月から帰ってきた日々人は、地球の重力に慣れるため、リハビリを開始しようとしていた。寝て検査して運動してまた寝て、そういうサイクルがこの先45日間続くのである。 一方六太は、アマンティに『不安な未来の話の続き』を聞いていた。 「私が見たのは……ムッタがとても悲しんで……辛い思いをしている姿……」 六太に直接何かが起こるわけではないらしい。 「帰ってきたヒビトを見て分かったの、ヒビトもあなたと同じように――辛い思いをすると思う」 どうやら六太と日々人にとって大切な誰かが、重い病気になるらしいのだ――。 その頃、ゴダード宇宙飛行センターでは――。 天文学者であるシャロンが、宇宙開発についてプレゼンをしていた。 シャロンの提案は、NASAの宇宙飛行士に協力を依頼し、月面で望遠鏡を組み立ててもらおうというもの。 「我々天文学者には、遥か遠くまで行く力はありませんが、遥か遠くを見る力なら、我々に勝る者はいません。きっと実現できます。ここにいるみんなの力があれば――」 そして――。 六太たち宇宙飛行士候補生たちは、ジョンソン宇宙センターの近くにあるエリントンフィールド空港に来ていた。 宇宙飛行士に認定されるためには、ジェット機、T―38の操縦資格が必要なのだ。 航空力学に始まり、エンジンシステムなどのメカニック、基本的な航法に各種飛行ルールなど、覚えることは山ほどあるのである。 六太はジェット機に乗ることをずっと楽しみにしていた。 いつか見た日々人のように、六太も人生初のマッハを体験できるかもしれないのだ。 だがそんな気持ち