閉鎖ボックス内・10日目の深夜。A班メンバーが寝静まる寝室に、突然けたたましいアラーム音が鳴り響いた。時計が壊される事件に引き続き、また問題が起きたのだ。古谷の明らかにおかしい行動にいち早く気づいた六太は、思考をめぐらせる。管制の見ている前で、福田や古谷が自らの夢を壊すような行為をするとは思えなかったのだ。そして、二人を信じた六太は、一つの考えにたどり着いた。 『となると、やっぱりこれは、JAXAの演出……』 六太は思い出していた、NASAの施設内で知った『グリーンカード』のことを。グリーンカードとは、仲間のミスによるストレスをどうコントロールし、不測の事態をどう切り抜けるか、それを調べるために、チーム内で極秘にトラブルを起こさせるものだった。 六太は、こっそりと古谷に質問する。 「正直者のやっさんに、1個質問――グリーンカードもらった?」 「……そ、それだけは答えられへん!」 古谷が答えられないということは、紛れもなくグリーンカードをもらったということ。その答えを知るなり、六太はまっすぐ福田のもとに歩み寄った。「福田さん――よかった!」晴れやかな顔で硬い握手をする六太と福田。福田の行動は、すべてグリーンカードによる指示だったのだ。 そんな中、新田はまだアラームを探していた。グリーンカードの存在をまだ知らず、一人モヤモヤする新田に、六太は言う。 「これだけははっきり言えるよ。この中には……悪い奴は一人もいない!」 そんな六太の言葉のおかげか、A班はグリーンカードを乗り越え、楽しげな雰囲気が戻った