福井県内でも随一の進学校・藤志高校に通う千歳朔。何をとっても非の打ち所がない彼のまわりには、華やかな仲間たちが集うと同時に、それをやっかむ陰口が吹聴されることもまた日常だった。そんな“いつも通り”の高校2年生の春。朔は、担任の岩波蔵之介から「引きこもりのクラスメイト・山崎健太を登校させてほしい」という依頼を受ける。原因を探るため、内田優空とともに彼の自宅へと赴く朔だったが、取り付く島もなく追い返されてしまい……。
窓ガラスを破り、半ば強引にではあるが健太との対面を果たした朔。初めこそ「ヤリチンクソ野郎」という先入観から、一挙手一投足に突っかかってくる健太だったが、真剣に向き合おうとする朔の姿勢が、少しずつその心を動かしていく。なんでも、好きだった女子にひどい振られ方をしたことが引きこもりの原因らしい。振られた相手を見返せるように、もう一度自分の足で歩けるように、健太は期限付きで朔たちと行動を共にすることになるのだが……。
チーム千歳と過ごす日々の中で、着実に努力の成果が表れてきていた健太。そんな姿を見て朔は、そう遠くないうちにやってくる「健太が過去と向き合うその日」のことに思いをめぐらせていた。「健太をけしかけたのは自分だ」その結末にまで責任を感じ始めていた朔の背中に、部活終わりの陽が声をかけてくる。持ち掛けてきたのは、十本先取の1on1。負けた方が何でも相手の質問に答えるという条件で、考え込んでいた朔の心の内を聞きたいようで……?