作るのは、ともに歩む足 義肢装具士・臼井二美男

数多くの義足アスリートをパラリンピックにおくりだし、競技用義足作りの第一人者として知られる臼井二美男(61)。しかし臼井が手がけるのはそうした特別な義足だけではない。日常的に使用する生活用義足作りこそ、臼井が最も大切だと考える仕事だ。 臼井が大事にするのは、はく人のことを一番に考えた義足作り。義足は、はく人の体にあわせて一つ一つオーダーメードで作られる。なかでも履き心地をきめる重要な部分が、切断した足を入れる「ソケット」と呼ばれるパーツだ。一般的にソケットを作る際、腰まわりや足の長さをメジャーなどで計測する。しかし、臼井がたよりにするのは手の感覚と目。道具を使わずに、足の大きさや特徴を的確につかむ。 「ここが何ミリ何ミリというのは作る側のただのデータで。数字のことで議論するっていうのは、あくまで技術者側の話。お客さんはそんなの関係ないんですよ。数字よりも快適で美しくて、はきごこちがいいっていうものを求めてるわけだから。」 さらに臼井がこだわるのは履き心地だけではない。はく人との会話を通じてその人が義足で何をしたいかを聞き出し、目的に応じた義足を作る。薄手のスカートをはきたい人には、ラインが目立たないコンパクトな義足。ミニスカートがはきたい人には、本物の足そっくりの質感のある義足。これまで400人以上の、ささやかな希望をかなえてきた。 「義足にかける期待とかかける望みが必ずあって、はく人とその家族には。言葉にはならなくてもそういう思いをもって訪ねてくる人がけっこうたくさんいますから。それにはこたえなきゃいけないっていう。それは使命みたいな感じでしょうね。」

日本語
  • Originally Aired September 5, 2016
  • Runtime 47 minutes
  • Network NHK
  • Created May 2, 2023 by
    edwerds
  • Modified December 29, 2023 by
    atsumori