「神」「魂の不死」を前提とせねば道徳や倫理は全く無価値なものになる。カントはそれらを「認識の対象」ではなく実践的な主体に対して「要請された観念」だと位置づける。 「神の存在」「魂の不死」を前提としなければ道徳や倫理は全く無価値なものになると考えたカントは、それらを「認識の対象」ではなく、実践的な主体に対して「要請された観念」だと位置づける。科学によって居場所を失いつつあった価値や自由といった人間的な領域を基礎づけようとしたのだ。第4回は、道徳の復権を目指したカントの思索を通して、知識や科学だけでは解決できない「人間的価値や自由の世界」を深く見つめ直す。