突然の雨に降られて、たまらず逃げ込んだのは老舗宿。 その内は、佇まいとは裏腹に賑やかだ。 言葉に甘えて、雨が通り過ぎるまで身を寄せることにする。 コブ茶をいただこう。あと、茶菓子も。
巷間離れしたこの島には奇妙な面々と、ひとりの魔王が住んでいる。 突然の来訪にも華美なもてなし。しばし極上の甘美に舌鼓を打つ。 さて、何の用件でやって来たのかはさておき。
ひとしきり楽しんだ帰路。 日暮れまでに、と来るしばしの距離を思うとため息も出る。 予期せず海面から現れた友人にかまってもらい、 もう一時を費やすのも悪くない。かもしれない。
吹く海風に誘われた東屋の会。 積み上げられた智見に触れるのも、たまのことなら良い。 糧になったかは――海のみぞ知る。 さて、読書三昧もそろそろ暮れて、日の落ちる前に帰ろうか。