主人公H.F.はペストを逃れるために疎開すべきか商売のためにロンドンに残るべきか悩む。疫病のまん延を防ぐことと経済活動を維持することとの矛盾は、解決できるのか? 『ペストの記憶』の冒頭で、語り手のH.F.はペストを逃れるために田舎に疎開すべきか商売のためにロンドンに残るべきか悩む。他にも疫病のまん延を防ぐことと、経済活動を維持することとの矛盾は、本書の至るところに見てとれる。それらの描写は、まさに新型コロナウィルス禍の中で世界中の人々が直面している問題と重なる。第2回は、パンデミックのさなかで、人間はどうやったら、生命の安全と経済を両立できるのかを考える。