第3回では、「風姿花伝」に記された文章に加えて、世阿弥が記した「花鏡」の文章も引用する。そして「離見の見」という言葉から、役者と観客の距離感について語る。 世阿弥は、役者の心得として「観客のニーズに自分をあわせろ」と言う。これは「大衆に迎合せよ」と言っているのではない。独りよがりに芸術性ばかりを追い求めても、誰もついてこないことを諭しているのだ。役者たるもの、客をどう引き付けるかが肝心。そのためには、自分の演じる姿を、自分の外から見るように心がけろとした。これが「離見の見」である。第3回では、冷徹なリアリズムに裏付けられた世阿弥の演技論に迫る。