“アメリカの女性が太り過ぎでドアに挟まり、部屋から出られなくなった揚げ句の救出劇がありました”—その夜、TVから伝えられるニュースを見ていた本宮籐子(深津絵里)は、ドキリとなって今、現在の我が身をながめていた。ワイン片手にポテトチップスをバリバリと頬張る何とも緊張感のない姿・・・。それは、ニュースの女性にいつなってもおかしくないと思われる、恋人もいない、仕事にもやる気の失われた30才OLの現実だった。
「なんか、酒臭いんですけど〜」。
翌日、アルコール臭を残して出社してきた籐子を同僚で同じく三十路突入仲間の須田真季(猫背椿)がとがめながら近付いてきた。二人が百回も禁酒宣言を破ったことをいい合っているところに、若い後輩OLたちがワイワイとやってきた。
その話題の中心は、貫井功太郎(堤真一)。ユニバーサル社のクリエティブ、制作課に所属するその男は、今年も自身が手掛けたCMで賞を獲ったという。広告業界の誰もがナンバー1と認めるやり手社員を女子社員たちは放っておくはずがない。これでも元クリエイティブにいた籐子は、自分にもそういう時があったかもしれない・・・と思いながら、庶務課の仕事に走りまわるのだった。
次の日も、またその次の日も、同じような日々が繰り返されて行くのかと思っていた。この日の朝だって洗面所の鏡に向かう籐子は眉のひとつも満足に整えられず、どんよりした気分で出社してきた。だが、その時思いがけないニュースが籐子の耳に入ってきた。貫井が会社を辞めて独立するという。上司と衝突し、自分のやり方を貫きたいと考えた