12年務めた会社を辞めた男が次に選んだ職場は、湘南の海の上だった… 神奈川県平塚市。多くのサーファーたちでにぎわう茅ヶ崎海岸のお隣に小さな漁港がある。ひらつかタマ三郎漁港。ワケあって1年前に漁師になったのが、芳仁(よしひと)さん、38歳。就職先は、ほとんどが年下の血気盛んな若者たちが働く、株式会社・日海丸。定置網で漁を行う船の上が新たな職場だ。釣り好きというだけで、漁師とは縁もゆかりもない芳仁さん。漁業の後継者不足が進む中、ネット検索で見つけた、神奈川県が支援する無料の漁師研修制度に参加した。 前職は食品メーカーの営業として12年働き、係長まで務めた芳仁さん。父親が商社に勤めていたことから10代を香港で過ごし、その後、オーストラリアの大学へ留学した。いわゆる帰国子女でもある。 しかし、子どもの頃から自分を表現することが苦手で、お人好しな性格。漁船に乗ると失敗の連続で、自分より若い先輩漁師たちに毎日のように怒られる始末。同世代の親方からは「漁師は向いていない」と断言されるほど。 それを支えてきたのが、マッチングアプリで知り合い結婚した妻の存在。収入が半分以下になっても、夫婦で働けば何とかなるという妻の後押しで漁師の道に飛び込んだ。 自分にとって“しっくりくる仕事”とは何なのか?そもそも人は何のために働くのか?世の中の誰もが抱える悩みの中でもがく3年の日々を見つめた…