時は大正。 遠野麻子は強気な性格が災いし、行き遅れた子爵令嬢。 親からも冷遇され、妹のひろ子さえ幸せなら…と願う日々だった。 しかし、最愛の妹に冷酷と噂の陸軍大尉・木戸慎太郎との縁談が来てしまう。 麻子は身代わりに嫁ぐことを慎太郎に提案するが――「妹の代わりに俺の子を産んでもらおうか」と迫られて…
子をもうけるためだけという理由を隠し、麻子は慎太郎とともに両親に結婚の許しを求める。 体よく厄介払いできるとあって父母は大歓迎。 父は婚礼衣装も仕立てると言いだし、麻子は戸惑いつつもうれしく思う。 ひろ子から大切なかんざしを譲り受け、いよいよ祝言当日。 ところが、ハレの日に似つかわしくない悪意に満ちた事件が…
勘当同然で始まった、謎めいて恐ろしい男との新婚生活。 麻子はなれない料理で早々に大失敗をしてしまう。 だが慎太郎はこげたご飯を責めることなく食べきる。 さらに麻子をデパートに連れ出して…「妻に見合うものを見繕ってくれ」慎太郎に妻と呼ばれ、ときめく麻子。 洋装でのお出かけを楽しむ二人に、薄笑いを浮かべて声をかけてきたのは…