吉本は国家をどう相対化し個人が自立できるかを問う。その際の鍵が「沈黙の有意味性」。庶民たちが日常に根をはりながら沈黙をもって問い始める「違和感」に注目するのだ。 吉本は国家をどう相対化し個人が自立できるかを問う。その際の鍵概念が「沈黙の有意味性」。吉本にとって沈黙とは国家を沈黙をもって凝視するということが含意される。声高に国家を批判することでは何も変わらない。庶民たちが日常に根をはりながら沈黙をもって問い始める「違和感」や「亀裂」。そうした日々の生活感に寄り添いながら思考を紡いでいくことにこそ人が自立して思考する拠点があるとする吉本思想の核心に迫る。