「感情の歴史」を描きたいと語るアレクシェーヴィチ。彼女によって戦争は生身の身体、鮮烈な五感、豊かな感情の震えの記録として描き直される。戦争を記録する意味とは? アレクシエーヴィチはしばしば「感情の歴史」を描きたいと語る。憎悪と慈愛の共存、平時では考えられないような感情のうねり、戦争終結後も人々を苛(さいな)むトラウマ…。英雄談や大文字の歴史としてしか語られてこなった戦争は、彼女の透徹した「耳」と「手」によって、生身の身体、鮮烈な五感、豊かな感情の震えの記録として描き直される。それは、これまで決して描かれたことのない、人間の顔をしたリアルな歴史だった。