命を削り、心を研ぐ 包丁研ぎ職人・坂下勝美

大手ガイドブックの三つ星をはじめ、名だたる料理人たちが絶大な信頼を寄せる職人がいる。包丁研ぎ一筋53年の研ぎ師・坂下勝美(76)。その手にかかれば、家庭用の包丁ですら、名刀のような切れ味に生まれ変わる。これまで手がけてきた包丁は20万本以上、佐賀県みやき町の工房には全国の料理人から包丁が届き、研ぎの予約は2年待ちという状態だ。 包丁の刃の表面にほんのわずかなへこみを作り、切った食材との間に「空気の通り道」を作り出す技術や、刃についた小さな「欠け」から使い手の癖を読み、最善の研ぎを選び抜く気配り。命を削るかのようにして研がれた包丁は、食材の繊維を押しつぶすことなく、素材本来の味を引き出す。 しかしかつては、「包丁屋の分際で…」とバカにされる、屈辱的な日々を送ってきた坂下。長年包丁を押さえ続けてきた指は変形し、食いしばってきた歯はほとんど抜けた。それでも今なお道を極めんと、ひたすら包丁を研ぎ続けている。日本の誇る食文化を縁の下で支えてきた、孤高の職人の流儀に迫る。

日本語
  • Originally Aired September 24, 2019
  • Runtime 45 minutes
  • Network NHK
  • Created December 29, 2023 by
    atsumori
  • Modified December 29, 2023 by
    atsumori