腹腔鏡手術のスペシャリストとして医学界に名を馳せる、浪速大学医学部第一外科・准教授の財前五郎(岡田准一)。逞しい体と精悍な顔つきに加え気さくな人柄は、付属大学の学生や医局員たちに慕われ、浪速大学のスター准教授として君臨していた。 ある夜、浪速大学・滝村名誉教授(小林稔侍)の喜寿を祝うパーティの最中、“スペ患”である近畿新聞会長・山田音市(本田博太郎)の容態が急変。 膵がんを患う山田は、執刀医に財前を指名する。本来、山田は第一外科・東貞蔵教授(寺尾聰)の“スペ患”。上司である東を差し置いて自分が執刀するわけには…と躊躇いを見せる財前だったが、心の中では期せずして舞い込んだチャンスにほくそ笑んでいた。 手術は無事成功し、財前には山田から高級ワインと数百万の現金が贈られる。財前によって自分の“スペ患”が救われたことに、表面上では平静を装いながらも、東はその事実を苦々しく受け止めているのだった…。
財前五郎(岡田准一)は、誤診した医学部長・鵜飼裕次(松重豊)のメンツを保つため、教授の東貞蔵(寺尾聰)に膵神経内分泌腫瘍の患者の執刀を依頼する。いざ開腹してみると癒着が激しく、手術は長時間に及び、焦りと疲労で東は意識朦朧…。財前はそんな東の様子を冷ややかなまなざしで見つめていた。 その時、東が誤って患者の動脈を傷つけてしまう。大量出血に騒然となる手術室の中で、一人ぼう然とする東…。財前は、術前CTの見落としを指摘し、まるで待っていたかのように手術を続行する。東の自尊心を粉々にした財前と、屈辱に耐えるしかない東…これで、教授選で対立しつつあった二人の決別が決定的なものとなる。また、この様子を見ていた里見脩二(松山ケンイチ)も、教授の座に固執するあまり、どんどん良心を失っていく同期の財前に複雑な思いを感じていた…。
教授選でついに悲願を達成した財前五郎(岡田准一)は満ち足りた日々を送っていた。一方、擁立していた菊川昇(筒井道隆)が破れた東貞蔵(寺尾聰)は、退官後の行き先が決まらぬまま、浪速大学を去ることに…。 ある日、鵜飼裕次(松重豊)が財前にドイツの国際医療外科学会からの招待状を渡す。それは、講演と新しい術式のデモンストレーションの依頼で、鵜飼にとっても財前にとっても喜ばしいことだった。 権力を手に入れるため、ひたすら上を目指す財前とは対照的に、患者のことを第一に考え、診察を続ける里見脩二(松山ケンイチ)のもとに、繊維問屋を営む佐々木庸平(柳葉敏郎)と妻・よし江(岸本加世子)がやって来る。糖尿病が悪化したため、薬を見直したいと言う佐々木だが、里見は検査を重ねるうちに、糖尿病ではなく膵臓がんを疑う。里見は医者としての腕を信頼している財前に相談し、執刀も依頼する。
ドイツで手術のデモンストレーションを行う財前五郎(岡田准一)が現地の医師たちに絶賛されている頃、日本では、ICUでの治療の甲斐なく佐々木庸平(柳葉敏郎)が死亡していた。死因が肝不全だと知り、膵臓がんだと思っていた妻のよし江(岸本加世子)と息子の庸一(向井康二)はがく然…。里見脩二(松山ケンイチ)は、そんな二人に病理解剖を勧める。 財前のミスを疑い、真実を知りたいと強く願う庸一の後押しで、後ろ向きだったよし江も解剖を了承。病理学科の教授・大河内恒夫(岸部一徳)が解剖を担当することになる。 解剖の結果、血管内リンパ腫が原因で肝不全となり、血液凝固障害を起こしたため死亡したことが判明。よし江と庸一は、手術の前後ともに、財前は「膵臓以外に問題がない」と言っていたと柳原雅博(満島真之介)に詰め寄る。もともと財前の傲慢な診察態度に疑問をもっていた二人は、彼を裁判で訴えることを決意する。
医療裁判で勝訴した財前五郎(岡田准一)と浪速大学病院だが、控訴審を控えているにも関わらず、世界外科連盟の理事に立候補するという財前に、病理学科の教授・大河内恒夫(岸部一徳)ら周囲は、あきれ顔…。 一方、控訴審の証人を探し求め、病院関係者を訪ねてまわる弁護士の関口徹(斎藤工)だが、ことごとく財前に根回しされていて、証言してくれる人が見つからない。 前回の裁判で、医師としての信念を貫いて財前と大学に不利な証言をしたため、浪速大学医学部を辞し、来月から関西がんセンターで研究を続ける道を選んだ里見脩二(松山ケンイチ)と、現近畿労災病院院長・東貞蔵(寺尾聰)の娘で里見を慕う東佐枝子(飯豊まりえ)は、関口に協力することを決意する。 関口と佐枝子は元看護師で真実を知る亀山君子(美村里江)に証人になってくれるよう頼みに行くが、妊娠中の君子を心配する夫・亀山富治に追い返されてしまう。