持ち上げられためぐみんは、意気揚々と馬車の外に飛び出すが、そこにはどう見ても巨大なミミズにしか見えないモンスターの大群がいて……?
この私がいらない子扱い……この、私が」 ついにアクセルに到着しためぐみんとゆんゆん。パーティメンバーを探すため、冒険者ギルドを訪れた二人は、冒険者カードの照会をすることに。注目を集めようとギルドが混んできた頃合いを見計らって、いそいそと受付で照会するめぐみん。だが、冒険者たちの反応はイマイチ。なんでも、前日にもっと強大な魔力を持つ人物がアークプリーストになったらしい。それでも引く手は数多。早速あるパーティに参加するのだが……?
「我が名はホースト。でっけえゴブリンではなく上位悪魔にして――」 アクセルでの生活費を稼ぐため、地道にクエストをこなしていためぐみんとゆんゆんだったが、その最中、紅魔族のような名乗りを身に着けている上位悪魔・ホーストに出くわしてしまう。慌ててアクセルに戻った二人の報告で、ギルドをあげた討伐作戦が決行されることになるが、魔剣の勇者すらも返り討ちに遭う始末。さらに、最後の頼みの綱である水色髪のアークプリーストもなかなか見つからなくて……?
「『エクスプロージョン』――ッ!」 上位悪魔・ホーストには、アクセルで一番のパーティでも全く歯が立たない。それでも、売られた喧嘩は必ず買うと言うめぐみんは、ちょむすけを引き渡す取引には応じず、自らホーストに挑むことを決める。調達した一千万エリスで準備を整え、戦いを翌日に控えたその夜。めぐみんがなかなか寝付けずにいると、部屋にひっそりと入ってくる人影が。「……めぐみん、寝てるよね?」ゆんゆんは、ぽつりぽつりと、心の丈を語り始める。