いつか、喜びの涙に変わるように 在宅ホスピス医・川越厚

「人生の最後は、自宅で穏やかに迎えたい」。そんな末期がん患者の切実な願いを叶え続けてきたのが、在宅ホスピスのパイオニア、川越厚(67)だ。まだ「在宅ホスピス」という言葉すらなかった時代から始めて25年。およそ2,000人の末期がん患者を家で看取ってきた。 病院ではこれ以上の治療が難しいとされた末期のがん患者。その多くは、がんの進行から生じる神経の圧迫や呼吸苦などの体の強い痛みで苦しむ。川越は触診を行いながら、患者の状態をこと細かに観察し、その痛みの緩和に必要な薬の種類や量を処方していく。薬の量が少なければ痛みを取りきれないし、多すぎれば副作用で患者を苦しめることになる。川越はこの見極めの技術が群を抜くと言われている。 さらに川越は、死期が迫るにつれて強くなる死別の悲しみなどの“心の痛み”にも寄り添っていく。患者とその家族に、独特の語り口で死期を伝え、死を受け止められるようにいざなっていく。 川越が目指すのは、人生の幕引きを穏やかに行うための医療だ。 「“退く”医療ですね。病気を治す医療が全く無力になったとき、同じ姿勢で医療を行ってはいけない。お迎えが来るときまで人間として生きるわけですからね。今度は、生きていくということを大切にした医療」

日本語
  • Originally Aired November 17, 2014
  • Runtime 48 minutes
  • Network NHK
  • Created May 2, 2023 by
    edwerds
  • Modified December 29, 2023 by
    atsumori