東亜との2度目の勝負で“2-0”と追い込まれた児島は、驚くべき行動に出た。運命の3球目にバッティングのタイミングが合わないと判断した児島は、とっさにベースの上に体を傾けたのだ。ボールは、児島の右ひじに当たり、デッドボール。 ビッグママは、ボールがストライクゾーンを通っていたとして、児島が三振したと判定した。だが、児島は、本当の野球なら三振だったと明かしながら、“四角のワクに当たったボールがストライク”という『ワンナウツ』のルールなら、デッドボールは認められる、と主張。東亜があっさりこれを飲んだため、児島の勝ちが決まってしまった。 児島の前に歩み寄り、自分の腕を出してバットで叩き折るよう求める東亜。だが、その腕を握った児島は、プロ野球に入り、リカオンズを優勝させて欲しい、と東亜に求めた。 プロ野球埼京彩珠リカオンズは、さいたま市の大宮スタジアムを本拠地としている球団だった。30年前に1度優勝したものの、それ以降、低迷が続き、ここ3年は連続最下位。観客動員数は、12球団中3位で、それは国民的ヒーローの児島の存在が大きかった。児島が掛け合った結果、オーナーで、ゼネコン・彩珠組社長の彩川は、東亜のテスト入団を承認。東亜は、すぐさま彩川との契約交渉に臨んだ。 カネにシビアと噂される彩川に出した東亜の条件は、奇妙な内容だった。契約金はゼロ。だが、試合で1つアウトを取るごとに、球団側が500万円を支払い、逆に失点した場合は、1点に付き5000万円を東亜が支払う、というもの。ワンナウト単位の出来高払いが球団側にプラスになると
Name | Type | Role | |
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Hideo Takayashiki | Writer | ||
Yuzo Sato | Director |