W杯で日本をベスト16に導いた指揮官、岡田武史(55歳)。去年12月、Jリーグやヨーロッパからのオファーを断り、中国スーパーリーグ「杭州緑城」への監督就任を決めた。中国リーグでも中堅、選手の多くが22歳以下という、発展途上のチームを改革するのが、岡田の新たな挑戦だ。 岡田は、理想のチームのあり方を「生物的組織」と表現する。1人1人の間に神経が通い合い、まるで1つの生命体として機能するような組織のことだ。サッカーでは、チーム全員でどれだけ意思を共有できるかがカギ。相手の戦術にどう対応するか、難しい局面をどう打開するか、チーム全体で1つの意思を持って動かなければならないからだ。 そんな組織を作るために、岡田は今回、意外なところから改革に着手した。チームに申し入れたのは、選手を子供扱いせず、責任を持って行動させることだった。中国では、若手選手は寮に住まわせ、コーチが生活全般に目を光らせるのが慣例。だが、それでは選手に自立心が生まれないと岡田は判断した。 1人1人が「自ら考え、動く」ことを岡田は求める。常に責任を持った判断を自分で下すことを普段(ふだん)の生活から徹底させていく。