イチローは昨シーズン、かつて経験がない深刻な不振に陥った。10年連続で達成してきた年間200本安打もオールスター出場もゴールドグラブもすべて失った。不振は今シーズンも続き、メディアからは年齢的な衰えを指摘する声も相次いだ。通常スランプに陥ったバッターは狙い球を絞り、甘い球を待つのがセオリーだ。だがイチローは、イチローらしい「攻めるバッティング」を貫き、相手投手の決め球に真っ向勝負を挑み続けた。自らのバッティングについて、イチローはこう語った。「瞬間的に結果を出すために、自分が信じているものを崩してしまうということは、自分の生き方も否定してしまうということ。結果を出すためにいろんなことをしますが、姿勢というものが変わってしまうと、もうバッターボックスに立つ意味はない。これは生き方に通じるものなんです」。