1年間で外泊200日。鹿児島から北海道まで、蜂とともに花畑をめぐり蜂蜜を集める暮らしを60年続けている、藤井さんと従業員たち。 ‟炊事班長”である妻の繁子さんが各地で作る料理で、必ず活躍するのが蜂蜜でした。 卵焼き、カレー、炊き込みご飯、大根の漬け物、あらゆる料理にはたっぷりの蜂蜜が入っています。いただくと、ほんのりとした甘みがクセになり、ご飯がすすみます。 旅のあいだ、風邪などで体調を崩す人は誰一人いないそうです。藤井さんは「栄養価の高い蜂蜜のおかげ」とおっしゃっていました。それを聞いて、私も毎日スプーン1杯舐めるようにしています。その時に思うのは、「蜂は60日間の生涯のなかでスプーン1杯の蜜を集める」という藤井さんの言葉です。ひと舐めすると、蜂の営みをいただいていることに思いを馳せます。でも、おいしいので大体2、3杯食べます。 蜂が命をまっとうして、次の世代につないでいく、その営みを見つめ支えることを藤井さんは何よりも楽しみにされていました。蜂は蜜を集めるだけでなく、花から花へ花粉を渡し、農作物の受粉を手助けします。スプーン1杯の蜂蜜のうらにある、一匹一匹の蜂の営みと、養蜂家の努力を知ることができました。