あと一歩だけ、前に進もう シンガーソングライター・スガ シカオ

スガが生みだす歌の最大の魅力は、その独特の歌詞にある。作詞を担当したSMAPの『夜空ノムコウ』は、ミリオンヒットを記録し、学校教科書にも掲載される。描いたのは、自分が予備校に通っていた時に当時付き合っていた人とのたあいもない話や、抱えていた葛藤や不安感。このようにスガの歌詞は、そのほとんどが実体験に基づいている。 そうした歌詞は、各界の一流のプロたちをもうならせる。小説家・村上春樹は『かなり特徴的な「文体」である』『微妙なごつごつさや、細かいツノの立ち具合、エラの張り具合が、なんといってもこの人の歌詞の持ち味なのだ』(「意味がなければスイングはない」文春文庫)と高く評価している。 日本を代表するロックバンド・ミスターチルドレンの桜井和寿は、『誰しもが心の中に汚れている部分を多かれ少なかれ持っていて、それをスガさんは吐き出す。そうした“裏の顔”を登場させることで独特のリアリティーが生まれる』と語り、名曲「川の流れのように」など数多くの作詞を手がけてきた秋元康は、『訳知り顔で全てを伝えるのではなく、ぽつんぽつんと語った言葉の隙間に彼の思いや温度があって、聞く人が自分の考えと照らし合わせて完成する』と、その魅力を分析する。 スガは歌詞を書く時は、必ず一人で部屋に籠もる。そこで自分自身の「弱さ」と徹底的に向き合い、その中でリアリティーのある言葉を紡ぎ出していく。 『正直になれないと気が済まないっていうか。自分がきれいで正しいっていう立場から物を言ってもあまり伝わらないような気がするんですよね。「お前らダメだろ!」 みたいな言い方では何も伝わらないから』。

日本語
  • Originally Aired November 2, 2015
  • Runtime 60 minutes
  • Network Japan NHK
  • Created December 28, 2023 by
    atsumori
  • Modified December 28, 2023 by
    atsumori