維摩のお見舞いをただ一人引き受けた文殊菩薩。いよいよ維摩との本格的な対論が始まる。そこから浮かび上がるのは、大乗仏教の精髄、「縁起」と「空」の思想だ。 維摩のお見舞いをただ一人引き受けた文殊菩薩。いよいよ維摩との本格的な対論が始まる。そこから浮かび上がるのは、「すべては関係性によって成立しており、実体はない」という空の思想。「だからこそ自らの修行の完成ばかりを目指さず、社会や他者と関わっていけ」という縁起の思想。維摩がもたらす予想外の答えや不思議な出来事から、大乗仏教の精髄が、単なる観念の遊戯ではなく、生きるための智慧(ちえ)として示されていく。